2月11日、東京都内にて「DH勉強会LOL」が開催されました。
こちらは、2017年に歯科衛生士の加瀬久美子さんが設立した歯科衛生士向けのスタディグループで、「LOL」には「lots of lough=楽しく学ぼう」という意味が込められているといいます。
DH勉強会LOLでは、“学校では教えてくれない「4つのコントロール」”について学ぶことができます。
(参照:歯科衛生士向けのスタディグループ、DH勉強会LOLで4つのコントロールについて学ぶ!)
第2回は、シュガーコントロールについて。
前回の記事はこちら
それでは当日の様子をお伝えします♪
食生活に大きく関わるシュガーコントロール
DH勉強会LOLではおなじみの、受講生同士による自己紹介の後、加瀬さんは、今回の勉強会のゴールを紹介しました。
- 砂糖の影響について正しい知識を持つ
- 砂糖の過剰摂取の兆候に気づく目を持つ
- シュガーコントロールの提案ができる
- 患者さんに合わせた食生活指導ができる
まず、う蝕発症の概念として「カイス(Keyes)の輪」や「カリエスバランス」、「生態学的プラーク仮説」について解説。う蝕の重症度は砂糖の摂取量と比例するという報告を紹介しました。
加瀬さんは、炭水化物やタンパク質、脂質といった三大栄養素のうち、う蝕の原因になるのは炭水化物のみであり、炭水化物の中でも糖類に分類される二糖類や単糖類に注意する必要があるといいます。
また、カリエスマネジメントができていなければ、歯周治療後に根面う蝕が多発してしまう可能性があるため、カリエスマネジメントを行ってからペリオマネジメントを行う必要があると強調しました。
酸蝕症について徹底分析!
つぎに、加瀬さんは酸蝕症の特徴について説明しました。臼歯部や前歯部における酸蝕症の臨床所見を、さまざまな症例写真をもとに紹介。
酸蝕症は、生活習慣病であると加瀬さんは言います。
普段から、歯科医院で使用しているヒアリングシートとは別に、摂取した食べ物を記録してもらうための用紙を配布している加瀬さん。
食事記録表には休日を含む連続3日間、口に含んだものすべてを記録するようにお伝えしますが、摂取することが習慣化してしまっている嗜好物については、つい無意識になってしまい、記入しないこともあるとのこと。
そのため、ヒアリングシートの情報からなかなか原因がつかめない場合も、根気よく丁寧にインタビューすることが重要であると伝えました。
つづいて加瀬さんは、さまざまな飲み物のpHについて紹介。炭酸飲料や黒酢ドリンク、果汁ジュース、スポーツドリンクなどの飲料に歯牙の半分を1週間浸し、それぞれの歯の脱灰量を測定。
その結果、スポーツドリンクは、ほかの飲み物に比べて圧倒的に歯牙を脱灰させるということがわかりました。
また、スポーツドリンクと経口補水液の違いや、スポーツドリンクの水分吸収率についても言及。
酸性の飲食物を摂取するときの注意点として、以下の4つのポイントを挙げました。
- 曜日を決める
- 飲む量を決める
- だらだら飲みをしない
- 飲んだらお茶や水を飲む
飲み物に含まれている砂糖の量を調べよう!
つづいて、清涼飲料水に含まれる砂糖量を計算するワークショップを行いました。
受講生同士で協力し合い、スーパーやコンビニなどでよく販売されている7種類の清涼飲料水に含まれる砂糖量を、以下の方法でそれぞれ計算しました。
砂糖量の計算方法
内容量(ml)÷ 単位量(ml)× 単位量あたりの炭水化物の量 (g)= 砂糖量(g)
例:500mlペットボトルの清涼飲料水で、100mlあたり炭水化物15gと記載されている場合 500(ml)÷100(ml)×15(g)=75(g) よって、この清涼飲料水には75gの砂糖が含まれている |
7種類の清涼飲料水のうち、砂糖量がダントツに多かったのは「濃いめのカルピス」!スティックシュガー24本分にあたる、72gの砂糖が500mlペットボトルに入っていることが計算できました。
この結果には、受講生のみなさんも驚きを隠せない様子でした!
代用甘味料についての正しい知識を身につける
つづいて加瀬さんは、代用甘味料の表示基準について説明。
「糖類ゼロ」や「シュガーレス」といった表示は、食品100gまたは飲料100mlに対し、糖類が0.5g未満であれば表示可能であり、かならずしも糖類がまったく入っていないとはいえないといいます。
中でも、「甘さひかえめ」という表示については、そもそも表示基準すら設けられておらず、糖類がどれだけ入っていても表示可能だそうです。
また、加瀬さんは、歯科医院で販売されたり、プレゼントされたりしている、キシリトール入りのチョコレートやグミついても言及。
「むし歯にならないから大丈夫」と与えてしまうことによって、歯科医院がお菓子を食べる習慣づけのきっかけとなってしまうことを懸念していました。
糖類が及ぼす血糖値への影響について
つぎに、糖類摂取による血糖値への影響について詳しく説明。
中でも、食後に血糖値が急上昇したのち、急降下する「グルコーススパイク(血糖値の乱高下)」に着目。グルコーススパイクが起こると、インスリンが過剰に分泌され、ヒトは一時的に低血糖になってしまうそうです。そうすると、低血糖を解消するためにアドレナリンが分泌され、交感神経が興奮してしまいます。
そのため、就寝前に食事を摂取すると、寝ている間にグルコーススパイクが起こり、歯ぎしりや体のこわばり、寝汗、悪夢といった症状が出やすくなるとのこと。
患者さんには、最低でも就寝する2時間前には食事を済ませるように指導することが重要と話しました。
また、清涼飲料水を好む患者さんの口腔内写真を紹介し、高血糖による歯肉へのダメージについて解説。高血糖になると、血管が損傷しやすくなるため、歯肉の発赤や、ブラシ傷が絶えないというトラブルが起きやすくなるそうです。
プラークコントロールが良好であっても、このような症状がみられる際は、飲食習慣についてあらためてヒアリングする必要があると話しました。
歯科衛生士は毎日どれくらいの糖類を摂取している?
最後は、受講生があらかじめ記入してきた食事記録表を隣同士で交換!糖類が含まれると思われる食材に赤丸をつけ、お互いが摂取した糖類について確認しました。
普段患者さんに指導する立場である歯科衛生士であっても、意外に糖類を摂取する機会は多く、多くの方が自分の食生活を見直すきっかけになったといいます。しかし、中にはひとつも赤丸がつかないとても優秀な方も!
こういったワークを通じて、自身の学びだけでなく、受講生同士の関係を深めることもできるDH勉強会LOL。
次回は、歯科衛生士なら誰もが気になる「プラークコントロール」について詳しく学びます♪お楽しみに!