日本の歯科業界にはたくさんの資格制度が存在し、その代表格が歯科医師免許・歯科衛生士免許・歯科技工士免許です。
これらの資格は「国家資格」といって、国で認められている認定制度です。しかしその他にも「協会認定資格」「学会認定資格」など、自身のスキルアップのための資格がたくさん制定されています。
今回はたくさんある資格のうち、とくに糖尿病療養指導士・支援士の資格について、徹底解説しますよ!
1.糖尿病療養指導士・支援士とは?
2.地域糖尿病療養指導士・支援士の業務
3.資格取得の申請に必要な条件
4.資格のとりかた・費用について
5.地域糖尿病療養指導士の働き方
1.糖尿病療養指導士・支援士とは?
糖尿病療養指導士(CDE)とは、糖尿病患者さんに対して最適な療養指導を行うことができる、生活指導のエキスパート。
一般社団法人日本糖尿病療養指導士認定機構が制定する「日本糖尿病療養指導士(CDEJ)」と、各地域が制定する「地域糖尿病療養指導士(CDEL)」の2種類の資格があります。
CDEJは、看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師・理学療法士といった、糖尿病患者さんに直接指導を行う5職種が取得できる認定資格です。
CDELは上記の5職種に加え、医師や歯科医師、歯科衛生士、ケアマネジャーなど、糖尿病患者さんとかかわりのある職種の方が取得できる資格。全国に54の認定機構があり、2019年3月現在、23,936名が取得しています。
また、地域によっては、歯科衛生士が取得できる資格として「糖尿病療養支援士(CDS)」が設けられている場合があります。
今回は、歯科衛生士や歯科助手が取得できる地域糖尿病療養指導士(CDEL)と糖尿病療養支援士(CDS)について解説します♪
2.地域糖尿病療養指導士・支援士の業務
糖尿病の罹患者が年々増えつつある日本では、歯科医院においても、糖尿病を患う方が来院される機会が増えています。
地域糖尿病療養指導士の業務は、糖尿病治療にもっとも大切な自己管理について、正しい情報を患者さんに提供すること。
また、CDEJや他のCDEL、CDSが情報交換を行う場や、さまざまな研修に参加し、糖尿病治療に関する情報をアップデートすることが求められています。
(参照:CDEネットワーク-公益社団法人 日本糖尿病協会)
3.資格取得の申請に必要な条件
基本的に、勤務先または住居がある地域の認定機関にて、資格を取得できます。
たとえば神奈川県糖尿病療養指導士の場合は、以下のように定められています。
(参照:新規申請までの流れ-神奈川県糖尿病療養指導士認定機構)
- 神奈川地域に居住、または就労している必要があります
- 医療・福祉関連施設での糖尿病療養支援活動の経験が2年以上必要です
- 研修会に参加して認定単位を取得してください(神奈川県糖尿病療養指導士認定機構『新規申請までの流れ』より抜粋)
また、東京糖尿病療養支援士(東京CDS)の資格取得に必要な条件は、以下のように定められています。
(参照:東京糖尿病療養支援士:東京CDSとは-東京糖尿病療養指導士認定機構)
- 地域要件:受験時に、東京都に勤務(あるいは居住)
- 資格要件:受験時に下記に該当する資格を有するもの。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、歯科衛生士、栄養士、臨床心理士、臨床工学技士、登録販売者、養護教諭、自治体職員(保健、健康増進担当)、医療事務、医薬情報担当者(MR)他(東京糖尿病療養指導士認定機構『東京糖尿病療養支援士(東京CDS)の受験資格』より抜粋)
くわしくはお住まいまたは勤務先のある地域の情報をチェックしてください。
各団体のお問合せ先はこちら
4.資格のとりかた・費用について
たとえば神奈川県糖尿病療養指導士の場合は、指定された研修会に参加したら、つぎの書類をそろえて事務局に提出します。
- 糖尿病療養指導士新規申請書
- 糖尿病療養支援活動証明書
- 原稿用紙
- 参加証等貼付用紙
- 申請費用の振込み控え
申請費用は15,000円。申請期間は、毎年3月と9月の2回あります。
また、提出資料の「原稿用紙」では、糖尿病療養支援活動に関して、1,000〜1,200字の作文を用意します。
研修会の日程・各種書類のダウンロードはこちら
資格の更新について
神奈川県糖尿病療養指導士の認定期間は5年間とされています。
資格の更新には、期間内に医療・福祉関連施設での糖尿病療養支援活動の経験が2年以上必要。さらに、会が認定する研修会や交流会に一定数参加する必要があります。
更新の詳細はこちら
東京糖尿病療養支援士の場合は、以下のスケジュールで審査と試験が行われます。
(参照:認定資格取得までの流れ-東京糖尿病療養指導士認定機構)
資格取得に必要な費用
東京糖尿病療養支援士の資格取得には、以下の費用がかかります。
- 認定資格審査料(3,000円)
- 受験者用講習会受講料(10,000円)
- 認定試験受験料(8,000円)
- 認定料(5,000円)
また、試験合格後は日本糖尿病協会に入会し、年会費5,000円を支払います。
資格の更新について
東京糖尿病療養支援士の認定期間は3年間とされています。
更新を希望する場合は、引き続き日本糖尿病協会に入会し、期間内に会が認定する更新研修会を受講する必要があります。
更新単位の詳細はこちら
5.地域糖尿病療養指導士の働き方
今回は、鹿児島県糖尿病療養指導士の資格をお持ちの歯科衛生士 竹内里奈さんへお話を伺いました。
他にも竹内さんは、日本歯科衛生士会の糖尿病予防認定歯科衛生士の資格もお持ちです。
(参照:認定歯科衛生士FILE #13『日本歯科衛生士会 糖尿病予防指導』竹内里奈さん)
ぜひ参考にしてください♪
歯科医院に来院される患者さんで、糖尿病に罹患している方は多いです。その中で、糖尿病を正しく理解した上で歯科治療を行うことが大切であると考えました。
しかし、歯科衛生士が習得できる糖尿病関連の資格は、医科歯科ともに限られています。
その中で地域糖尿病療養指導士は、医科の資格であり、歯科衛生士も取得できるものだったので挑戦しました。
資格を取得する都道府県によって、システムは若干違いがあると思います。
私が取得した鹿児島県は離島があるので、糖尿病専門医のいない地域における療養指導の充実を図るため、認定機構がWEB講義を実施しています。
講義は資格を取得する前の年の3月から視聴がはじまり、1コマごとに確認テストがありました。
すべての講義と確認テストを受け終えた後、翌年2月に実施されるWEB試験を受験して合格したら資格が取得できます。
毎回試験が行われるので、まったく知識がない中で一から糖尿病について学ぶのは大変でしたが、着実に糖尿病について理解していく達成感がありました。
歯科にこられる患者さんから生活習慣の行動変容の仕方や糖尿病について相談された時に、応えられるようになることです。
また、糖尿病病診連携手帳の記載内容やお薬手帳の服薬内容を理解できるようになりました。
その他、未病で糖尿病の疑いがある患者さんに内科の受診を促したり、糖尿病の治療を中断している方に内科の受診を促したりできています。
そして、地域糖尿病療養指導士は、医科の研修会やグループディスカッションにも参加できます。
多職種連携の中で医師や看護師など方々と対等に意見交換を行うことができますし、歯科からの意見を求められることもあります。
医科からの歯科に対する意見や質問をダイレクトに受けるので、毎回学ぶことが多いです。
コロナ禍でなかなか会場での研修会への出席は難しいですが、WEBで学べる機会があると、自宅にいながら自己研鑽を積むことができます。
地域によってはWEBで講義を行っている認定機構もありますので、糖尿病に興味のある方は、ぜひ挑戦してみて下さい。
患者さんの基礎疾患を理解すると、いつもの診療の視野が広く感じられて、一人ひとりの患者さんに寄り添うための糸口が見つかると思います。
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超高齢社会の日本では、基礎疾患を持つ患者さんが歯科医院を受診する機会もますます増えています。
中でも歯周病と糖尿病には、強い関係があることが知られています。
糖尿病の知識を学ぶことができる糖尿病療養指導士・支援士に挑戦してみてはいかがでしょうか?
応援しています!