知っていますか?口腔機能発達不全! vol.4 〜歯列不正を防ぐ食習慣&トレーニング〜

歯科衛生士のみなさんは、小児患者さんの臨床にどれくらい関わっていますか?

矯正歯科や小児歯科に勤めている方は、毎日のように関わる機会がありますよね。

一方で、歯周治療やインプラントに特化した歯科医院などで働いていると、小児患者さんと関わる機会はあまり多くないかもしれません。しかし、これから出産を控えている方が来院することや、メインテナンスに通っている方が、それぞれのライフステージの中で、結婚や出産を経験することは少なくないでしょう。

直接関わる機会は少なくても、保護者の方を介して、小児の正しい口腔機能を育成するサポートはできるはずです!

これまでの記事はこちら

vol.1 口腔機能発達不全はなぜ起こる?
vol.2 哺乳期に気をつけることとは?
vol.3 離乳食の正しい進め方とは?

今回は、歯列不正を防ぐ食習慣や、簡単に取り組めるトレーニングについてお伝えします♪

普段の食事から気をつけられること

乳歯がすべて萌出し終えたら、歯ごたえのある食べ物をなるべく増やし、咀嚼機能を育成します。歯ごたえのある食べ物とは、以下のようなものです。

  • ごぼう、にんじん、セロリなど繊維の多い野菜
  • ひじき、高野豆腐、切り干し大根などの乾物
  • だんごや練り物などのもっちりした食感のもの

単に「かたい」食べ物ではなく、「噛みしめて味わえる」食べ物を与えることが重要です。調理するときは、食べ物を少し大きめにカットし、歯ごたえを残して煮たり、炒めたりしましょう。

日本小児歯科学会の専門医・指導医である外木徳子先生によると、咀嚼・嚥下に異常がある子どもには、以下のような傾向がみられるようです。

  1. 食事中の姿勢が悪い
  2. 一度にたくさんの食べ物をほおばる
  3. 舌が食べ物や食器を迎えに行くような食べ方をする
  4. 口角に食べ物や唾液がたまりやすい
  5. 口唇をよくなめる
  6. 咀嚼回数が少ない
  7. 食事中、水分で食べ物を流し込んでいる
食事中の姿勢を指導し、咬合状態が改善した症例(外木徳子先生よりご提供)
食事中の姿勢を指導し、咬合状態が改善した症例(外木徳子先生よりご提供)

前回の記事でもお伝えした通り、食事中は足を床につけ背筋を伸ばした状態でとらせるようにしましょう。

また、お茶や水などの水分は、口腔内に食べ物がなくなってから飲ませるようにしてください。
(前回の記事はこちら:知っていますか?口腔機能発達不全! vol.3 〜離乳食の正しい進め方とは?〜

ストップ口呼吸!鼻呼吸のすすめ

ヒトは鼻呼吸を行うことで、異物除去や体温の一定化、湿度調整を行うことができます。

しかし、鼻疾患があったり、習慣的にスポーツをしたりしている子どもは口呼吸になりやすく、鼻呼吸による恩恵を受けることができません。

口呼吸をすると、乾燥した空気によって咽頭などを痛めやすく、風邪や咽頭炎、扁桃炎を起こしやすくなります。

また、唾液量が減少することによって、う蝕や歯肉炎、口内炎、ヘルペスなどにも罹患しやすくなるといわれています。

そのため、原因となる鼻疾患や不正咬合がある場合は早期に治療を行い、普段の生活の中でも意識して行えることを実施する必要があります。

風邪をひいた子ども

鼻呼吸を促す方法とは?

① 正しい舌の位置を覚える

安静時の正しい舌の位置は、上顎口蓋部にある「スポット」という場所に舌尖、口蓋全体に舌背がある状態を指します。

上顎口蓋部のスポット(外木徳子先生よりご提供)
上顎口蓋部のスポット(外木徳子先生よりご提供)

舌が正しい位置にあると口呼吸ができず、かならず鼻呼吸になるため、この位置を覚えることが重要です。

また、水をのどに溜めて行う「ガラガラうがい」も、鼻呼吸を促すことにつながります。

② 口輪筋を鍛える

口輪筋の力が弱いと、常に口が開いた状態になり、口呼吸になりやすくなってしまいます。

口輪筋を鍛えるには、「ブクブクうがい」が有効です。ブラッシング後のうがい時には、口から水が吹き出ないように行いましょう。

このとき、水を含む位置を、左右の頬や上唇、下唇の裏に動かすと、口輪筋全体を鍛えることができます。

また、シャボン玉や吹き戻し、風船を膨らますといった遊びも口唇の力をつけるのに有効です。普段の遊びの中に取り入れられると、子どもが楽しみながらトレーニングできますね♪

シャボン玉で遊ぶ子ども

このように口輪筋を鍛えることで、自然と正しい食べ方や呼吸方法が身につき、歯列や咬合の状態も改善される可能性があります。

口呼吸の小児患者さんを見つけたら、ぜひ簡単に取り組めることから指導してみてください。

***

いかがでしたか?

今までは歯科疾患管理料とセットで算定しなければいけなかった「小児口腔機能管理料」。今年度の診療報酬改定により、歯科疾患管理料を算定した月であれば、別日でも独立して算定できるようになりました。

また、「小児口唇閉鎖力検査」という項目も増設され、ますます小児に対する口腔機能管理が重要視されています。

口唇閉鎖力測定器「りっぷるくん」(引用:株式会社松風HP)
口唇閉鎖力測定器「りっぷるくん」(引用:株式会社松風HP)

メインテナンスを行う際は、う蝕や歯周病だけでなく、歯列や咬合状態の確認も行い、小児患者さんに対して必要なトレーニングを提案できるといいですね♪

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監修・資料提供:医療法人社団守徳会 とのぎ小児歯科 理事長兼院長 外木徳子先生

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