歯科医院における感染管理 第1回 使用済み器材の適正管理〜洗浄〜

みなさまこんにちは、歯科衛生士の柏井伸子です。

今回から4回にわたり、歯科医院における感染管理について、

「あぁ~、それって、あるある・・・」とか
「あれぇ、これってどうなのかなぁ?」という、

身近に起こりがちな事柄に触れながら、「まずは、ここから!」として、感染を管理し、予防していくための取り組みについて考えていこうと思います。

1:器材にも人にも優しい処理のために
2:アルコールは逆効果!チェアサイドでの拭き取り
3:自分たちの感染にも注意。洗浄時のポイント

1:器材にも人にも優しい処理のために

使用済み器材を再使用するために洗浄したり滅菌したりすることを「再生処理」と呼びます。

再生処理には「洗浄」・「消毒」・「滅菌」・「保管」という4つのプロセスがありますが、本来のスタート地点はチェアサイドです。

使用した器材には、セメント類、ガッタパーチャポイントなどの根充材、血液や歯石が汚染物として付着していますが、そのほとんどが水分を含んだウエットな状態から乾燥するにしたがい、固着していきます。

つまり、最初にやるべきことは、探針やストッパー、キュレットなどのインスツルメントに汚染物が付着した時点で、乾燥する前に大まかな汚れを拭き取ることです。

セメントや根充材が固着する前に水で湿潤させたガーゼやワッテで拭きとる
セメントや根充材が固着する前に水で湿潤させたガーゼやワッテで拭きとる

院内研修などで歯科医院にお伺いすると、消毒コーナーで固まったセメントを除去するために、ワイヤーブラシでガシャガシャと擦っている場面をお見かけします。

しかし、これでは器材が傷だらけになり、悲鳴を上げてしまいます。

そして、スタッフの時間とエネルギーからムダを省き、確実な器材処理をするためには、術者である歯科医師の先生方にもかならずご協力いただくという姿勢が必要です。

2:アルコールは逆効果!チェアサイドでの拭き取り

さて「チェアサイドでの拭き取り」には、みなさまは何を使いますか?

あらかじめ作って容器に入れてあるアルコールワッテを1枚取り出して、拭き取っている歯科医院もあるかもしれません。

しかし残念ながら、アルコールにはタンパク質を凝固させてしまうという特徴があります。

この性質を活かして、微生物の身体を構成しているタンパク質をカチカチに固めて分裂・増殖できないようにすることが「消毒」になります。

そのため、スケーラーやキュレットについた歯石や血液を、アルコールワッテで拭きとるということは、自分たちの手で首を絞めているようなもの。

かえって汚染物をこびりついた汚れに変えてしまっている危険性があり、アルコール購入費用もムダになってしまいます。

つまり、もっともムダなくムリなく処理するためには、アルコールワッテではなく、水を入れた3wayシリンジや、しめらせたガーゼを使うべきということになります。

3:自分たちの感染にも注意。洗浄時のポイント

では、いよいよ消毒コーナーでの作業になります。

用意するものですが、針刺し事故を起こさないように、ヒューフレディ社のユーティリティグローブのような厚手のグローブを装着することをおすすめします。

ヒューフレディ社のユーティリティグローブ
ヒューフレディ社のユーティリティグローブ

さらに手洗い(用手洗浄)であれば、歯ブラシ・歯間ブラシ・試験管洗いといったブラシやスポンジが必要です。

スポンジの場合、ざらざらしたフィラメント部分で擦ると、ダメージが生じますので、やわらかいものを使用しましょう。

そして、自分たちが飛沫によって感染しないように、キャップ・ゴーグル・マスク・ビニール製エプロンなどの個人防護具(PPE;Personal Protective Equipment)を使用します。

次は洗剤の選択です。医療用具の洗浄には、医療用の洗剤が必要です。

キッチンでお皿を洗うための食器用洗剤は、落とすべき汚れの成分を炭水化物や脂質と設定していますが、医療用具の汚染物は、ほとんどがタンパク質です。

つまり、汚れの成分が異なりますので、食器洗い用洗剤では役に立たないということになります。

また、医療用洗剤にはpHで分けると弱アルカリ性と中性があり、弱アルカリ性のほうが高い洗浄力を有します。

しかしながら歯科用器材にはステンレスと同じような金属色に見えても、軽量化のためにアルミニウムが使われているものがあります。

アルミニウム製器材の腐食防止および高い洗浄効果のためには、中性のタンパク質分解酵素入りの洗剤を選択する必要があります。

一種類から複数種類の酵素を含有している洗剤が販売されていますので、適切なものを選択しましょう。

筆者がクリニックで使用している洗剤は、ウルトラクレンザイム(株式会社モリタ)エンザイマックス(ヒューフレディ)です。

ウルトラクレンザイムは、用手および超音波洗浄で使え、器材に優しいながら非常に洗浄効果が高いです。

ウルトラ・クレンザイム-モリタ

二つ目のエンザイマックスは、複数の酵素が配合されているため洗浄力が高い洗剤です。

また、液が紫色を呈するため、洗い漏れや洗い残しが識別しやすいことも特徴のひとつです。

エンザイマックス
エンザイマックス(ヒューフレディ)

そして、洗浄手順としては、まずは再使用するものかディスポかの分別をし、ディスポのものであれば廃棄します。

血液やだ液が付着したワッテ・ガーゼ・綿球などは医療廃棄物、注射針やメス刃などは危険物になりますので、それぞれ適切な方法で廃棄しましょう。

用手洗浄での注意点は、過度な飛沫を発生させて周囲を汚染することのないように、濃度を調製した洗剤液の中でこすり洗いを行うことです。

最近では、ウォッシャーディスインフェクター(自動洗浄消毒器)が普及していますが、これを使用する場合は、過積載による洗浄不良が常時起こらないように、詰め込みすぎに注意しましょう。
(関連:導入している歯科医院が急増中?!vol.1 ウォッシャーディスインフェクターについて学ぼう!

汚染物には病原微生物が存在しています。これを除去することで、次の工程の「滅菌」を、より質の高いものにすることが可能となります。

詳細に関しては、以下の拙著をご参照ください。

「ハンドピースから外科用器具までよくわかる歯科医院の消毒滅菌管理マニュアル」はこちら
「書き込み式歯科衛生士のための感染管理のきほん」はこちら

ハンドピースから外科用器具までよくわかる歯科医院の消毒滅菌管理マニュアル―無駄なく無理なく導入できる現実的な実践法の詳細はこちら
詳細はこちら

使用済みの器材の再生処理においては、きちんと汚れを落とすことはもちろん重要ですが、自分たちがケガや感染をしないように注意することも大切です。

要点をおさえて、安全な洗浄を行いましょう。

次回は「滅菌」についてです。お楽しみに。