こんにちは、歯科助手の松田由紀子です。
第3回では、歯科医院の司令塔でもある「受付」の整理整頓・収納をご紹介いたしました。
前回まではこちら
今回は、患者さんと働く人の真逆の目線や動線を意識しながら、使いやすい「診療室」の整理収納とお掃除ポイントをお伝えします。
最後には、クリニックコンシェルジュとしての経験をまじえて、医院でありがちな診療室での「ホスピタリティ」の注意点を解説します。
今回も本題の前に…
私たちにとっては日常的な場所である歯科医院ですが、患者さんにとってはそうではなく、名前を呼ばれて診療室に入るときは不安や緊張があります。
そんな気持ちに寄り添うことを忘れずに、清潔で快適に整えられた診療室にご案内しましょう。
誘導するときの注意点
患者さんをお呼びする際、名前で引っ張るような呼び方をしていませんか?
扉を開けながら、カルテを確認しながらなど、ながら挨拶をしていませんか?
患者さんの誘導時に限らず、一度しっかりと手を止め患者さんのお名前を呼び、相手に向かって明るい声と表情で挨拶をします。挨拶は「語先後礼(ごせんごれい)」が美しいです。
※ 語先後礼(ごせんごれい)とは、言葉を先に、その後にお辞儀をする礼の仕方です。
挨拶は床に向かってするものではないですから、言いながらお辞儀をするのではなく、相手に向かって挨拶をしましょう。
また、患者さんの誘導路には、カルテやレントゲンといった他の患者さん情報がわかるものが目に入らないように配慮します。
そして、キャビネットやドクターチェア、ユニットのブラケットテーブルなどが障害にならないように、移動のスペースを確保しておきましょう。
#04 診療室のお片づけ
では、本題です。
おさらいになりますが、整理収納には、次の5つの鉄則があります。
- 適正量の決定
- 動作・動線にかなった収納
- 使用頻度別収納
- グルーピングの効果
- 定位置管理
前回の#03 受付編で、「5つの法則は組み合わせることで、相乗効果が生まれる」とお伝えしました。
診療室内で、無駄のない動きでスムーズに診療の準備や処置ができているスタッフさんは、知らずしらずのうちにこの5つの法則を組み合わせているのだと思います。
逆に、診療室内をあちこちと動き回っていたり、探しものや在庫切れが多いようでしたら、見直しが必要かもしれません。
診療室の収納といえば、移動式キャビネットを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
キャビネットは、整理収納の5つの鉄則がギュッと詰まった例です。
当院の場合は、ドクター用と歯科衛生士用のキャビネットがあります。
どちらのキャビネットも限られた量しか入れられないため、もっともよく使うものを上の段、そして各段のよく使うものをそれぞれ手前に配置しています。
また、ひとつの治療・処置で使うものを近くに配置し、誰でもわかるように管理します。
また、診療室内に備え付けの収納棚がある医院さんもありますが、当院は診療室内に材料や在庫を置く棚はありません。そのため、消毒室(技工室)の棚に置くようにしています。
それにより移動はありますが、アクション数(ものを取り出すまでの動作の数)は少ないです。
ご覧の通り、材料は箱から出して保管しています。
箱から出したものは、100円ショップで購入したケース(ジャストサイズのものがかならず見つかります)に入れると見た目がスッキリ。そして、誰にでもわかるようにラベリングをします。
箱から出すことで省スペース化にもなり、“見える化”することで在庫切れや期限切れを防ぐことができます。
1秒も無駄にしない時短収納
これは私が自宅でおこなっていることですが、5個パックのボックスティッシュは、買ってきたらすぐにビニールの包装から出して、取り出し口も開けて収納しておきます。
歯科医院の場合だと、グローブの箱が届いたら、取り出し口を開けておくとスムーズです。
これに限らず、“次に使うことを意識して”収納すると、忙しい診療中でのちょっとしたイライラも解消されます。
「収納」と聞くと、ものをしまい込むこととイメージされがちですが、本来は、必要なものを取りだしやすく収めることをいいます(#01 プロローグ参照)。
限られたスペースに無理に押し込むのではなく、整理整頓を理解して、働きやすい環境を医院の皆さんで作ってくだされば嬉しいです。
患者さん目線でのチェックも忘れずに!
患者さんがユニットにおかけになったら、そこは私たちとは目線の高さも見えるものも変わります。
お掃除の時間に、是非ユニットに座ってユニット周りや診療室内を見渡してみてください。
また、水平位診療の位置までユニットを倒して診療中の患者さんには何が見えているかを、体験してみるのも良いかと思います。
その時のポイントは、“見ようとして見ること”です。
上の画像は、患者さん目線がないと見落としてしまうお掃除ポイントでもあります。
- スピットンとチェアの間、スピットンの向こう側の床
- スピットンの注水口
- ブラケットテーブルの下のインスツルメントホルダーのカバー
- ユニットの足元、足元の床
- ライトのカバー ←埃がとても目立ちます。小学5年生の頃の私は、歯科医院へ行くたびにとても気になっていました(笑)
- エアコンのフィルター
私たちは気にならない、見えていない部分であっても、患者さんが嫌な思いをしているポイントが隠れているかもしれません。
本当にあってる?そのホスピタリティ
女性の患者さん場合は、ひざかけをお使いいただくことがあるかと思います。
その際に「ひざかけはお使いになりますか?」と、お声かけはしていますか?
ひざかけをかける、診療室中にお顔にお水がかからないようにタオルをかけるなど、医院ではホスピタリティとしておこなっていることも、患者さんよってはそうではないかもしれません。
ひざかけの繊維がお洋服につくのが嫌、タオルをかけると何をされるかわからず怖い、コロナ禍の今、できるだけ色々なものに触れたくないなど…
さまざまな理由をお持ちで、そのホスピタリティが不要な場合もあります。
「医療サービス」は、すべての患者さんに同じように提供する必要があり、医院で決められたこと=マニュアルがあります。
しかし、「ホスピタリティ」はサービスを個々に発展させることで、その患者さんのためだけのもの。1to1で提供していく必要があります。
そのため、足すことばかりがホスピタリティではなく、この患者さんには〇〇しない、引くということもホスピタリティであることを念頭に置いて、お仕事をなさってみてください。
「自分のことを理解してくれた」という安心感から信頼が生まれ、そのことが患者さんの満足に繋がります。
次回は最終回。
患者さんからは見えない場所でも手抜きはしない、消毒・技工室などのバックヤードについてお伝えします。