わたしのDHスタイル#20 岩本那奈さん『ライフプランと歯科衛生士臨床』

歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。

dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、歯科衛生士歴12年目の岩本那奈さんにお話を伺いました。

地元長野で歯科衛生士免許を取得後、都内の歯科医院2軒に勤め、結婚。その後、旦那さんとともにMI総合歯科クリニックを開業し、現在はチーフ歯科衛生士として、仕事と子育てを両立しています。

MI総合歯科クリニック 岩本那奈さん
MI総合歯科クリニック 岩本那奈さん

仕事をする上でこだわっていること

患者さんと接する時は、「初心を忘れないように」というのを常に考えています。

歯科治療というのは、私たちの中では毎日おなじことの繰り返しですが、患者さんにとっては非日常的なことです。

とくにスケーリングは、痛くないように、時間内で効率よくできるように、ということを心がけて行っています。

日常的な業務に慣れてしまうことで処置がおろそかにならないよう、患者さん一人ひとりに思いやりを持つようにしています。

保健指導の際は、まず相手の話をよく聞くようにすることを心がけています。

一方的に伝えたいことを言っても伝わらないので、相手が何を考えているとか、どういう生活をしているだとかを聞いた上で、ブラッシング指導をするようにしています。

その方が、私の言いたいことも伝わるかなと思っています。

働く中で、うれしかった出来事

歯周基本治療からインプラント治療まで担当した患者さんで、なかなかタバコがやめられない方がいました。

その患者さんはインプラント治療を希望されていたのですが、当院では、禁煙ができない方には治療は行っていません。禁煙外来に受診してもやめられないという方だったので、毎回毎回SRPのたびにいろんな角度から禁煙にまつわる話をしていました。

そしたらある日突然やめてくれて。「あなたのおかげでやめられた。本当に感謝している。」と言ってくれたんです。

あきらめずに粘り強く伝えていた思いが通じたのかなと、とても嬉しかったです。

MI総合歯科クリニック 岩本那奈さん

今までの人生の中で、やっておいてよかったと思うこと

早いうちに、今後どういう風に働いていきたいかというライフプランを自分の中で決めていたことが良かったと思います

私の場合、卒後2年目の時に、主人がインプラント専門医になると決めていたので、その手助けができる専門衛生士の資格を取ろうと決めて。それに向けて資格が取得できる転職先を選んだり、学会に参加したりすることができました。

また、出産の前に認定資格を取ったということも、良かったことのひとつです。やっぱり子育てしていると、なかなかセミナーや勉強会に参加できず、思うように勉強する時間が取れないので…

もうひとつ、転職してすぐの頃に、ヨーロッパ研修に参加させていただいたことも良い経験でした。若い時に予防歯科の大切さを、じかに学べたことはすごく良かったなと思っています。

日本は保険診療の制約があるので、定期健診が患者さんに浸透していませんが、海外では、メインテナンスのために歯科に通うのは当たり前のことです。

歯科衛生士も個室を持って、自分で患者さんを担当して、責任を持ってプロフェッショナルケアを行っている。この研修を通して、一人の患者さんを長く診ていくことの大切さを感じられたことが、今の診療スタイルに生きていると思います。

ライフプランを立てるということ

新卒で就職した職場は、矯正から外科まで、とにかくたくさんの患者さんを診るような、すごく忙しい歯科医院でした。

その中で、インプラントの症例にも携わる経験ができ、だんだんとおなじ患者さんを長く診ていきたいという気持ちが強くなってきたので、今の道を選びました。

実際に働いてみることで、自分の興味のある分野とかどんな風に働いていきたいということに気づけたので、1年目にやったことは自分にとって必要なことだったと思います。

学生の時にはそこまでわからない部分なので、卒後の早いうちに自分の方向性を考えてみることをおすすめします。

実習生へ指導する様子
実習生へ指導する様子

子育てを経験して

子どものことで仕事を休まなければいけないことが出産前よりも増えるので、その時に代わりに働いてくれるスタッフへの感謝の気持ちが大きくなりました。

反対に、同じように子育てをしているスタッフが急に休まなければいけない時には、自分がフォローしようという気持ちも生まれました。当院では、子育てと仕事を両立している方を応援したいと思っています。

あとは、母親になってからは、(小児患者の)お母さんへの保健指導の考え方がすごく変わりました。

子どもを持つ前はマニュアル通りの指導しかできなかったのですが、実際子どもを育ててみると、子育てでマニュアル通りにいくことってひとつもなくて、お母さんの大変さを実感しました。

今では、お母さんたちには無理のないように、子どもと楽しくむし歯の予防をするにはどうしたらいいか、という提案をしています。頑張りすぎないで〜、と。(笑)

フッ素を使いなさい、キシリトールを毎日摂取して…という指導方法から、親からの感染を防ぐために、保護者の口腔内をしっかりきれいにする方があとあとラクだな、という考え方に変わりました。

一人で育児を行っている方も多いと思うので、私たちと話すことで、通院することが少しでもリラックスタイムになればいいなと思います。

家族で過ごす時に気をつけていること

子育てについては、仕事を理由に手を抜きたくないなと思っています。

子どもが幼稚園に行くまでの3年間は、毎日ずっと夜まで働いていて。

でも、幼稚園に入ってからは習い事をさせたいし、お友達とも遊んでもらいたいという思いがあり、今は午前中で仕事を切り上げさせてもらって、子どもの送り迎えをしたり、ご飯をつくったりという働き方に切り替えました。

それまでと同じように働き続けていたら、仕事をしているお母さんがいやになっちゃうんじゃないかと思ったんです。仕事をいやだと思ってほしくなかったので、今は子どもとの時間を作るようにしています。

オススメの器具

LMグレーシーキュレットがオススメです。

もともとブレードが細くてグリップも握りやすいハンドスケーラーを選ぶようにしているのですが、こちらのキュレットはとくに細いので、SRPで挿入する時に痛みが少ないのだと思います。

LMグレーシーキュレット
LMグレーシーキュレット

おすすめの情報収集

本を読むことです。医院で『歯科衛生士』などを定期購読して、みんなで読んで情報収集しています。

あとは学会に行ける時は参加します。とくにインプラント学会は託児所が設けられているので、お母さんが資格を取ったり更新しやすい資格かなと思います。

日々の症例などで困った時は、以前勤めていた歯科医院の院長やチーフに相談したり。衛生士学校時代の同級生など、人とのつながりを大事にしておくと、あとあと自分の役にも立つかなと思います。

それから、辞め方もすごく大事かなと思います。

2軒目に転職する時は、自分のライフプランや資格を取りたいということを、勤める前に伝えました。

そこから6年勤め、妊娠のタイミングで退職したのですが、それからもセミナーに呼んでもらったり、東京に行った時に病院に顔出させてもらったりと、いまでもずっとお世話になっています。

わたしのDHスタイル#20 岩本那奈さん『人とのつながりを大切に』