矯正歯科医院必須のコミュニケーションとは? 第5回 治療中の患者様とのコミュニケーション②

この度、矯正歯科におけるコミュニケーション講座を第6回にわたりお伝えさせて頂く事になりましたClear Smile Academyの松岡登志子と申します。

前回のお話では、患者様とのラポールを形成する上で、患者様ご自身がクリニックにとって、多くの患者様のうちの単なるお一人であるという感覚でなく、「私は大切に思われている」と思っていただくことが要であるというお話をいたしました。

「患者様のことを大切に思っています」というメッセージを発信し、それを患者様に適切に伝える為には、その患者様とのお話を記憶にとどめ、次回の治療にも繋げていくことで、より良い関係を築くことができるという内容でした。

今回は、さらにその「あなたを大切に思っています」効果を高めるお話をしたいと思います。

これから二つのポイントをお話致します。

前回まではこちら

第1回 矯正歯科必須のコミュニケーション力について
第2回 30分間の初診相談が勝負!
第3回 笑顔が生む効果
第4回 治療中の患者様とのコミュニケーション①

1.患者様に伝わる話し方をする

コミュニケーションというのはどの場面においても、発信する側と発信される側が存在し、そのコミュニケーションの良し悪しの判断は、メッセージを発信した側がするのではなく、常に受け取る相手方がします。

言いかえるならば、何かについて伝えたい、理解をしてほしいから話すので、相手の方に理解をしてもらう話し方をすることが大切です。

治療中には、こちら側から何かを患者様に伝えなくてはいけないことが多々あります。

それは何かをしてほしいと言う依頼やお願いが含まれていることもありますし、必要な情報を伝えないといけない場面であったりするため、すべて正確に患者様に伝える必要があります。

しかし、言いたいことをだらだらと思いつくままに話してしまうと、患者様に伝わらないばかりか、不快感を招いてしまう結果になりかねません。

患者様に伝わる話し方をする

例えば、装置の使い方についてお話をする場面を思い浮かべてください。

この装置はこのような形状でして、歯の位置を動かす為に使います。そしてこれは痛みを感じやすい人とそうでない人がいて…

という風に話したとします。

これを聞くと、患者様はこの人は何を話したいのだろうと首を傾げます。

装置の形状なのか、痛みについてなのか…何について話をするのか心構えができていないと、話の内容どころかその話自体が雑音に聞こえてきてしまいます。

話す順番としては、① 話のタイトル、② その理由または内容を箇条書き、という流れでお話をすると効果的です。

先程の例を用いてお話をいたしますと

① タイトル

今日はこの装置の使い方についてご説明いたします。

② 内容(箇条書き)

4つの流れがございますので、順番にご説明いたします。もし私の説明が足りない場合は、ご遠慮なくお聞きください。まず、1つ目です……

というようにお話を進めると、とても流れがスムーズで患者様も聞く体勢準備ができますね。

2.患者様の心の声を聞き取る

例えば、患者様が

あとどのくらい待ちますか?

ということを受付のスタッフにお聞きになったとします。その時に、

あと5分位です

とお伝えしたとします。

5分というのは、その受付のスタッフからすると大した時間ではないし、あともう少しだから大丈夫だろうという勝手な憶測かもしれません。

しかし、その患者様がその質問をした背景には、「次に予定があり急いでいるの。」という気持ちを伝えたかったのかもしれません。

日本では、あまり自分の気持ちを表に出すということが好ましくない印象がありますし、その反面その気持ちを言わなくてもそっと察してほしいという期待も存在します。

つまり患者様はご自身のお気持ちをその態度や質問の内容から理解してほしいということです。

それは患者様の言葉、表情、態度に現れます。

五感を研ぎ澄まし、患者様の気持ちを読もうと意識を持ち続けることで、どなたでも必ずそれが分かるようになります。

その気持ちが伝わることで、「私は大切に思われている」と感じて頂けるのです。

五感を研ぎ澄まし、患者様の気持ちを読もうと意識を持ち続けることが重要

あと何分くらい待ちますか?

という質問の裏に、急いでいるから早くしてほしいという気持ちが隠されていると感じたら、

あと5分ほどでお呼びすることができます。お急ぎでいらっしゃいますか?

と答えると、自分の伝えたかったことを言わずして理解してもらった安心感で本音を素直に言えるのです。「はい、実はそうなのです」と。

患者様が本音を言える雰囲気をクリニック全体で創りあげることで、患者様に安堵感を生み出し、その積み重ねが歯科医院とのラポール形成の基盤を固めていくことになります。

「大切に思う」とは、患者様が求めるコミュニケーションの取り方を発信する私達が、患者様の心の声を聞き、お話をする前に一呼吸置いて何が患者様の求める答えなのかを考え、それを適切に伝えることです。

そのコミュニケーションの気配りが患者様への思いやりとなり、患者様の心に響いていきます。

今まで5回を通して、患者様とのコミュニケーションについてお伝えさせて頂きました。それと同じくらいに重きを置く必要があるのは、スタッフ間のコミュニケーションです。

歯科医院の歯科医師とそのスタッフの意思疎通が円滑に図られ、風通しの良いクリニックを創り上げることがとても大切です。

なぜなら、それが患者様に快適な空間を提供することへ繋がっていくからです。

次回、最終回となりますが、「スタッフ間のコミュニケーション」についてお話をいたします。

矯正歯科医院必須のコミュニケーションとは?

第1回 矯正歯科必須のコミュニケーション力について
第2回 30分間の初診相談が勝負!
第3回 笑顔が生む効果
第4回 治療中の患者様とのコミュニケーション①
第5回 治療中の患者様とのコミュニケーション②
第6回 スタッフ間のコミュニケーション