院内感染予防対策認定歯科衛生士ってどんな資格?

日本の歯科業界にはたくさんの資格制度が存在し、その代表格が歯科医師免許・歯科衛生士免許・歯科技工士免許です。

これらの資格は「国家資格」といって、国で認められている認定制度です。しかしその他にも、「協会認定資格」「学会認定資格」など、自身のスキルアップのための資格がたくさん制定されています。

今回はたくさんある資格のうち、特に歯科衛生士向けの資格「院内感染予防対策認定歯科衛生士」について、徹底解説しますよ!

[目次]
1.院内感染予防対策認定歯科衛生士とは?
2.院内感染予防対策認定歯科衛生士の業務
3.資格取得の申請に必要な条件
4.資格のとりかた・費用について
5.院内感染予防対策認定歯科衛生士の働き方(coming soon…)

1.院内感染予防対策認定歯科衛生士とは?

一般社団法人 日本口腔感染症学会が認定している制度で、現在38名の歯科衛生士が取得しています。

歯科医療現場ではB型肝炎、HSVなどのウイルス感染症をはじめ、梅毒や薬剤耐性緑膿菌などの細菌感染症を日常的に経験します。

さらに、最近では新型インフルエンザや新型コロナウイルスの脅威が世界中で猛威を振るう中で、「安全で社会に信頼される歯科医療の提供」に貢献し、同時に「医療従事者の安全と健康」に寄与するために制定された認定資格です。

2.院内感染予防対策認定歯科衛生士の業務

観血処置が多く、歯牙切削にともなう飛沫と環境汚染のリスクが高い歯科診療。

また、鋭利な器械器具が多く、精密な歯科用器械の消毒滅菌の煩雑さやコストパフォーマンスなど、課題を抱える一般歯科診療所では、かならずしも院内感染予防対策が十分に行われているとはいえないのが現状です。

院内感染予防対策認定歯科衛生士は、2003年に米国CDCが発表した「歯科院内感染予防ガイドライン」と、2004年に厚生労働省が発表した「HIV感染症の歯科治療マニュアル」に則り、スタンダードプリコーションを徹底することが求められます。

そのため、患者さん、働くスタッフのどちらにとっても安全な歯科医療を提供するための環境づくりを行うことができます。

また、院内感染予防対策認定歯科衛生士が在籍している歯科医院は、しっかりと院内感染予防対策を行っている証拠になり、患者さんに対しても良いPRになります。これからの歯科界において、就職に有利な資格のひとつといえます。

院内感染予防対策認定歯科衛生士ってどんな資格?

3.資格取得の申請に必要な条件

院内感染予防対策認定歯科衛生士の認定申請には、以下の条件を満たしている必要があります。

  1. 申請時に日本口腔感染症学会会員であること
  2. 歯科衛生士歴が5年以上であること
  3. 過去5年間に日本口腔感染症学会総会ならびに日本口腔感染症学会主催の研修会やセミナーに3回以上参加していること
  4. 感染予防対策、感染症、化学療法、薬物療法等に関して 、学会や研究会で発表、講演を行っていること。あるいは医学関連雑誌等に総説、論文等が掲載されたことがある
  5. 大学、歯科医師会、歯科衛生士会、歯科衛生士・歯科技工士・看護師等の養成機関、各種研修会・研究会等で、感染症や院内感染予防対策関連の講義、講演を行ったことがある
  6. 本学会以外の感染症、化学療法、薬物療法等に関連する学会や研究会、また大学、厚生労働省、歯科医師会、歯科衛生士会 等の感染症関連の研修会に参加していること
  7. 臨床に携わる歯科衛生士はスタンダードプリコーションを理解し診療を行っていること
  8. 院内感染予防対策に関するマニュアルが整備されていること

(一般社団法人 日本口腔感染症学会 院内感染予防対策認定歯科衛生士 制度規則より抜粋)

そのうち、臨床に携わる歯科衛生士の場合は 、①・②・③・⑦・⑧の5項目すべてを満たしている必要があります。

また、④・⑤・⑥のいずれかで、過去5年間に合計5回以上の実績がある必要があります。

研究機関や教職、行政に所属する歯科衛生士の場合は、①・②・③のすべての項目を満たしている必要があります。

また、 ④・⑤・⑥のいずれかで過去5年間に合計5回以上の実績がある必要があり、特に④または⑤は必須条件となっています。

どちらの場合も、③の実績は⑥に含むことができるため、④・⑤の実績があれば、その回数分⑥が免除されます。

申請条件の詳細はこちら

4.資格のとりかた・費用について

院内感染予防対策認定歯科衛生士の資格を取るには、次の申請書類を用意し、審査料5,000 円を添えて委員会に提出する必要があります。

  1. 認定歯科衛生士 申請書
  2. 履歴書
  3. 歯科衛生士 免許証のコピー
  4. 業績目録
  5. 院内感染予防対策マニュアル
  6. 審査料の振込領収証のコピー

申請書類はすべて決まったフォーマットが用意されています。

申請書類のダウンロードはこちら

また、次のようなチェックリストが用意されていますので、ひとつずつ記入漏れがないかどうか確認しながら書類を用意しましょう。

院内感染予防対策認定申請・更新申請時のチェックリスト
院内感染予防対策認定申請時のチェックリスト(引用:日本口腔感染症学会HP)

審査は毎年5月と11月の2回行われます。

申請書類を総合的に評価および審査を行い、適否は出席委員の3分の2以上の賛成によって判定されます。その後、理事会の議を経たら、院内感染予防対策認定歯科衛生士として認定されます。

その後、登録料10,000円を支払い、手続きが完了すると、認定証が交付されるとともに、同学会誌とホームページ上に掲載されます。

資格の更新について

院内感染予防対策認定歯科衛生士の認定期間は5年間とされています。

更新には、「3.資格取得の申請に必要な条件」で挙げた研修実績を修める必要があります。

更新を希望する場合、次の申請書類と資格更新手数料10,000円を添えて委員会に提出します。

  1. 認定歯科衛生士 更新申請書
  2. 履歴書
  3. 業績目録
  4. 院内感染予防対策マニュアル
  5. 手数料の振込領収証のコピー

更新書類についても、すべて決まったフォーマットが用意されています。チェックリストを参考にしながら、ひとつずつ用意しましょう。

申請書類のダウンロードはこちら

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いかがでしたか?

最近では、新型コロナウイルスの世界的な蔓延によって、院内の感染管理対策の重要性が再認識されています。

このような資格を活用して、日々の業務を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。