歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。
dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。
このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。
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今回は、歯科衛生士12年目の横山衣央さんにお話を伺いました。
新卒で約6年間一般歯科に勤務されたのち、在宅診療に力を入れている訪問歯科にて5年ほど勤務された横山さん。
そこでのカンファレンスの推進や業務マニュアル作成の経験を生かし、現在は歯科医院で歯科衛生士業務を行いながら、事務長補佐を務めています。
事務長補佐として働こうと思ったきっかけ
歯科医院では、責任感が強いスタッフほど、任される仕事量が増えがちです。当然、ミスや不慮の医療事故などに巻き込まれる確率も、比例して増えます。
なにか事故が起きたときに、事務長やマネージャー職の方々が原因究明を行うことは当然かと思いますが、事故や問題に直面したスタッフ当人も、深く傷つき苦悩します。
そこで、仲間同士で支え合うという、「ピア・サポート制度」が必要だと思いました。この制度は歯科だけでなく、医科でもまだまだ浸透していませんが、新聞で取り上げられるなどして、少しずつ認知されてきています。
スタッフが安心して働ける環境というのは、待遇だけではなく、心のケアも重要視する体制の有無に関係があると思うんです。
そう思ったことが、きっかけですね。歯科医院で、そういったサポート体制を実現したいと思いました。
業務内容について
週4日は、メインテナンスや治療のアシスタントといった、通常の歯科衛生士業務を行っています。
それ以外の時間は事務長補佐として、資料作成やシステムの見直しなどを行い、スタッフが効率よく働ける環境づくりを行っています。
最近では、受付業務を円滑にするために、問診票の内容や、手書きの領収書発行について見直しています。Instagramのアカウントを作成して、SNSによる集患もはじめました!
また、新しい治療のシステムを導入した際には、診療室内のiPadに動画をアップロードして、スタッフがいつでも見られるようにするなど、タイムロスや小さいストレスを少しでも減らせるように努めています。
たとえばスタッフに対して、「歯科医院で変えたいことはありますか?」とストレートに聞いても、すぐに要望が出るとは限りません。
しかし、今まで当たり前のように行っていたことも、少し工夫するだけで作業が楽になることがあります。
そういった細かいことを繰り返しヒアリングし、スムーズに診療が進むヒントを見つけていきたいと思っています。
仕事をする上でこだわっていること
こだわっていることは、人の話に聞き入ることです。
以前、私のメンターである人にこう言われたことがあります。
自分ひとりでは、一人分の経験値しか蓄積されない。でも相手の話を自分ごとのように聞き入ると、もうそれだけで経験値が増える。
この言葉を聞いてから、人の話を聞くのがより好きになり、次第に物事のまん中が見えてくるようになりました。
そのため、患者さんだけでなく、誰に対しても話を聞き入るようにしています。白熱すると自分が話すのに夢中になっちゃいますけど(笑)。
歯科衛生士人生の中での転機
在宅診療の仕事を選んだことは医療人としての大きな転機でした。
在宅診療は当時の私には別世界でした。四大認知症とか、神経変性疾患とかサッパリでしたし、耳にしたことのある脳梗塞でさえも、タイプによって臨床所見が異なります。
“どうしよう、わからない!”の繰り返しでしたが、わからないじゃダメですからね。
仮に今日、患者さんの病態が安定していたとしても、来週はどうかわかりませんし、急変は起こりえます。
口腔内に集中しすぎず、大切な背景となる全身状態をしっかりと診られるように、全身所見のとり方などはたくさん勉強させてもらいました。
多くの要介護患者さんとの出会いによって「歯科医院内の歯科衛生士」から「医療人」というマインドへ、ぐっと導いていもらえたと感じます。
今までの人生の中で、やっておいてよかったと思うこと
学会発表ですね。ポスター発表でしたが、やって良かったと思っています。
私は日本在宅医学会で2回、日本在宅栄養管理学会で1回発表しました。
抄録を提出する前に、勤務先の先生や先輩に目を通していただくのですが、まず、赤線でビーーーって引かれました。笑い事じゃないですけど、笑いました。
しかしそれによって、不足していた観点がどんどんブラッシュアップされ、研究ベースで物事をとらえることができるようになりました。
限られた文字数の中で、自分が伝えたいことを言語化し、考察を述べて発表するということは、とてもむずかしかったですが、やっておいて本当に良かったです!
働く中で、うれしかった出来事
現在の職場は、働きはじめてまだ数ヶ月ですが、歯科衛生士でありながら事務長補佐としても働くという、この働き方を容認してくださったこと自体が嬉しい出来事です。
また臨床において、いつどこで働いていても嬉しいのは、患者さんの反応ですよね。とくに、OHIやSRPを行い、口腔環境が改善される気持ち良さが伝わったときの患者さんの反応は格別ですね。
受付で予約をとるときの様子にも変化があるので、そういった変化がみられたときは素直に嬉しく感じます。
おすすめのグッズ
オーラルケア用品の、クラプロックスです。
クレーンファイバーの超極細毛は、一見やわらかく感じますが、ブラッシング圧による組織の磨耗が起こりにくいため、おすすめのオーラルケア用品です。
現在勤務している歯科医院では、初診の患者さんの半数が、紹介でこられた方です。そこで、紹介元の患者さんに日頃の感謝を伝えるために、何かプレゼントをしたい!と思いました。
クラプロックスは色がカラフルなので、患者さんにプレゼントするとすごく喜んでくれます!
現在取り組んでいること
まずは、現場で働くスタッフの役に立ちたいです。
私はコンサルタントでも教育者でもなく、医療者のサポーターになりたいと思っています。スタッフが、患者さんに対してより注力できるようにすることが目的です。
サポーターとして相談された仕事は、最短で応えるように気をつけていますし、それが今いちばんに取り組んでいることです。
おすすめの勉強方法
インプットとアウトプットをセットで行うことです。カンファレンスでもいいし、昨日受けたセミナー内容をお昼休みに仲間に話すでもいいし、文章にするでもいいと思います。
そうすることで自分の身につきますし、インプットとアウトプット、どちらかひとつするだけではもったいないのではないかと思います。
情報収集に関しては、歯科関係のメルマガをとったり、セミナーや交流会に行ったりしています。本も読みますが、お恥ずかしい話、読書が得意ではないので、Kindleの「音声読み上げ機能」を使って克服しています。
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dStyleでは、“歯科で働く希望と可能性をあなたに”をコンセプトに、さまざまなフィールドで活躍する歯科衛生士の方々へインタビューを行っています。
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