小児う蝕治療法 充填治療に優位性なし 英国

イギリスの大学群によって行われた大規模な研究の結果、小児う蝕の治療法としてCRなどに代表される充填治療は、その他の治療法と比べて、その予後に明確な優位性があるわけではないことが明らかになりました。

今回の研究結果は、11月26日に『the Journal of Dental Research』にて発表されました。

小児う蝕に対する治療法についての研究

この研究には、ダンディー大学、ニューカッスル大学、カーディフ大学、クイーン・メアリー大学、リーズ大学など、イギリスの名だたる大学が参加。

全英72件の歯科医院から抽出された視診により最低1個の乳臼歯う蝕に罹患していると診断された3歳から7歳の小児患者1,144名を対象に実施さています。

それぞれの小児う蝕に対して、以下の3つの治療法のいずれかがランダムに選択され、最長で3年間の経過観察が行われました。

治療法 ①

う蝕には触れない。新しいう蝕に罹患しないために、糖分の摂取量の抑制、フッ素配合歯磨剤を用いた1日2回の口腔清掃の推奨、フッ化物バーニッシュ、萌出してきた第一大臼歯へのフィッシャーシーラントを行う。

治療法 ②

う蝕を除去して、CRなどで充填を行う。+ 予防処置を行う。

治療法 ③

MI(minimally invasive)アプローチとして、う蝕を金属冠ないし充填材料で密閉し、う蝕の進行を抑制する。 + 予防処置を行う。

小児う蝕に対する治療法についての研究

その結果として、経過観察期間において、以下の基準において、どれか一つの治療法が、他の治療法より優れていることを示すエビデンスは見出されなかったといいます。

  • 小児患者がう蝕による痛みを感じる
  • 根尖病巣が確認される
  • QOLが低下する
  • 歯科恐怖症になる

また、どの治療法にもかたよりなく、対象小児患者の43%(450名)において、経過観察中に新規のう蝕、あるいはう蝕による痛みが確認されました。

なお、3つの治療法はすべて、小児患者さん、保護者、歯科医師にとって受け入れられるものだったといいます。

日本歯科医療へのヒント

研究に参加したニューカッスル大学のアンネ・マグワイア教授は、つぎのように述べています。

予防することがもっとも大切です。
しかしながらう蝕に罹患した場合でも、選択肢として複数の治療法があるため、個々の小児患者の臨床上の必要性や行動上の許容レベルに合わせて治療法を選択するべきことが示されました。

日本の歯科医療保険制度においては、う蝕は削って充填することが第一選択肢になりがちですよね。

今後は、小児患者さん一人ひとりに、適切と判断する治療法が選択できるような保険制度へと発展していくことを願っています。

出典:
The University of Sheffield_Experts call for more active prevention of tooth decay for children’s teeth
PubMed_Child Caries Management: A Randomized Controlled Trial in Dental Practice.