歯磨剤によく配合されている「CPC」と「IPMP」って?

7月12日、広島大学は人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防の口腔ケア用「オーラル プリベント&ケア マウスウォッシュ」を開発・製品化すると発表しました。
(参照:【研究成果】人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防の口腔ケア用「オーラル プリベント&ケア マウスウォッシュ」を開発・製品化!

この製品は、広島大学と医薬品のメーカーが連携して開発した、新しい「液体ハミガキ」。

人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防の口腔ケア用として開発された製品ですが、高齢者における口腔の感染症や誤嚥性肺炎の予防としての在宅ケア、またはインプラント治療を受けた患者さんのセルフケアとしても使用できるそうです。

成分としては、歯磨剤や洗口剤によく含まれている、「塩化セチルピリジニウム(CPC)」と「イソプロピルメチルフェノール(IPMP)」の両方が配合されています。

今回は、この2つの成分について、詳しく調べてみました♪

歯磨剤の成分「CPC」と「IPMP」について

塩化セチルピリジニウム(CPC)とは

歯磨剤だけでなく、洗口液やトローチなどにも広く使用される安全な薬品で、口腔内の浮遊性細菌に対して強力な殺菌作用をもっています。

CPC は陽イオン性であるため、陰イオン性であるバイオフィルム表層の細菌に付着して持続的な殺菌効果を示します。

歯科医院で取り扱う製品としては、アパガードリナメルルシェロポイントケアジェルバトラーデンタルリキッドジェルなどに配合されています。

CPCの効果
塩化セチルピリジニウム(CPC)の効果

イソプロピルメチルフェノール(IPMP)とは

細菌が産生するバイオフィルムは、薬剤の浸透を妨げるはたらきがあります。そのため、CPCはバイオフィルム表層の細菌には効果的ですが、バイオフィルム内部までは浸透しません。

それに対して非イオン性の薬品であるIPMPは、親水性(水になじみやすい性質)と疎水性(水になじみにくい性質)の中間の性質をあわせもっています。

そのため、バイオフィルムへの浸透性にすぐれており、強い殺菌作用を発揮します。
(参照:歯周病の真実-ライオン株式会社

歯科医院で取り扱う製品としては、システマ デンタルペーストαシステマ SP-Tジェルなどに配合されています。

イソプロピルメチルフェノール(IPMP)の効果
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)の効果

したがって、CPCとIPMP、この2つの成分が配合されているということは、口腔内の浮遊性細菌や、バイオフィルムの表層、さらには内部の細菌に対しても、効果的な歯磨剤であるといえます。

ほかの代表的な歯磨剤は?

通常、CPCとIPMPのどちらかが配合されていることが多い歯磨剤。では、その両方が配合されている歯磨剤には、どういったものがあるのでしょうか?

いくつかの商品をご紹介いたします。

ルシェロ歯みがきペーストP(株式会社ジーシー)

ルシェロ歯みがきペーストP(引用:株式会社ジーシーHP)
ルシェロ歯みがきペーストP(引用:株式会社ジーシーHP)

CPC とIPMP以外にも、抗炎症作用のある「グリチルリチン酸ジカリウム(G2K)」と、血行促進作用のある「酢酸トコフェロール(VE)」を配合。

歯周炎予防に特化した歯磨剤で、歯科衛生士のみなさんにも人気の製品です。

ルシェロ歯みがきペーストPの詳細はこちら

クリンプロ™ 歯みがきペースト F1450(3Mジャパン株式会社)

クリンプロ™ 歯みがきペースト F1450(引用:3Mジャパン株式会社HP)
クリンプロ™ 歯みがきペースト F1450(引用:3Mジャパン株式会社HP)

3M独自の技術でフッ化物とカルシウム、リン酸の同時配合に成功した製品。
フッ化物含有濃度が1,450ppmと国内製品ではもっとも高い濃度でありながら、CPCとIPMPに加えてG2Kも配合されています。

歯周炎だけでなくう蝕予防にも有効な一本です!

クリンプロ™ 歯みがきペースト F1450の詳細はこちら

システマ 薬用歯間ジェル(ライオン歯科材株式会社)

システマ 薬用歯間ジェル(引用:ライオン歯科材株式会社HP)
システマ 薬用歯間ジェル(引用:ライオン歯科材株式会社HP)

こちらは、ジェルタイプの歯磨剤です。歯間ブラシやタフトブラシにつけてブラッシングすることで、歯ブラシでは届きにくい部位のう蝕・歯周炎予防ができます。

配合されているアルギン酸ナトリウムが唾液と反応し、粘着性が増すことによって、IPMPが患部に長くとどまるはたらきがあります。

潤滑剤としても使えるため、歯間ブラシの使用に慣れていない患者さんにもおすすめです。

システマ 薬用歯間ジェルの詳細はこちら

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いかがでしたか?

歯科医院で使用しているものや、患者さんに向けて販売しているものについては、そこで働いているスタッフとして、どんな成分が入っているかしっかりと把握しておきたいものです。

毎日の診療に追われていると、ひとつひとつの製品について調べたり、さまざまな成分について勉強する時間を作ったりすることってなかなかできません。

患者さんから質問されたときや、新製品を扱うことになったタイミングなどに、スタッフ同士のミーティングを設けて一度振り返ってみるのもひとつではないでしょうか。