歯科衛生士免許を取得している方の中には、「企業で働く」という道を選んだ方々がいます。
平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、『事業所』に就業する歯科衛生士は全体の0.2%と、非常に希少な存在です。
(参考:全体の1%未満、企業で働く歯科衛生士について解説します!)
dStyleでは、今までに学んだ知識や経験を活かし、企業で働く歯科衛生士として活躍する方にインタビューを行いました。
歯科医院とはまた違った環境で働く魅力について、語っていただいています。
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今回は、歯科用電子カルテシステムで有名なメディア株式会社に勤める米可那さんにお話を伺いました。
歯科衛生士歴17年目の米さんは、結婚を機に1年休職したのち、やっぱり歯科衛生士の仕事がしたい!と3年前に歯科医院に復職。
現在はメディア株式会社の画像システム開発チームに所属し、自身の臨床経験を活かし、製品開発や営業・インストラクターとして勤務しています。
歯科医院勤務時代はこちら
わたしのDHスタイル #12 米可那さん『マイクロスコープを最大限に活用する』
メディア株式会社への入社
前職の歯科医院で、メディア株式会社の製品を使っていたのがきっかけです。
前職では口腔内写真やレントゲン写真、口腔内カメラ・位相差顕微鏡で撮影した動画や静止画を一元管理できる「Visual MaxⅢ」を使用していました。
当時、3台あったユニットすべてにマイクロスコープを設置することになり、Visual MaxⅢを使用する中で、“動画を記録する機能があるならば、マイクロスコープの記録装置も作れるのではないか”とメディア株式会社にオファーしました。
そしてでき上がったのが、現在私が開発や営業に携わっている「MicroRecorder」です。
また、マイクロスコープを使用した診療について、日本顕微鏡歯科学会のセミナーなどでお話ししたり、歯科医院向けのプライベートセミナーを行うと、「マイクロスコープは難しい、めんどくさい」という意見を多く聞くようになりました。
そのため、私の経験で掴んだマイクロスコープの活用ポイントや楽しさ、MicroRecorderやVisual MAXⅢを使用することで、管理が簡単になり、説明もしやすくなるということを伝えたいと思い、縁のあったメディア株式会社に転職しました。
仕事をする上でこだわっていること
一つ目は、ユーザー目線での考えと、開発者としての考えの架け橋になること。
営業やインストラクションを行う際には、その製品を使うことで、診療にどういう変化があるのかということをお伝えするようにしています。
単純にシステムについて説明するのではなく、私の経験で得たノウハウや有効な使い方をお伝えすることで、社員や顧客の皆さんに製品を利用する「未来」を想像してもらえるようにしています。
それから、“作る人”と“使う人”の意見って微妙に違うと思うんです。
そのため、製品開発に携わる際には、使用していて便利だった機能や、ボタンのネーミングなど、すごく細かいことでも意見を伝えるようにしています。
二つ目は、間接的に臨床に関わり続けること。
マイクロスコープを導入していても、先生は使っているけど、歯科衛生士は使っていないという歯科医院には、プライベートセミナーにお伺いして、マイクロの楽しさや、どのように臨床に活かしていたかなどをアピールしています。
そのようにいろいろな医院を回っていると、実はね…と、自社製品の使い方だけでなく、歯科衛生士業務や人間関係などについての相談を受けることがあります。
そういった場合にも、自分の臨床経験を生かしてお悩みを解決するようにしています。
また、自社の社員からも、お口のお悩み相談を受けることがあります。
歯科関連企業とはいえ、歯科を専門に学んできた方ばかりではないので、プラークがどのくらい汚いか、歯ブラシだけでは汚れが除去できないので、フロスや歯間ブラシが必要といったことをお話しします。耳が痛いと言われることもありますが…(笑)
私は私の経験を活かし、足りない部分を補い合って仕事ができたらいいなと思いますし、そのためにできることは積極的にやりたいと思っています。
今までの人生の中で、やっておいてよかったと思うこと
株式会社マーケティング・トルネードの佐藤昌弘さんの「凡人が最強の営業マンに変わる魔法のセールストーク」という本を読んだ事です。
「相手を知った上で提案すること」「人は興味関心が生まれなければ情報収集できる頭にならない」という内容が、臨床をしていた時も今も、とても役立っています。
治療説明を行う際は、患者さんのことをリサーチし、患者さんの反応を見ながら、話す順番や内容を変えて、自分のこととして捉えられるように心がけていました。
治療しても正しく予防ができなければ、再発してしまいます。正しい知識をつけて、無理なく続けられる予防方法を患者さん一人ひとりに合わせて提案し、実行できるようにすることが大切だと思います。
おすすめのツール
おすすめの製品はもちろん「Visual MAXⅢ」と「MicroRecorder」。
マイクロスコープは、単体では「見る」だけの機械ですが、記録装置があれば「見る+見せる+伝わる+勉強できる」機械になり、活躍の幅が広がります。
前職の歯科医院には自分専用の診療室を設けていただいていたので、常にマイクロスコープを使用することができました。
毎日研究しながら練習を重ねていく上で、記録装置があったからこそ自分の手技を見直すことができましたし、何よりも説明や指導の場面で、記録装置の活躍は大きかったです。
「MicroRecorder」は、録画や撮影がフットペダルで操作でき、お絵かき機能などを活用することで、より伝わりやすい説明を行うことができます。
さらに、Visual MaxⅢと併用することで、口腔内写真やレントゲン写真、歯周検査表などと共にマイクロスコープで撮影した動画や静止画を一元管理することができます。
Visual MaxⅢに保存された画像はMicroRecorderでも表示することができるので、「マイクロスコープの動画と口腔内写真」、「マイクロスコープの動画とレントゲン写真」など、比較表示することができます。
患者さんごと、日付ごとに管理ができているので見せたい情報をすぐに見せることができるのも、ポイントのひとつです。
また、仕事に欠かせないアイテムは、学生の時に買った顎模型です。臨床現場だけでなく、セミナーや社内で説明する際など、さまざまな場面で使用し続けています。
おすすめの情報収集の方法
「インプット」と「アウトプット」を意識しています。
歯科のことだけではなく、コミュニケーションの方法や身体に関わるすべてのことに目を向けています。そして、気になったら調べたり、詳しい人に話を聞きます。
また、勉強したことは、かならず誰かに説明するようにしています。そうすることで、自分の理解度もわかりますし、相手の理解度が伝わる説明になっているかどうかの判断になります。
また、なぜ?どうして?を考えることも、とても大切だと感じています。
カリエスの原因は?歯肉の炎症の原因は?など、患者さんの生活背景や食生活、メンタルの状態をよく観察し原因を探ることこそが何よりも勉強になります。
そういった点でも、マイクロスコープは細かい変化が確認でき、記録装置を使用すれば患者さんも視覚的に捉えることができるので、歯科衛生士だけでなく、患者さん自身も成長できます。
企業で働きたい!と思う歯科衛生士へメッセージを
まったく異なる業界への企業転職も面白いとは思いますが、同じ業界での他業種への転職はこれまでの経験を活かして貢献できると思います。
ぜひ勇気を持ってチャレンジしてみてください!
人生は一度きり!やりたい事は挑戦しましょう!