こんにちは、加藤久子です。
歯科界では、研究者の方たちが毎年新しい論文を出し、それにともない日々知識や技術がアップデートされています。
もちろん、みなさんが日々行っている歯科衛生士業務も例外ではありません。
この連載では、2021年現在における「歯周治療の基本」をお伝えします。
第1回は、ペリオの処置にはかかせない、歯周検査(ペリオドンタル エグザミネーション)について。
その中でも、歯科衛生士の技術が必要なプロービングについて説明します。
1.器具の把持
器具の把持には、執筆状変法を用います。
器具の把持なんて重要でないと思われる方も多いと思いますが、正しく把持することにより、次のような利点があります。
- 検査が正しく行える
- 軟組織に外傷を付けないように操作を行える
- 術者の手の負担軽減
ぜひ皆さんも、自分の器具の把持方法を一度振り返って、自分自身で確認してみて下さい。
また、次の写真のように小指1本を立てている方が多いですが、小指も他の指と同じように揃えるようにして下さい。
2.固定点を取る
執筆状変法にて器具を把持できるようになれば、次に固定点を取ります。
口腔内固定を取る場合でも、器具の把持をしっかり行わないと、固定が不安定になります。
下記イラストは、小指が薬指の横にきっちり沿えられていますよね。
ここも器具把持のポイント。小指だけが独立してはいけないのです。
歯周組織検査後は、処置に入ります。適切な処置を行うためにも、かならず検査を怠らないようにします。
重要なことは、SRP前後そしてメインテナンス時など、それぞれの検査結果を注意深く比較すること。
「BOP(Bleeding On Probing)」とはポケット内に出血がある、つまり炎症が存在するということです。
ペリオのメインテナンスは、長くても3か月ぐらいの間隔でリコールを行っていると思います。
毎度測定値と出血度、歯肉退縮などを記録し、以前のデータと比較することは、SRPが成功しているかどうかの指標にもなります。
歯肉退縮の測定については、ペリオ専門医ではよく行うものの、一般の歯科医院では行わないことも多いですが、実施する場合は歯科医師の指示に従います。
メインテナンスの際に、時間がないからといってプロービング測定検査を省くようなことはしてはいけないのです。
時間内にプロービング測定検査ができるように、歯科衛生士はトレーニングしないとなりません。
私が指導に伺っている歯科医院の歯科衛生士の方たちも、はじめはプロービング測定に時間がかかっていましたが、少しずつできるようになりました。それは歯科衛生士本人の努力次第です。
また、患者さんに一定の医療を提供するためにも、歯科医院で使用するプローブの材質(金属やプラッスチック)や測定のメモリ、プロービング測定方法、歯科衛生士のレベルをできるだけ統一することが重要です。
3.プロービング測定
プロービング圧、プロービング操作はかなり以前に変わりました。
あなたの知識や技術は、古い昔の情報で終わっていませんか?
プローブ操作のポイント① プロービング圧
プロービング圧は20g「から」ではなく、20g「まで」です。
強いプロービング圧がかかったり、角度が大きくなったりすると、適切でない測定結果が出てしまいます。また、患者さんにも違和感を与えてしまいます。
特にペリオの患者さんは、プローブがスムーズにポケット底まで進みやすいです。
基本的なプロービング方法がわからないと、深いポケット操作になった時に、プローブのメモリの読み方や操作を混乱してしまいます。
プローブ操作のポイント② プローブの挿入の方法
歯肉への挿入の基本として、プローブの角度に気をつけましょう。
プローブの角度を強くつけて歯肉縁下に挿入せずに、プローブを歯軸と平行にしながら、ポケット底を進めます。
イメージ的には、歯肉内縁上皮に傾けてプローブを挿入するのではなく、下記のイラストのように、歯軸に平行にウォーキングストロークで操作を行います。
次の写真のプロービング操作は間違っています。プローブが歯軸に平行になっていないですよね。
上のイラストのウォーキングストロークと比べてみて下さい。違いがわかると思います。
プローブ操作を上手く行なわないと、プローブが歯肉溝やポケット内の歯肉内縁上皮側にあたってしまい、本来出血しない歯肉溝やポケットから出血してしまうという操作ミスが起こることもあります。
4.1点法、4点法、6点法について
一般的にプロービング測定には、1点法、4点法、6点法があります。
精密検査では、本来なら6点法を用いるのが良いですが、歯科医院でのプロービング測定を行う場合は、4点法か6点法かを統一することが望ましいです。
6点法では、頬側遠心・頬側近心・頬側中央・舌側近心・舌側遠心・舌側中央のブロックを測定します。ブロックごとに一番深い測定値を記録します。
決して「この点の部分」と決めつけるのではなく、ブロックすべてにおいてプロービング測定を行いましょう。
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器具の操作は、経験則だけではなりません。
歯科衛生士の方々は、以前は適切とされていた歯周病処置が、時代とともに改善されていることも多くあることを知り、より多くの患者さんに貢献できるようにしてほしいです。
しっかりと基本を踏まえ、アップデートしてください。
くわしくは、私の著書をご覧ください。
加藤久子(2021)『絵でわかるスケーリングのきほんの本』デンタルダイヤモンド社.
次回はスケーリング操作についてお話しします。