研究所で働く歯科衛生士 小原由紀さん『東京都健康長寿医療センター研究所』(後編)

歯科衛生士免許を取得している方の中には、「研究所で働く」という道を選んだ方々がいます。

平成28年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、『その他』に就業する歯科衛生士は全体の0.4%と、非常に希少な存在です。

dStyleでは、今までに学んだ知識をさらに深め、研究所で働く歯科衛生士として活躍する方にインタビューを行いました。

歯科医院とはまた違った環境で働く魅力について、語っていただいています。


東京都健康長寿医療センター研究所に勤める小原由紀さん。

歯科衛生士歴22年目の小原さんは、今年の4月から東京都健康長寿医療センター研究所に勤め、オーラルフレイルの研究をメインに行っています。

前回は、東京都健康長寿医療センターに就職するまでの経緯についてお話しいただきました。
(参照:研究所で働く歯科衛生士 小原由紀さん『東京都健康長寿医療センター研究所』(前編)

今回は、現在の働き方や、取り組んでいることについて伺いました。

東京都健康長寿医療センター研究所
東京都健康長寿医療センター研究所

現在行っている研究について

高齢期における口腔機能の低下(オーラルフレイル)に関する研究をメインに行っており、現在は群馬県草津町と東京都板橋区に在住している高齢者の調査や、愛知県と秋田県、神奈川県の要介護高齢者の施設調査にも関わっています。

研究者というとデータ分析などのデスクワークが多いイメージかもしれませんが、各施設に研究の説明を行ったり、調査として遠方に1週間出張へ行き、その結果をご協力いただいた地域の方に説明したりと、対外的な仕事も多いです。

大学院生のときは約1,300人のデータをとるのに1ヶ月ほどかかりましたが、現在はスタッフの数も多く、10日ほどで約800人のデータを採取することができるようになりました。

ほかにも学会発表や、行政が主催する介護予防教室で地域住民向けの講演なども行っています。

地域住民向けシンポジウムで発表する様子
地域住民向けシンポジウムで発表する様子

研究を行うやりがい

自分の世界や、人とのつながりが広がるところですね。

学会でポスター発表を行ったときに、自分と同じように疑問を持っていた方が質問に来てくださったことがきっかけで、話や出会いが広がるという経験をしました。そのように、「研究」には、アウトプットすることで、いろんな人に知ってもらえるというやりがいがあります。

また、英語論文を書いたときは、私の研究に興味を持ってくれた海外の方からメールが送られてきたり、直接コメントをいただけたりしました。
自分が行った研究は、職域だけでなく国境も越えて、人に影響を与えられたんだ!と感じ、本当にやってよかったなと思いました。

実際に調査に協力してくれた地域の高齢者の方からは、「研究に参加してよかった」「世の中のためになるデータを出してくださいね」と言ってもらえることもあり、それが一番の喜びです。

オーストラリアの学会でポスター発表行ったときの様子
オーストラリアの学会でポスター発表行ったときの様子

仕事をする上でこだわっていること

研究では、数字が羅列したデータを扱う機会が多いですが、常にその先にある「人」の健康にどのように貢献していけるかを考えるようにしています。

また、研究所では、多くのバックグラウンドを持った人と研究をすることになるので、積極的に色々な人と関わり、情報交換をしていますね。

小心者なので、「失敗したらイヤだな」「こんなことしたら周りはどんな風に思うかな?」と思うこともありますが、たとえ失敗しても良いから新しいことにもチャレンジするよう心がけています。

お気に入りのグッズ

マリメッコが大好きなので、マリメッコのカバーを付けたSurfaceや自作のパソコンケースは、私を元気にしてくれるアイテムのひとつです!

小原さんのマリメッコグッズ
小原さんのマリメッコグッズ

これから取り組んでいきたいこと

口腔機能の大切さに多くの人に気づいてもらえるよう、そして歯科衛生士にその対応力を持ってもらえるように、オーラルフレイルの普及啓発に努めていきたいです。

研究を本職として働いているのは、ごくごく少数の歯科衛生士だけだと思います。ただ、研究機関で働いていなくても、研究的な視点を持ち臨床に関わることは、これからの歯科衛生士に求められる資質であると感じています。

「研究」の一番の特徴は、どんな資格があるかに関わらず興味を持った人なら誰でもチャレンジできることです。

だからこそ、私は歯科衛生士としての目線で、口腔の健康において大切なことを情報として発信していきたいと思っています。

今後は、「研究」というのは特別なことではなく、私たちの臨床に強く結びついていることを、より多くの歯科衛生士の方々に知ってもらい、研究に取り組んでもらえるようなサポートができたらと考えています。一緒に研究を頑張る歯科衛生士の仲間をどんどん増やしていきたいです!

日本顎咬合学会で講演したときの様子
日本顎咬合学会で講演したときの様子