お片づけの達人直伝!歯科医院の快適収納術 #05 バックヤード

こんにちは、歯科助手の松田由紀子です。

第4回は、患者さんと働く人の真逆の目線や動線を意識しながら、清潔で使いやすい「診療室」とホスピタリティのお話をいたしました。

前回まではこちら

#01 プロローグ
#02 待合室
#03 受付
#04 診療室

最終回の今回は、技工スペースや準備・消毒スペースなど、患者さんからは見えない場所「バックヤード」のお片づけのポイントと、歯科医院の整理収納術の総括をお伝えします。

待合室や診療室がきれいに整えられている医院さんでも、バックヤードを拝見して言葉を失ってしまったこともあります。

患者さんからは見えない場所だからといって、物があふれていたり、汚れていたりしても良い場所ではありません。

見えないからこそ、皆さんの“スタッフ力”が試される場所でもあります。

今回も本題の前に…

以前、外部講師としてお伺いした医院(院内ラボ併設)のスタッフさんから、「棚に模型が入りきらない」とのご相談がありました。

そのスタッフさんは、歯科技工士と歯科助手を兼任されていて、技工室の片づけをする時間がないとのことでした。

そんな状況でありながら、他のスタッフさんからは「いつ片づけるの?」と言われてしまい、技工室に入るのが憂鬱だと打ち明けてくださいました。

そうなのです!

片づいていないと、その場を見るたびに“汚れているなぁ”“やらなきゃ”と焦り、“でもできない”“もうやりたくない”と、ネガティブな気持ちになってしまうのです。

そんな気持ちにならないためにも、整理収納は必要です。

また、歯科医院では歯科医師、歯科衛生士、歯科助手・受付、そして院内ラボがあれば歯科技工士などが仕事をしています。

それぞれに担当業務があり、いちばんにやるべきことがあるのは誰でも同じです。

仕事を兼任しているスタッフさんは、それぞれの大変さがわかるがゆえに、お願いするのをためらっていたようです。

院内各所が、患者さんにも働く人にも心地よい場所であるためにも、お互いがそれぞれの仕事や役割を尊重し、気遣いと気配り、誰かに手伝いが必要な時には気づける環境作りも大切ですね。

#05 バックヤードのお片付け

では、本題です。

#03 受付のお片づけ「整理収納5つの鉄則」の② 動作・動線にかなった収納でお伝えした通り、一般的に収納は、

(目線から腰の高さ)>(しゃがむ)>(背伸びや脚立が必要な高さ)

の順で、使いやすい高さになっています。

「整理収納5つの鉄則」② 動作・動線にかなった収納

歯科医院の技工スペースや準備・消毒スペースには、作業台やシンクがこの「中」にあたる位置にあるので、使いやすさは保証されていると思います。

しかし、使いやすい(ものを置きやすい)=散らかりやすい、汚れやすい場所なので、注意が必要です。

また、技工スペースの水まわりは、アルジネート印象材や石膏、水が飛び散ります。

汚れない工夫や、飛び散ったら拭く、使ったら片づけるといったように、「ちょこちょこ掃除」で常にキレイな状態を心がけましょう。

「ちょこちょこ掃除」で常にキレイな状態に
技工スペースは「ちょこちょこ掃除」で常にキレイな状態に

準備・消毒スペースは、高価なバーや丁寧に扱うべき器具などが集まる場所です。そこが雑然としていると、紛失や破損の原因となるかもしれません。

患者さんに安心安全な歯科医療を提供するための第一歩、洗浄・消毒・滅菌作業をする場所でもあるということを忘れずにいると、気が引き締まります。

安心安全な歯科医療を提供するため場所。常に清潔に!
準備・消毒スペースは、安心安全な歯科医療を提供するためにも清潔に

模型の整理収納

技工スペースでもっとも収納に困るのが、模型です。

スタディモデル(診断模型)の保存期間は治療終了から3年間と決まりがありますが、補綴物を作るための作業模型には保存義務はありません。

この作業模型を残している医院さんもありますが、ほぼ必要がないまま、場所だけを取ってしまいます。

整理とは、必要なものと不要なものを分別して、不要なものを取り除くことです。

作業模型や保存期間の3年を経過したスタディモデルは、定期的に院内で話し合い、不要ならば処分しましょう。

残す模型は(咬合器についているものは外す)、患者さんごとに模型箱に入れたり、ジッパー付き袋に入れたり、上下顎でまとめたりと、医院によってさまざまな方法があります。

しかし、それらをどこにどのように保管するかを決めるときには、やはり「整理収納5つの鉄則」が登場します。

それでも、残しておく場所がない場合は…

スタディモデルの正面、左右側面、上下歯列の咬合面を写真撮影してカルテに添付した場合、模型の保存期間は(スタディモデルの算定をおこなった日の翌月から起算して)3ヶ月で良いことになっています。

当院は、来院中の方の模型(口腔内装置作製用の模型含む)は「中」の位置に保管していますが、治療が終了した方の模型は、「上」の位置に2ヶ月ごとに分けて残してあります。

少し余裕をもたせた8割収納を目指しましょう
少し余裕をもたせた、8割収納を目指しましょう

基本的に、ものを置く位置の高さは、動作と使用頻度を考慮しながら決定します。

本来ならば「上」の位置には軽いものを置く方が良いのですが、使用頻度から考え、この場所にしています。

また、収納ボックスの日付ラベルなど、付け替える予定のある場合のラベリングは、簡単にはがせるマスキングテープがおすすめです。

使いにくさNo .1?吊り戸棚の収納

バックヤードの収納場所に、吊り戸棚がある医院さんも多いと思います。

特に吊り戸棚の最上段は出し入れしにくいので、使用頻度の低いものを入れる方が良いのですが、たまにしか使わないものを入れてしまうと、そのまま忘れてしまうこともあります。

その場合、扉を開けるだけで何が入っているのかわかるようにメモを貼っておくと、あることを忘れてまた注文してしまった、ということを防げます。

見える位置にメモ紙を
出し入れしにくい場所は、見える位置にメモ紙を

また、100均グッズなどを使いデッドスペースをなくす、ものを取り出しやすくする、中身がわかるようにすると、使いにくいといわれる位置もうまく活用することができます。

100均グッズでぴったり収納
100均グッズを活用し、ぴったり収納に

そして、当院では、どこに何があるのかをすべてのスタッフと共有するために「置き場の説明書」を配布しています。

スタッフに配布している「置き場の説明書」
スタッフに配布している「置き場の説明書」

ただし、この置き場=定位置は永久ではありません。

使いやすさは更新し続けるので、今回挙げた当院の一例も、今後改善が必要になることもあると思います。

おわりに

職場環境の改善・維持のために、5S(整理・整頓・掃除・清潔・躾)をおこなっている医院さんもあるかと思います。

今回は「患者さんも働く人も行きたくなる歯科医院」作りを目指し、皆さんの医院さんでも“これ、ちょっとマネしてみようかな”と、気軽にはじめられるような整理収納についての記事を、5回にわたり執筆させていただきました。

ものだけでなく、さまざまな無駄を減らせる整理収納、片づけで得られる3大効果(#01 プロローグ参照)を感じ、毎日気持ちよく歯科医院でのお仕事をしていただければ嬉しいです。

これまで連載をご覧くださりありがとうございました。

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