わたしのDHスタイル #23 下川床里美さん『次世代に受け継いでいく』

歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。

dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、フリーランス歴10年目を迎えた下川床里美さんにお話を伺いました。

地元大阪の歯科衛生士学校を卒業後、小室歯科に勤務。その後、西尾歯科に勤務しつつ、Jokanスクールのインストラクターとして活動。現在も西尾歯科で担当患者さんの臨床を行うかたわら、各地で院内研修を開催し、歯科衛生士の基礎知識や技術面のスキルアップを行っています。

下川床里美さん
下川床里美さん

仕事をする上でこだわっていること

日々の臨床では、歯周治療を通して、患者さんの何を見て、何を感じているかを常に考え、自分の行動に反映しています。

患者さんとの出会いを大切に思い、自分の行動が目の前の患者さんの健康観を変え、人生を変えることになるかもしれない!と常に意識しながら、仕事ができる歯科衛生士でありたいと考えています。

教える立場としては若い歯科衛生士の方々へ、私が先輩方から学んだバトンを渡していきたいと考えています。

患者さんの口腔内の病気を“改善できる”、“治せる”ように、手が動く歯科衛生士を一人でも多く育てられるよう、微力ではありますが、今私ができることを精一杯したいと思っています。

人を残していくこと”で、少しでも歯科界に貢献していきたいと思います。

働く中で、うれしかった出来事

2004年頃に勤務していた西尾歯科でのことです。当時、治療終了時にアンケートをお願いしていました。そのアンケートに、私が担当していた男性の患者さんが、「下川床さんは素晴らしい人」と書いて下さったんです。

とても、嬉しかったのですが…反面、罪悪感が込み上げてきました。なぜなら、その方の歯周病を改善できていなかったからです。

その方のおかげで、歯科衛生士としての技術に自信を持ちたい!自分自身を変えたい!と思えるようになり、それがきっかけで2006年にJokanスクールを受講することになります。

フリーランスの経験では、私が院内研修に関わらせていただいた歯科医院の新人さんが、研修を受けたことで歯周治療に前向きになってくれたことです。

その歯科衛生士さんは、歯周治療に苦手意識を持っており、元々ハンドスケーラーを正しく持つこともままならず…マネキン練習の際では長くハンドスケーラーを持っていられず、刃先に力を伝えることもできませんでした。

院内研修では、道具の扱い方や治療のテクニックについてだけでなく、患者さんを診るときの「想い」の部分をお伝えするようにしています。

患者さんを思う気持ち、「目の前の患者さんに、自分が何ができるのか?」かを考えることが、とても大事だと私は考えています。そういった医療人としての心構えがあってこそ、技術や知識も引きあがってくると考えます。

この時に行った研修でも、技術の勉強だけでなく、現役歯科衛生士の想いをつづったコラムなどを音読して、自分がどういう風に感じたかをスタッフみんなでシェアする時間を設けるといった工夫をしました。

その後、回数を重ねる中で、その歯科衛生士さんから「下川床先生の指導で、シャープニングやSRPができるようになりました。知識の面でいろんなことを知ると、色々とつながってきて、歯周治療が楽しくなり、歯科衛生士の仕事の素晴らしさをより深めることができました!」という話を伺いました。

最高に嬉しく、とても幸せを感じた瞬間でした!

山下スマイル歯科での院内研修の様子
山下スマイル歯科での院内研修の様子

今までの人生の中で、やっておいてよかったと思うこと

大阪の小室歯科に就職したことで、素敵な言葉に出会いました。

それは小室歯科の医院理念でもある「喜ばれることに、喜びを」という言葉です。他人に喜んでもらえることで、自分自身も幸せになれる。

たとえば、患者さんの「ありがとう」という感謝の言葉を集めていくことで、頑張る原動力になります。

若い頃は、この言葉の意味を考えようとしませんでしたが、歳を重ねていくうちに、深く考えるようになりました。他人を喜ばせる力を、追求していきたいです。

オススメの器具

SRPでは、GCの「アメリカンイーグルライト」やYDMの「ペリオプローブ WHO」が愛用品です。

アメリカンイーグルライトは、もともとJokanスクールで研修を受けた際、上間京子先生がお使いでした。それからずっと使い続けているのですが、なんといってもコストパフォーマンスがすごくいいんです。

ヒューフレディーさんやLMさんのスケーラーも好きなのですが、消耗品なので、使い心地とコスパの良さからずっと愛用しています。

アメリカンイーグルライト
アメリカンイーグルライト

ペリオプローブ WHOは、SRPで縁下歯石を探知する時にかかせないアイテムです。

もちろん自分が治療する際にも使用していますが、研修先の歯科医院さんでも、かならず使ってもらっています。

WHOのプローブは、重さが3gで、先端が直径0.5mmの球状になっています。この珠状の部分で根面の性状を指先に感じとることができます。プローブから伝わる細かい振動を捉えるには、より細く軽い器具が良いのです。

そして、探知用のエキスプローラーは、他社でも販売されているのですが、扱い方や角度によってはトゥの部分で根面を傷つける可能性もあるので、探知に使用するには上級者向きだと感じています。

SRPの精度を上げていくためにも、道具選びはとても大事なので、研修でもみんなにご紹介しています。

ヒューフレディーのエキスプローラー(上)とペリオプローブWHO(下)
ヒューフレディーのエキスプローラー(上)とペリオプローブ WHO(下)の比較

また、松風のエアーフローも臨床に欠かせません!

スウェーデンなど北欧の歯科医院では普通に常備されているものですが、日本の歯科医院では高額なこともあり、なかなか広まっていません(現在は最新機種の販売が好調と伺っています)。なので、実は自分で買いました。

サージテルを使って治療するようになって、長年メインテナンスで通っていただいている患者さんの口腔内をみた時に、補綴物に傷がついているのがわかったんです。超音波スケーラーで、自分がつけた傷…とても衝撃的でした。

その点、エアフローはパウダーで汚れを落とすので、侵襲性が低く、重宝しています。なかったら不安になりますね。チップやパウダーなど、今はクリニックで購入していただいているのでありがたいです。

サージテルを使用しての治療
サージテルを使用しての治療

これから挑戦したいこと

日本医療機器学会の第2種滅菌技士の認定を2013年に取得しました。
(参照:滅菌技師(士)ってどんな資格?

柏井伸子さんの『インフェクションコントロールコース』のスウェーデン&ドイツの海外研修に参加したのが、きっかけです。

この研修は洗浄・消毒・滅菌の感染管理について学ぶコースだったのですが、受講前はまったく知識がなく、NクラスとかBクラスの違いも曖昧な状態でした。

ドイツのインジケーターを開発している会社に訪問し、講義を受けた際、「オートクレーブは魔法の箱ではありません。」という言葉を聞いて、大きな衝撃を受けました。

どんなに良い滅菌器でも、詰めこみすぎたり、濡れたまま入れたりすると滅菌不良になる…滅菌器に入れたら滅菌できていると思っていたのですが、器材処理の仕方で、滅菌が不完全な場合もあるということを学びました。自分の知識のなさに愕然とした瞬間でした。

それから、2018年に学会の一般演題で学会発表をしましたが、まだまだ知識不足な部分があることは否めません。「感染管理」を知れば知るほど…奥が深いので、もっと知識を落とし込んでいく!学ぶべきことには、終わりが見えません。私のチャレンジは続きます!

研究・学会発表の様子
学会発表の様子

他にも気になっている分野は、たくさんあります。訪問診療やカリオロジーの勉強など、超高齢社会に向けての知識や全身疾患など、医療について多方面に知識を探求し、多くの人と情報共有して学びの歩みを続けたいと思います。

今の私があるのは、たくさんの出会いのおかげです。

出会いによって人は、成長します。これからも、ご縁を大切に、たくさんの出会いにより、これからの道も拓いていくと感じています。

おすすめの勉強法

認定資格は取得していませんが、現在5つの学会に所属しているので、年2〜3回は学会に参加しています。学会などで歯科衛生士の先輩や友人に会えるだけで、刺激を受けます。

学会やセミナーに参加した際には、新しい知識や考え方などを情報収集することを心がけています。

また、友人と参加した後には、デスカッションをします。すると「あ〜なるほど!そういうことか!」と理解できることがあります。一人で学べることは限られているので、先輩や友人から学ぶことも多いです。これからも共に学び続けていきたいと考えています。

また、歯科衛生士の月刊誌を2冊購入しています。『DHスタイル』は、2年前から読者モニターをしているので、絶対に購読しないといけない状況にしています。これは先輩の受け売りですが、講読後のアンケートは、文章を書く練習にもなるのでおすすめです。

最近参加した学会
最近参加した学会

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