わたしのDHスタイル#42 増田梢さん『認定資格で広がる世界』

歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。

dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、歯科衛生士歴18年目の増田梢さんにお話を伺いました。

歯科衛士免許を取得後、医療法人社団八龍会 すずき歯科医院へ入職。6年半勤務後出産で一度退職し、2年後に復職。

現在も同歯科医院で働き、日本顕微鏡歯科学会認定歯科衛生士として臨床にマイクロスコープを活用したり、歯科衛生士や市民向けの講演を行うなど、日々スキルアップに励んでいます。

すずき歯科医院 増田梢さん
すずき歯科医院 増田梢さん

長く勤める秘訣

当院のユニットは現在17台、1日に200名ほどの患者さんがいらっしゃいます。

院長はインプラント専門医ですが、歯科総合医院として歯科医師も多数勤務しております。そのため、インプラントだけでなく、訪問診療や矯正、マイクロスコープ、障害者歯科など、いろいろな分野が経験できて面白いです。

すべて経験できるから総合的に判断し、患者さんからのさまざまな質問に答える力もつくのかなと思います。

また、院長は学ぶことに対しても協力的で、学会費やセミナー費用は医院負担です。定期的な院内勉強会の他、現在はコロナ禍で行えておりませんが、外部の講師をお招きして勉強会を開催することもあります。

そうして色々な経験を積み、自分が伸ばしたい分野を見つけることができる環境が整っています。私の場合はマイクロスコープに力を入れたいと考え、日本顕微鏡学会の認定資格を取らせてもらいました。

さらに、歯科衛生士が21名在籍とスタッフが多いため、相談できる相手がかならずいて、みんなで協力できることも長続きする秘訣だと思います。

私の場合は一緒に新卒入社した同期と18年目を迎えた今も一緒に仕事ができていることが大きく、こんなに長く同じ医院で働けるのは幸せだなと思っています。

彼女はインプラントに力を入れ、私はマイクロスコープにと、それぞれ分野は違いますが、お互いに「必要な存在」として感謝を伝え合っています。

また、子育てに理解がある医院ということも大きいです。私は出産を機に一度退職しましたが、子育てをしていたら、また歯科衛生士がしたいなと思い、復職させてもらいました。

現在10歳の子どもがいますが、他にも子育て中の衛生士が9名おり、みんなで協力し合って働いています。子育てしながらスキルアップできる環境はありがたいですよね。

それぞれの道へ進む同期入社の〇〇さんと
それぞれの道へ進んだ、同期入社の森下さんと

日本顕微鏡歯科学会認定歯科衛生士取得のきっかけ

出産を経て職場復帰した時、「歯科衛生士としてどうありたいか」と、自分を見つめ直しました。

マイクロスコープを学ぼうと思ったきっかけは、患者さんにきちんとした治療を提供したいという気持ちと、撮影した記録が患者さんへの情報共有、信頼関係の構築に最適だと思ったからです。

画像を提供することで、患者さんの食いつきが違います。「こうなってたんだね」と、興味を持ってくださる方が増えました。

ただ、マイクロを取り入れはじめた当時は、自分が見えた嬉しさから、ここがここがと、患者さんにも拡大画像ばかりを見せていました。しかしよく考えれば、患者さんはそもそも口腔全体のことを知らないので、急に大きい画像を見せても、全然伝わらないんですよね。

患者さんの気持ちを考えなければと思うようになってからは、見せ方を勉強するようになり、それが自分自身のステップアップにもつながりました。

それと、ここの医院は歯科衛生士が多いので、これまではこの環境にすごく満足していたんです。しかし、マイクロスコープをはじめてから他院の方と交流するようになって、さらに世界が広がったんですよね。

院長と一緒に学会発表をさせてもらったり、セミナーや市民公演をさせてもらったりと、患者さんに発信できる場が増えて、歯科衛生士は希望のある仕事だなと思うようになりました。

第16回 日本顕微鏡歯科学会学術大会で行った院長の鈴木先生との講演
第16回 日本顕微鏡歯科学会学術大会で行った院長の鈴木先生との講演

仕事をする上でこだわっていること

一つ目は、患者さんに健口でいるための情報を提供すること、説明をきちんとすること。説明と理解は信頼につながると思います。

限られた時間の中でいかに情報提供するかを考え、治療中にも“質問ではない情報”をお伝えするようにしています。

たとえばSRPをしていて出血してきた時などに、出血にまつわる情報をお伝えしたり、免疫についての話をしたり。

「歯磨きは1日何回しますか?」「歯間ブラシしていますか?」など、返事のいる声かけをするのではなく、一方的に伝えてもいい内容をつぶやくようにしています。

二つ目は、低侵襲で痛みの少ない治療、患者さんや歯科医師との情報共有。ミラーワークは必須で、マイクロスコープも必要なアイテムです。

情報共有については、口腔内のことはもちろん、マイクロスコープの記録内容を患者さんに説明しています。

さらに気になることがあれば、その場で先生にも共有し、患者さんと三者で確認するようにしています。先生と二人で話すと、患者さんは不安になってしまうので。

また、全身疾患に関することは、こちらからこまめに患者さんに伺うようにしています。血圧や血糖値、服薬などの状況は変化しますし、患者さん自身が忘れていることもあるからです。

三つ目は、ポジショニングと姿勢。歯科衛生士の仕事が好きなので、長く続けたいと思っています。そのためにも、体を痛めないように姿勢にはかなり気を遣っています。

特にマイクロスコープを使用するようになってからは、椅子の高さや患者さんの位置などもすごく気をつけるようになって、ニュートラルポジションが自然と身に付きました。

以前は肩が痛くなったり背中や手首が痛くなることがありましたが、マイクロを使うようになってからはなくなりましたね。

そして、自分が姿勢を気にするようになったら、患者さんが施術を受けている時の姿勢も気になるようになって。体型的に厳しそうな方にはクッションを用意したり、こまめに声かけるようにするようになるなど、周りにも目を向けられるようになりました。

マイクロスコープの利用で正しい姿勢が身に付く
マイクロスコープの使用により、正しい姿勢が身に付いたという

働く中で経験した、うれしい出来事

長く通ってくださる患者さんがいること。新人の頃から診させていただいている患者さんからは、「成長したね」という言葉をもらうこともありました。患者さんにも成長させてもらっているなと実感しています。

また、顔や名前を覚えてくださること、私に診てほしいと言ってくださることも嬉しいです。言葉でそうおっしゃらなくても、私の予約できちんと来院してくださることがありがたいです。

それから、院長に「頼りにしています」という言葉をもらったこと。

自分はまだまだだなと思うことも多くありますが、認めてもらえることは嬉しいことです。患者指導の際にも、その方の頑張りを認める対応ができたらなと思っています。

これまでの人生経験の中で、やっておいてよかったと思うこと

小・中・高校・専門学校は皆勤賞でした。小学生1年生の時に母親と決めた約束でしたが、20歳まで継続しました。

また、学生時代の部活動もやっておいてよかったことの一つです。バスケットボールを6年間続けていました。

運動が得意!というわけでもなかったのですが、集団の中で先輩や同期、後輩とともに、同じ目標に向けて継続するという、医療に通ずるチームワークを経験をしました。

この二つが「一度決めたら継続する」という、私の礎になっているのかもしれません。

オススメの器具やお気に入りのグッズ

ソニックブラシ超音波スケーラーは、歯周治療をする上で欠かせません。

特にNSKのソニックブラシKAVOのソニックフレックスのものがおすすめで、プラークが多い患者さんの縁上のケアに使用しています。

超音波スケーラーについても、医院ではピエゾン、P-MAX、キャビトロンを用意してくれており、ユニットにも設備されているので、症例に合わせてチップとともに使い分けています。

キュレットタイプやメンテナンス用のK-1チップはおすすめです。

さまざまなチップを使い分けて使用している
さまざまなチップを使い分けて使用している

また、表面反射ミラーはマイクロスコープを使用する時にかならず使用します。日本歯科商社、YDM、モリタ、フューフレディー社のものを用途に合わせて使い分けています。

私は全顎にミラーワークを必要とするため、ミラーはガラスを使わず、常に表面反射ミラーを使用しています。

治療内容によりさまざまなミラーを使い分ける
治療内容によりさまざまなミラーを使い分けている

あとは、こちらのフェイスシールド。株式会社MITASのMeGUARD(ミーガード)です。

もともと裸眼ということもあり、ゴーグルをするのに抵抗があって、コロナ関係なくもっと前からフェイスガードを愛用しています。

ミーガードはフィルムを付け替えることができる上、プラズマ滅菌器にかけることができるので、衛生的にもいいです。くもったり二重に見えたりもしないので、とってもおすすめです。

MeGUARD(ミーガード)
株式会社MITAS MeGUARD(ミーガード)

感染対策として使用するなら本当はLサイズがいいのだと思いますが、私はMサイズがお気に入りです。

Mサイズはフィルムの長さが鼻のあたりまでなので、患者さんと対面で話す際や、マイクロを見る際もちょうど邪魔にならない長さです。

マイクロを見る際も外さずに使用できる
マイクロを見る際も外さずに使用できる

今気になっていること、やりたいこと

今の自分に満足はしていません。

「しっかり治せる歯科衛生士」を常に目標とし、常にアンテナを貼って必要なことを吸収していきたいです。

また、歯科衛生士である私に関わってくれている人たちに感謝を忘れず、楽しく歯科衛生士を続けていきたいです。

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