歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。
dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。
このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。
今回は、歯科衛生士歴4年目の岡本里緒菜さんにお話を伺いました。
専門学校卒業後、毛利歯科医院に勤務。勤務後には他の歯科医院でもアルバイトをしながら、さまざまな認定資格の取得に挑戦しています。
資格取得に挑戦し続ける理由
単純に、資格を取るのが好きなんですよね。
歯科衛生士という資格を持っていますが、そこで終わりたくないというか。歯科衛生士業務は作業になりがちですが、マンネリ化せずに医療としてきちんと提供したいという思いがあります。
自分の価値や歯科衛生士の価値を上げるためにも、医院に貢献できるようになりたいんです。
そのためにはきちんと勉強していかないとと考えていて、認定歯科衛生士を取る、という目標は学生の頃から持っていました。
また、初めて治療を受ける時は、病院のことはもちろんスタッフのこともわからず、不安な気持ちで来院するものですよね。そこで資格というのは、その病院の得意としていることや、その分野についてしっかり勉強していることが一目でわかるので、安心に繋がると考えています。
また、資格を取得することは、高度な知識と技術を有するスタッフが在籍している裏付けにもつながり、個人としても医院としても、患者さんに安心して治療を受けてもらえるのではと思っています。
歯科衛生士になって2年目の時に、ホワイトニングコーディネーターを取得しました。
(参照:ホワイトニングコーディネーターってどんな資格?)
そもそも資格があること自体を知らなかったのですが、衛生士学校の同期がホワイトニングコーディネーターを取ったということをInstagramに載せていて。
ホワイトニングはどこの病院でもやっていますが、なかなか患者さんに浸透していないなと思ったので、挑戦してみようと思いました。
機材や材料など、最初の出費は大きいものの、それを上回るほどの売上をあげることができ、最近は黒字のため、資格を活かしながら医院に貢献できているのかなと思っています。
今は、もともとはドクターしか使っていなかったマイクロをお借りして、日本顕微鏡歯科学会の認定歯科衛生士に挑戦しているところです。
ゆくゆくは日本口腔インプラント学会や日本歯周病学会の認定資格にも挑戦したいと考えていて。
資格取得に必要な基礎資料の収集ができるように、先生と話し合って院内に新しいことを取り入れたりしています。
また、今後規格性のある口腔内写真を撮るための勉強もしています。結果的にそれが医療の質の向上につながっているなと思います。
仕事をする上でこだわっていること
一つ目は、自分がされたい施術を患者さんに行うようにしています。
自分がされていやなことは相手にしてはいけないし、自分がされてよかったことは相手にもする。
たとえば「噛んだ時に歯が痛む」という主訴でこられた患者さんに、今どんな状態か、どんな治療をする必要があるのか、保険治療と自費治療の違いなど、細かく説明しています。
私自身も皮膚科に行った時に、ただ塗り薬を処方されるだけでなく、「レーザー治療という方法もありますよ」と提案されてはじめて治療の選択肢を知るということがありました。
医療従事者から選択肢を提案されないと、自分にとって最善の治療方法を、迷うこと選ぶこともできないんですよね。
だから、患者さんにもそうするように心がけているし、手を抜いた処置はしたくない。そのため、当院では矯正治療をしていないですが、先生の出した治療計画をもとに、患者さんから質問があれば、矯正をすすめることもあります。
患者さんにもっとも良い治療をするためにも、主訴だけでなく口腔全体をチェックするようにしています。
働く中で経験したうれしい出来事
1年目が終わろうとしていた頃、終活にむけて入れ歯が最後に残るのがいやだからと、60代の女性の方が来院されました。
ある日その方に言われた「昔は、歯医者に行くのが本当にいやで、痛くて苦しいのがトラウマで…今は、楽しい気分で歯医者にきている。岡本さんに出逢えてよかった」という言葉にすごく心を打たれたのを覚えています。
その女性は現在も定期的に病院に受診されていますが、他愛もない世間話を重ねるうちに、狭心症の持病についてのエピソードや歯科に対してのトラウマなどを打ち明けてくださいました。
ただ言葉通りに「入れ歯作りたいんですね、わかりました」と受け取るのではなく、話の中でその背景を知ることで、患者さんとの信頼関係を築くことができたのだと思います。
患者さんのありがとうの言葉はとても嬉しくて、これからも頑張ろうと思えました。
これまでの人生経験の中で、やっておいてよかったと思うこと
高校で情報処理コースを専攻していたので、簿記、情報処理、ワード検定、電卓検定、パソコン作業のスキルを身につけていました。
正直、歯科衛生士に必要ないよなあと思っていましたが、今はパワーポイントを使って症例発表を行ったり、ワードを使いポップを製作し医院に貼ったりできているので、とても役に立っています。
おすすめの器具
一つ目はペントロンのYirro-plus(イーロプラス)ミラー。
これはエアーが出るミラーなんですが、自分が顕微鏡を覗くようになってから愛用しています。
顕微鏡は、5mm動けば視界が1cm動くという世界なので、普段行っているエアーをかけて…という動きが手間になるんですよね。
このミラーを使用するようになってから、観察や処置に対しての手間が省けるようになりました。
さらに、反射率が高く、表面反射タイプなので、像が二重に見えることもなく、すごくクリアに見えるんです。
ただ、エアーが出ている特性上、口唇を排除すると空気がぼこぼこと出てしまいます。そうならないようにするためのミラーテクニックも同時に身についたので、とてもスキルアップに役立ちました。
二つ目は、超音波ブラシのユリー(Yully)。プラークが簡単に落ちます。
入社後からTBIの時は染め出しを徹底するようにしていて、効率よくプラーク除去ができる器械がないかなと探していた時に出会いました。
メインテナンスに最適な機材は数多くありますよね。
当院はチェアが10台あって衛生士も大人数、メインテナンスの患者さんも数多くいらっしゃる上に、同じ予約時間で機材を使用し滅菌をして…となると、数が多く必要になるため、コストのことも考える必要があります。
そんな時に見つけたのが、プラークが落とせて滅菌もしやすいユリーでした。
細かいところまでプラークが落ちる上、バイオフィルムの破壊もできるのですごく便利なアイテムです。
向上心を持ち続けるということ
新人の時から勉強したい勉強したい、という気持ちがずっとあって、ラバーダムや超音波、SRP、ホワイトニング、歯周病…これまでにさまざまなセミナーを受けました。
こんなに勉強したいと言う歯科衛生士は、当時自分以外に医院にいなかったんです。そんな環境に私のような新人が入ったことで、一年目から異色の存在だったと思います。
ただ、その異色の存在によって医院全体が勉強する方向を向くきっかけになったり、スタッフが使っている道具や処置にこだわりを持つようになっていったことは、この医院に入って貢献できたことの一つかと思っています。
自分の向上心やその勢いのせいで、「新人らしくない」という言葉に悩まされた時期もありましたが、その過程で人としても成長することができました。
人を動かすということは、自分もそれなりの人間にならないといけない。人に聞いてもらうためには、尊敬されるような人にならないといけない。
いくら良い製品で良いことをやっていたとしても、「下がわーわー言ってる」と思われたら、賛同してもらえないんですよね。
そのためには、やっぱり子どものままではだめだと思い、ちゃんと目上の人を敬って、その上でやりたいことや思いを伝えることが大事だと体感しました。
今後挑戦したいこと
日本口腔内写真協会で行われているような、規格性のある口腔内写真を撮影できるようになること。
(参照:ABOUT US-一般社団法人 日本口腔内写真協会)
また、日本顕微鏡歯科学会の認定資格取得後は、その技術と知識を高めるだけでなく、マイクロスコープを使ってみたいと思っている歯科衛生士や学生に、何か伝えられることがあればそんな活動もしていきたいです。
その他、InstagramなどSNSでの情報発信も続けていきたいです。
今回の日本顕微鏡歯科学会認定歯科衛生士の取得にあたって、私がInstagramであげた動画に対して、ある歯科衛生士の方からメッセージをいただいて。
自分より年上の方でしたが、申請期限まで励まし合って一緒に頑張れるような方に出会えたのは、SNSのいいところだなと思っています。
SNSを通じて私自身を知ってもらいたいし、今後もたくさんの歯科衛生士の方と繋がり、たくさん学ばせていただきたいと思っています。
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dStyleでは、“歯科で働く希望と可能性をあなたに”をコンセプトに、さまざまなフィールドで活躍する歯科衛生士の方々へインタビューを行っています。
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