2019年11月、歯科メーカーのサンスターによって20歳以上の男女600人を対象に「オーラルフレイル意識調査」が実施されました。
この調査によると、オーラルフレイルのリスクがある人は5割以上という結果が出ました。
今回は、この調査について詳しく紹介します♪
調査結果のポイントは4つ!
今回の調査によって明らかになったことは、以下の4つです。
- オーラルフレイルのリスクを持つ人は、全体の5割以上
- 64歳以下においては、1日のブラッシング回数が少なく、メインテナンスの受診率が低いことが、オーラルフレイルのリスクにつながっている
- オーラルフレイルのリスクを持つ人は、食習慣やコミュニケーション量に問題あり
- オーラルフレイルのリスクを持つ人は、リスクが低い人に比べて食べたいものを我慢している
それでは、ひとつずつ結果内容を確認していきましょう♪
① オーラルフレイルのリスクを持つ人は、全体の5割以上
こちらの調査では、東京大学高齢社会総合研究機構が発表した、「オーラルフレイルチェックリスト」を用いて、リスクの有無を調べています。
オーラルフレイルチェックリストの内容は、以下の通りです。
- 半年前に比べて、硬いものが食べにくくなった→「はい」2点、「いいえ」0点
- お茶や汁物でむせることがある→「はい」2点、「いいえ」0点
- 義歯を使用している→「はい」2点、「いいえ」0点
- 口の乾きが気になる→「はい」1点、「いいえ」0点
- 半年前に比べて、外出の頻度が少なくなった→「はい」1点、「いいえ」0点
- さきいか、たくあんくらいの硬さの食べ物が噛める→「はい」0点、「いいえ」1点
- 1日に2回以上歯を磨く→「はい」0点、「いいえ」1点
- 1年に1回以上は歯科医院を受診している→「はい」0点、「いいえ」1点
チェックリストの総合計点数が2点以下の場合、オーラルフレイルのリスクは低く、3点だとリスクあり、4点以上はリスクが高いとされます。
この結果、「リスクあり」に該当する人が22.0%、「高リスク」が30.8%となり、全体で52.8%の人がオーラルフレイルのリスクを持つということが明らかになりました。
中でも、65歳以上では、56.0%の人がリスクを持つという結果が出たようです。
② 64歳以下においては、1日のブラッシング回数が少なく、メインテナンスの受診率が低いことが、オーラルフレイルのリスクにつながっている
つづいての調査において、オーラルフレイルチェックリストの「1日に2回以上歯を磨く」と「1年に1回以上は歯科医院を受診している」の2項目に「いいえ」と回答した人は、65歳以上よりも64歳以下の方が有意に多いということがわかりました。
* 「有意」とは…統計学の用語で、“確率的に偶然とは考えにくく、意味があると考えられる”ことを指します。
質問/回答 | 64歳以下 | 65歳以上 | ||
---|---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ | |
1日に2回以上歯を磨く | 74.7% | 25.3% | 84.7% | 15.3% |
1年に1回以上は歯科医院を受診している | 47.6% | 52.4% | 72.0% | 28.0% |
とくに、1年に1回以上歯科医院を受診する割合においては、64歳以下では受診しない人が過半数を占めます。このような口腔にとって良くない習慣が、オーラルフレイルのリスクにつながっているといわれているようです。
③ オーラルフレイルのリスクを持つ人は、食習慣やコミュニケーション量に問題あり
今回の調査の被験者に対して、生活習慣に関する調査をあわせて行ったところ、オーラルフレイルのリスクを持つ人は、リスクの低い人に比べて「早食いしがち」「硬いものをあまり食べない」「週1日以上、人とほとんど話さない」といった特徴があることが明らかになりました。
したがって、食習慣に問題があり、食事以外で口を使う機会が少ない人は、オーラルフレイルのリスクが上がる可能性があります。
④ オーラルフレイルのリスクを持つ人は、リスクが低い人に比べて食べたいものを我慢している
また、オーラルフレイルのリスクを持つ人のうち、約2割は食べたいものを我慢しており、これはリスクが低い人に比べて2.7倍高いという結果が出ました。
食べたいものを我慢している理由TOP3は、以下の通りです。
- 歯の間に物が詰まる(46.3%)
- 歯肉に痛みや出血などの不安がある(26.8%)
- 噛む力が弱い(25.6%)
「歯の間に物が詰まる」という理由に関しては、う蝕や歯周病だけでなく、不適合な修復物や補綴物、咬合の状態、義歯の適合状態など、さまざまな原因が考えられます。しかし、「歯肉に痛みや出血などの不安がある」という理由については、歯周病が大きな原因となっていることが考えられます。
歯周病によって痛みや出血などが起き、さらに歯槽骨が破壊されることで歯が動揺すると、「噛む力が弱い」と感じる人も多くなります。
全国的に8020運動が広がり、高齢者における残存歯数は圧倒的に増えました。しかし、それと同時に、正しくブラッシングを行う習慣や、メインテナンスに通う習慣がついていないことが原因で、歯周病の罹患率も年々上がっています。
(参照:平成28年度歯科疾患実態調査-厚生労働省)
オーラルフレイルチェックリストの中でも、「義歯を使用している」「1日に2回以上歯を磨く」「1年に1回以上は歯科医院を受診している」という項目については、高齢者でなくてもあてはまる患者さんが多くみられるかと思います。
元気そうに見える患者さんでも、オーラルフレイルのリスクが高いと判断される場合、私たち歯科医療従事者は注意を促し、生活習慣の改善を図る必要があります。
患者さんの抱えている問題を少しでも多く解決できるよう、日々のささいな困りごとにも耳を傾けていきましょう♪
出典:サンスターグループ『<オーラルフレイル意識調査>身体の老化に大きな影響を与える“オーラルフレイル”の危険性がある人は5割以上!』