1月13日、東京都内にて「DH勉強会LOL」が開催されました。
こちらは、2017年に歯科衛生士の加瀬久美子さんが設立した歯科衛生士向けのスタディグループで、「LOL」には「lots of lough=楽しく学ぼう」という意味が込められているといいます。
DH勉強会LOLでは、“学校では教えてくれない「4つのコントロール」”について学ぶことができます。
(参照:歯科衛生士向けのスタディグループ、DH勉強会LOLで4つのコントロールについて学ぶ!)
第1回は、サリバコントロールについて。
今回は定員20名のところ、24名の歯科衛生士が参加し、キャンセル待ちがでるほど人気だったようです!
それでは早速、当日の様子をお伝えします♪
受講生同士で自己紹介タイム!
受講生の中には、勤務先の歯科医院に自分しか歯科衛生士がおらず、一人で悩んでいる方がたくさんいます。そのため、DH勉強会LOLでは、“歯科衛生士の横のつながりを深めてもらいたい”という加瀬さんの想いから、まずはじめに受講生同士の自己紹介タイムが設けられています。
各自グループを作って以下のことについて話し、受講生同士で共通点を探します。
- 名前(呼び名)
- どこから来たのか
- 勤務先
- 最近楽しかったこと、嬉しかったこと
- この勉強会で手に入れたいもの
また、加瀬さんは、LOLに参加する際のポイントとして、以下の6つを挙げました。
- オープンマインドで楽しむ!
- できることにフォーカス!
- 学んだ内容を日常で実践!
- 自分の体験を仲間にシェア!
- 教えて学ぶ!
- とにかく調べる!
サリバコントロールの必要性とは?
はじめに加瀬さんは、1日の唾液分泌量や、唾液分泌量が変動する因子について詳しく説明しました。
また、口腔乾燥と唾液腺機能低下の違いについても解説。口呼吸によって口腔乾燥が起きている方や、唾液腺機能低下が起こっている方の口腔内の特徴を、実際の症例写真を見せながらわかりやすく説明しました。
唾液腺機能低下は、加齢による経年変化ではなく、加齢による筋力低下にともなう機能低下が原因で起こると話す加瀬さん。そのため、高齢者であってもトレーニングをすれば筋力が上がり、機能が向上することで唾液も出るようになってくるといいます。
一方で、糖尿病や内服薬によって、唾液腺機能低下が起こっている患者さんも多く、処方薬が増えれば増えるほど唾液腺機能低下も進むと加瀬さんは言います。
最近では、若者の唾液が減っていることを指摘し、唾液腺開口部位にも関わらず歯質が脱灰している場合は、う蝕のリスクが高いと判断すると伝えました。
ステファンカーブで学ぶう蝕のリスク
つづいて加瀬さんは、う蝕の発生に関与する「ステファンカーブ」について詳しく解説しました。
ステファンカーブとは、プラークのpHの変動を示すグラフのことをいいます。
食事や間食の摂取によってプラークのpHが下がると、歯質は脱灰しますが、時間が経つと唾液の緩衝能によって中和され、歯質は再石灰化されます。しかし、中和される前にまた飲食をすると、pHがずっと低下した状態が続きます。この状態が長時間続くと、歯質が再石灰化よりも脱灰にかたむき、う蝕が発生しやすくなってしまいます。
患者さんにう蝕発生のメカニズムを理解してもらうためにも、歯科衛生士にとって重要な知識です!
加瀬さんは、う蝕のリスクが高い人と低い人のステファンカーブの特徴をそれぞれ説明。ステファンカーブの変動に影響するさまざまな因子は、果物に含まれる果糖や、清涼飲料水に含まれるブドウ糖、砂糖の主成分であるショ糖といった発酵性糖質の摂取に大きく関与すると話しました。
子どもへの感染に注意する前に、養育者ができること!
乳児にミュータンスレンサ球菌の感染や定着が集中する期間は、生後19ヶ月から31ヶ月まで、年齢でいうと1歳半から2歳半頃までの間といわれています。これは、離乳することで母乳による免疫が切れてしまうことと、まだ乳児の免疫系が未熟で抗体を作れないことが原因といいます。
ミュータンスレンサ球菌の感染経路は、約5割が母親であり、3割が父親、2割がその他といわれていますが、だからといって、両親と子どものスキンシップを控える必要はないと加瀬さんは言います。
普段から加瀬さんは、感染力が高まらないようにシュガーコントロールを徹底し、子どもに感染しても良いような口腔内、すなわち口腔内細菌が少ない清潔な口腔内にして、積極的なスキンシップをどんどんとってくださいと患者さんに伝えているそうです。
養育者との密なスキンシップは愛情表現のひとつでもあるため、子どもの成長にとてもいい影響を与えると話しました。
また、唾液とよだれの違いや、唾液の移動方向、唾液量に影響する因子などについても、さまざまなデータをもとに紹介しました。
徹底解説!サリバコントロールをするには?
サリバコントロールは、大きくわけてふたつ、モイストコントロールとpHコントロールが重要である。そのための大前提として、体内水分量を増やす必要があると加瀬さんは言います。
具体的なサリバコントロールの方法として、あえて唾液腺マッサージ以外の10個のポイントについて詳しく説明しました。
- ノンカフェインでしっかりと水分補給
- シュガーコントロール
- 食べものの具体的な提案
- 食後のチーズ
- ガムの噛み方の提案
- 音波ブラシの使用
- 舌まわしトレーニング
- ぶくぶくうがい
- あいうべ体操
- 自律神経を整える
歯科衛生士の役割は、患者さんを「治す」のではなく、患者さんの「治る力を最大化する」こと。そのために、健康教育と自立支援を行うことが大きな仕事であると加瀬さんは言います。
さまざまなメリットを紹介しながら、サリバコントロールは全身の健康につながることを強調しました。
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今回の勉強会を通して、サリバコントロールは、患者さんの口腔内にとって非常に重要な役割を果たすことがわかりました。本当に歯科衛生士学校では学べなかった、より専門的な知識をたくさん学ぶことができたと感じます。
また、受講生同士のディスカッションタイムの時間を多く設けたり、途中のブレイクタイムでは、おいしいスイーツを配ったりといった、加瀬さんの受講生に対する気遣いがたくさんみられました。
つぎの日からすぐに使える知識を学べるだけでなく、受講生同士の情報交換も活発に行われるDH勉強会LOL。
次回は、サリバコントロールの話の中でも何度も話題にあがった「シュガーコントロール」について学びます♪お楽しみに!