初めまして、坂出ねっこです。
みなさんは“歯科衛生過程”と聞いて、どのようなイメージを持たれますか?
おそらく多くの方は「学校で習ったけどなんかよく分からない」「臨床でどうやって活用すればいいのか分からない」と思われることが多いかと思います。
大ベテランの衛生士さんだと、「そもそも習っていない」という方もいらっしゃるかもしれません。
とっつきにくいイメージの歯科衛生過程ですが、理解すれば臨床で使える頼もしいツールなんです!
使わないのはもったいない!ぜひこの機会に歯科衛生過程についておさらいしましょう。
2.なぜ今、歯科衛生過程が重要視されているの?
3.歯科衛生士「過程」って何?
4.多職種との協働にも便利
5.歯科衛生過程を使いこなそう!
1.歯科衛生過程なんて習いましたっけ?
こう思われたあなたはおそらく大ベテラン衛生士さんでしょう。
それもそのはず、歯科衛生過程が養成機関で教えられるようになったのは、歯科衛生士教育が3年制以上になってからだからです。
実は私も、学生時代は歯科衛生過程を習っていません。卒業時に担任の先生から「これからこういった考えが重要になるから」と一冊の本を手渡されたことは記憶に残っています。
その本が『歯科衛生ケアプロセス(医歯薬出版株式会社)』という本でした。
中身をパラパラとめくってみたのですが、当時の私にはチンプンカンプン。
まさかそんな自分が歯科衛生士養成学校で歯科衛生過程について教えることになろうとは、どことなく運命を感じます。
2.なぜ今、歯科衛生過程が重要視されているの?
ずばり、「自分で考え問題解決ができる歯科衛生士」が求められているからです。
これまでの歯科衛生士は、歯科医師の指導の下に業務を行うことが重要とされてきました。もちろんそれ自体はルールとして存在します。ですが、ここには歯科衛生士としての判断が存在していません。
患者さん一人ひとりの性格や希望としているゴールが違うのに、何も考えずに歯科医師からの指示のみを実行する、そんな画一的な処置を行っていていいのでしょうか?そうではないはずです。
今後も超高齢社会は続きますし、さまざまな基礎疾患をお持ちの患者様も増えてこられます。そして、患者様に合った処置がどんどん複雑化していきます。
そのため、これからの歯科衛生士には、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドの処置を「自分で計画して実施できる知識と技術が必要」になってくることが考えられます。
こういった考えから、今、考えるツールである歯科衛生過程が重要視されているのです。
3.歯科衛生士「過程」って何?
歯科衛生過程の「過程」とは、プロセスのことです。ものごとが変化し進行して、結果に達するまでの道筋という意味です。
普段の思考過程に当てはめて考えてみると、イメージしやすいかもしれません。
たとえば、あなたがあと5㎏体重を減らしたいと思ったとします。体重を5㎏減らすにはどうしますか?
- 甘いものを控える
- お昼ごはんをサラダにする
- 運動をする
体重を5㎏減らすという目標に対して、それを達成するために必要な手順を考えるのではないでしょうか。
さらに手順を細分化していくには、甘いものをどれくらい控えるのか、運動はどんな運動を週にどれくらい行うのか、より掘り下げて考える必要がありますよね。
つまり、思考の「過程」というものは、私たちが意識していなくても自然に行っているものなのです。
では、臨床で歯科衛生過程を使った場合を考えてみましょう。
Aさんは妊娠6か月で安定期に入っています。歯科医師に、「最近歯を磨くと血が出るのですが、どうしたら治りますか?」と相談したようです。
その後、あなたは歯科医師にAさんのTBIを指示されました。
さぁどういった具合に処置を進めましょうか?
出血をとめることが目的だから、とにかく歯垢染色をしてよく染まったところを重点的に磨いてもらう?
そもそもプラークが取れていないことが原因だから、磨き方を指導する?
歯科衛生過程を使わない画一的な処置の場合、とにかく出血を止めるためにブラッシング指導といった、技術的なことばかり患者様にお話ししてしまうでしょう。
ところが歯科衛生過程を使って考えると、まず情報収集からはじまります。Aさんは妊娠中ですので、歯磨きをされるときに嘔吐反射が普段より出やすい可能性があります。
安定期でつわりが落ち着く人も多いですが、よくよくAさんに歯磨き時の状況を聞いてみると、臼歯部を磨く時に少し気持ち悪くなってしまい、十分に磨けないということが分かりました。しかも、出血部位が臼歯部に集中していることも分かりました。
そのような方に、ブラッシングの技術だけを一生懸命に指導しても受け入れてもらえませんよね?そういった画一的な指導・処置ではなく、その人に合った方法を考えてみましょう。
Aさんは臼歯部を磨くと気持ち悪くなってしまうので、短時間でさっと磨くだけでプラークが取れれば負担が少ないはず。
ならばキシリトールガムを毎日噛んでいただいて、プラークがサラサラで除去しやすい状態に変化するところまで持っていきましょう。
このように、歯科衛生過程を使うことで、患者さん一人ひとりが抱えている問題をあぶりだすことができ、その人にあったオーダーメイドの処置が行えるのです。
4.多職種との協働にも便利
歯科衛生過程を使いこなせば、看護師や管理栄養士、薬剤師の方々とのチームで協働する際にも便利です。
もともと歯科衛生過程は、「看護過程」を基に歯科衛生士向けにアレンジされたものです。
管理栄養士や介護職、薬剤師にも歯科衛生過程のような考えるツールがありますので、私たちが歯科衛生過程を使いこなせるようになると対象者の問題を共通認識する際に便利です。
5.歯科衛生過程を使いこなそう!
ここまで歯科衛生過程についてざっくりとお話ししましたが、使いこなせるようになるまでは訓練が必要です。
難しいように思われるかもしれませんが、歯科衛生過程はあくまで「考えるツール」。情報を整理し活かすツールですので、日々の臨床で活用しながら覚えていきましょう!
次回からは歯科衛生過程をそれぞれのステップに分けて解説していきます。