ダブルライセンスDH #02「歯科衛生士×歯科技工士」野秋亜弥さん

日本の「国家資格」にはさまざまな種類があり、歯科衛生士もその中のひとつの資格です。

現在、歯科衛生士として働いている方の中には、歯科衛生士以外の国家資格をもっている方もいます。

ふたつの国家資格を取得するという、エネルギーにあふれた歯科衛生士の方に、現在までの軌跡を語っていただきました。

今回のダブルライセンスDH

PROFILE

1996年
沼津歯科技工専門学校夜間部 卒業(現在は廃校)
静岡県の歯科技工所 勤務

2009年
中央歯科衛生士調理製菓専門学校 卒業
静岡県 U歯科医院 勤務

2015年
医療法人社団高志会 あさい歯科クリニック 勤務

2018年
日本歯周病学会認定歯科衛生士 取得

歯科衛生士歴:12年

ふたつ目の資格を取得しようと思ったきっかけ

歯科技工士の仕事から少し離れていた期間があり、再就職を考えていた頃、新たな生きる術を身につけようと思い、最初は看護師を目指していました。

ですが、看護学校の受験って結構大変で、受験が難しいなと悩んでいたときに、当時歯科助手としてアルバイトしていた歯科医院の院長の繋がりで、歯科衛生士学校への推薦状をいただけることになったんです。

歯科衛生士について調べてみると、当時は、看護師より1年早く社会に出られることや、同じ医療職でありながら、直接治療が行えて患者さんとの距離が近いということを知り、とても魅力に感じました。

また、歯科技工士の知識も活かせるのでは!と思い、歯科衛生士を目指すことを決意しました。

それぞれの国家資格を取得するまでに苦労したことは?

歯科技工士学校時代は、3年制の夜間部に通っていました。

昼間は見習いとして技工所で働いていたため、プライベートの時間がほとんどなく、学校のテストや国家試験対策の勉強時間を確保するのには苦労しましたね。

また、先生を含め、同級生は男性のみ。情報共有できる女性といえば、数人の先輩のみだったので、昼間の勤務先でのできごとなど、誰にも相談できずに悩んだ時期もありました。

ですが、男社会だったからこその経験はできたなと感じます。特に、飲みニケーションなどは、かなり鍛えられました(笑)。

その頃出会った方々とは、今でもお仕事で繋がっていたりと、いい関係を築けています。

歯科衛生士学校時代は、歯科技工士時代には考えられないほどの膨大な勉強量で、毎日必死に勉強していました。

また、クラスメイトは現役で高校を卒業したばかりの方が多く、新鮮な環境で学生生活を送っていた反面、勉強の吸収率などは、若者たちとのパワーの差を感じていました。

特に、私がもともと歯科技工士として働いており、歯科業界と精通していることは周知の事実だったため「なんとしても上位でいなければ!」というプレッシャーと、“周りの方よりも大人である”というプライドもあり、余計に勉強する量が多く大変に感じたのかもしれません。

ただ、歯科技工士としての経験はありましたが、模型や材料、口腔内のことに関する勉強はちょっと違っていて。というのも、歯科技工士が歯根の形態や粘膜、口腔ケアについて知っているかと言われると、学ぶ機会はなかったので、持っていた知識にプラスアルファで勉強することは本当にたくさんありました。

また、いざ歯科衛生士として歯科医院に勤務するとなったときのことを考えると、患者さんにはベテランだと思われるだろうという意識があったため、知識がないわけにはいかないと、必死に学んでいたことを覚えています。

現在の業務内容

歯科衛生士業務の他に、歯科技工士の知識を活かして矯正と補綴のカウンセリングを担当しています。

日々カウンセリングを行う中で意識していることは、私からすると“たくさんいる患者さんのうちの一人”であっても、患者さんからすると、私は“たった一人のカウンセラー”だということです。

だからこそカウンセリングを受ける患者さんは、「この人に頼っていいんだ」と、私のことを最初の味方だと感じてくださるんですよね。

そうすると、次に会ったとき「あのね!」と話しかけてくださり、治療についてや、不安に思っていることなどを相談いただけることもあります。

そんなふうに頼ってもらえたときは、カウンセリングをやっていてよかった、とやりがいを感じます。

カウンセリング
カウンセリング風景

ダブルライセンスをもっていてよかったと思うこと

口腔内での補綴物適合の確認や、プラークコントロールの確認を細かく行えることですね。

患者さんに口腔内写真を用いての説明するときや、補綴物のカウンセリングを行うときに、補綴物の種類や特徴などをより詳しく、分かりやすく説明することができます。

また、義歯の印象に石膏を流すときは、注意すべき部分を把握しているからこそ、歯科技工士の方が義歯を作りやすい、正確な模型を作ることができるのも、ダブルライセンスを持っていてよかったことの一つです。

石膏流し
石膏流しは、歯科技工士の経験を活かして

お気に入りアイテム

拡大鏡にマイクロライトコードレス バタフライ2を付けて愛用しています。

拡大鏡は、カールツァイス EyeMag Smart sports frame 2.5倍を使用しています。

以前は、ガリレアンルーペ 2.5倍を使用していましたが、あるとき、もう少し細かく見ることができれば、また違った目線で見られるのではないかと思い、カールツァイスの拡大鏡に乗り換えました。

とても見えやすくなり、使い勝手がよく、コードレスであるというところもお気に入りです。

今後はダブルライセンスをどう活かしていきたいですか?

現在、勤務先の歯科医院で月に1〜2回、不定期の補綴勉強会を開催しています。

院内勉強会
院内勉強会の風景

口腔内に補綴される技工物の製作方法や特徴、性質など、幅広い知識を持って患者さんにカウンセリングができるスタッフの育成を目的としています。

勉強会では、患者さんへのセルフケアの指導方法や、メインテナンス時のプロフェッショナルケアに使用する器具の選択方法など、実践に活かせる知識を共有しています。

たとえば、新人歯科衛生士の方が前装冠のメタル部分を研磨剤で磨き、溶出してしまったとします。でもそれって、前装冠がどのような素材でどういう過程で作られているかを知らなければ、磨いてしまって当然だと思うんです。

だからこそ、私が歯科技工士として伝えられることは伝えていきたいと思っています。

このような勉強会は、私自身にとっても、とても勉強になるので、今後も続けていきたいと思っています。