歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?
歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。
ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?
「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。
このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!
新型コロナウイルスと喫煙の関係を調べた論文
今回解説するのはこちらの論文です。
新型コロナウイルス(COVID-19)と喫煙:システマティックレビュー
『Tobacco Induced Diseases』
こちらの論文は、アメリカのハーバード大学歯学部とギリシャのクレタ大学医学部が共同して行ったシステマティックレビューです。
* システマティックレビューについては、こちらの記事で説明しています。
(参照:歯科衛生士向けおすすめ論文 No.5「歯磨剤の使用はプラーク除去に本当に効果的なの?」)
この研究は、2020年3月19日までに発表された新型コロナウイルスと喫煙の関係について調べた研究を集め、信頼性の高いものだけを抽出し、その結果を分析したものです。
どんな方法で調べている?
2020年3月17日時点で、ふたつのデータベースを使用し、「喫煙」と「COVID-19」に関する研究71本を抽出。その中から5つのデータを選択しました。
選ばれた研究はすべて中国で行われ、41〜1,099人の被験者が参加したものでした。
喫煙者がICUに入るリスクは非喫煙者の2.4倍?!
5つの研究の中でもっとも被験者が多い、1,099人の新型コロナウイルス患者を対象にした研究では、ICUのサポートや人工呼吸器を必要とする重症患者、または死亡した患者において、喫煙者の割合が高いことが明らかになりました。
公開されたデータからは、喫煙者が重症化するリスクは約1.4倍、ICUに入るリスクは約2.4倍高いと算出できたようです。
この研究に対する考察
喫煙が肺に悪影響を及ぼし、呼吸器疾患にも関連することは、医療従事者だけでなく一般の方にも広く認知されています。
そのため、新型コロナウイルスによる肺炎についても、喫煙者の方が重症化するリスクが高いということは、容易に想像できますよね。
ただし、今回抽出された5つすべての研究において、非喫煙者と喫煙者の間に有意差があると認められたわけではありません。
しかし、もっとも被験者が多い研究において、「喫煙者は非喫煙者に比べ、重症化や死亡のリスクが高くなる」と試算できたことは、ひとつの大きな結果といえるのではないでしょうか。
また、これらの研究では、現在の喫煙者と今までに喫煙歴がある者のリスクについても調べられています。現在は喫煙していなくても、過去に喫煙歴のある患者さんにおいても注意する必要があるでしょう。
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いかがでしたか?
今回は、歯周病に悪影響を及ぼす「喫煙」と「新型コロナウイルス」の関連について紹介しました。
毎日さまざまなメディアで新型コロナウイルスについて報道されていますが、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです!
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