わたしのDHスタイル #35 加藤久子さん『日本の歯科衛生士の価値を上げるために』

歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。

dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、加藤久子さんにお話を伺いました。

日本の歯科衛生士学校を卒業後、アメリカ フォーサイス歯科衛生士学校に進学した加藤さん。

その後、マサチューセッツ州とニューヨーク州の2州で歯科衛生士免許を取得し、現地の歯科医療機関に勤務。

帰国した現在は、各地の歯科医院や教育機関にてスタッフ教育や臨床を行うかたわら、製品開発や執筆活動にも携わっています。

加藤久子さんの紹介ページはこちら(姉妹サイトWHITE CROSSへ)

歯科衛生士 加藤久子さん
加藤久子さん

渡米のきっかけ

日本の歯科衛生士学校に在学中、修学旅行と研修を兼ねてアメリカのカリフォルニア州とハワイ州に行ったことがきっかけです。

その際に現地の歯科衛生士の方々の仕事ぶりを間近に拝見し、実際のスケーリング操作も目の前で見学したところ、日本で学んだ内容とかなり違うなと思いました。

その後、日本で歯科衛生士として勤務しながら何度かアメリカに行き、アメリカの歯科衛生士学校への留学を決意しました。

アメリカには歯科衛生士学校が多くありましたので、留学専門のコンサルタントに日本国籍でも入学できて、かつアメリカ国内で評価の高い歯科衛生士学校をリストアップしていただきました。

そのうち、入学基準を満たしていたフォーサイス歯科衛生士学校に進学し、4年間のアドバンスコースを終え卒業しました。

私の受験した大学は、入学するために多くの単位を取得しなければなりませんでしたが、そのひとつに無機化学の単位がありました。

1年間の授業を取り、筆記と実技のテストを順に合格したら、次の学期で上のレベルに進むため大変でしたが、歯科衛生士の評価の低い大学には入学したくなかったので、忍耐でした。

帰国のきっかけは、日本の歯科衛生士の器具操作などが、アメリカと比較して遅れがあるという話をたびたび耳にする機会がありました。

そのため、日本の歯科衛生士のレベルを向上させるべく、帰国を決意しました。

アメリカでの歯科医院にて
アメリカでの歯科医院にて

アメリカの歯科事情

私の母校であるフォーサイス歯科衛生士学校では、日本の学校教育とは違い、卒業後歯科衛生士として即戦力となるために、徹底した教育を受けます。

そのひとつとして、学生のうちに多くの患者さんを処置するなど、卒後すぐに現場で働くことを意識したプログラムが組まれています。

また、アメリカでは州により業務内容や法律が違いますので、州ごとに免許が必要です。

私は、3年生の終わりにマサチューセッツ州の歯科衛生士免許を習得し、4年生の際には、母校であるフォーサイス歯科研究所の歯周病専門部で、研究者や専門医、患者さんから多くのことを学びました。

卒業後は、コミュニティヘルスセンターに勤務し、診療、小学校に歯ブラシ指導、フッ素指導そして、ニューヨーク州の歯科衛生士免許を取得しました。

そして、アメリカの歯科衛生士が修得できる学位には、いくつか種類があります。

私の歯科衛生士の学位は「BSDH」で、これは4年間の歯科衛生士のアドバンスコースを終えたことを意味しています。

今はコロナウイルスの関係で海外のWEB研修も受講しやすくなりましたが、講師はRDH(歯科衛生士の英語での略)だけではなく、BSDHなどの学位を持つ方の講演を受けることをおすすめします。

アメリカ独自の「歯科エージェント」

ニューヨーク州の歯科衛生士免許を取得した後はマサチューセッツ州の一般開業医の元で勤務し、その後「歯科エージェント」に所属しました。

これは日本の歯科界にはないシステムですが、歯科エージェントに所属すると、希望の時間や場所から、その日勤務する歯科医院や病院を紹介してもらえます。

この仕事をはじめたばかりの頃は、毎日勤務先の歯科医院を変えていましたので、チェアーの作動の仕方や器具の置き場、患者さんの処置のガイドラインなど、毎日方針が違って大変でしたが、やりがいと学べることは多かったです。

私の場合、それぞれの歯科医院の経営戦略やリコールシステム、使用機材、人材を知ることができましたので、大変ありがたい仕事でした。

途中からは、過去の紹介先の中から、私が歯科衛生士として有意義な仕事をできると思った歯科医院を選び、長く患者さんを拝見するために勤務を続けました。

特に大病院では、他の病院では処置できない全身疾患を持つ患者さんを受け持つことができ、勉強になりました。

また、ハーバード大学内の歯科では、歯周病専門医の意見を聞けましたので、私の臨床知識が上がった理由のひとつだと思います。

アメリカの歯科展示会での写真
アメリカの歯科展示会にて

働く中で経験したうれしい出来事

歯科衛生士としてスケーリングなどの口腔ケアを行うことで、医科の患者さんが手術後に順調に回復したり、歯の動揺かなり軽減した時は嬉しかったです。

また、セミナーでお会いした歯科衛生士で、スケーリングの悩みをお持ちの方の指導をした後に、“悩みが解決した”と泣いて報告してくれた時は、私も涙が出ました。

指導を行った歯科衛生士の技術が向上し、本人がそれを実感して喜んでくれると嬉しいですね。

そして、私の思いに共感した歯科医療従事者の方々が同じ方向を向いて、歯科界がより良くなるようにと協力していただけることがとても嬉しいことです。

日本での歯科医院指導の様子
日本での歯科医院指導の様子

これまでの人生経験の中で、やっておいてよかったと思うこと

アメリカ留学を行ったことで、多くの歯科界の素晴らしい方々とお会いできたことです。

特に日本の書籍などをいくつか翻訳されている歯周病専門医のDr.Wilkinsや、RED Complexの分類などで知られているDr. SOCRANSKYから直接指導を受けたことは貴重な経験でした。

また、大学の授業で学んだ、物理学や有機化学、インターパーソナルスキルの知識は、器具の操作や臨床での処置、患者説明の際に大きな助けとなっています。

他にも、日本では何十年かかってようやく輸入できる器材を、アメリカでは販売と同時にいち早く使用できることが良かったです。

オススメの器具

RDHグレーシーキュレットは刃が小さいので、歯肉縁下にも挿入しやすくオススメです。
(参照:RDHグレーシーキュレット-OralStudio

前歯用のK-0、近心用のK-15/16、遠心用のK-17/18の3種類があり、分岐部の器具操作も行いやすいです。

たくさん歯石が沈着している場合は、超音波スケーラーなどを使用した後に使用すると効率がいいです。

RDHグレーシーキュレット(背戸製作所より許可を得て掲載)
RDHグレーシーキュレット(製造元 背戸製作所より許可を得て掲載)

若手歯科衛生士へメッセージを!

歯科界では、研究者の方たちが毎年新しい論文を出し、それにともない商品も開発され、販売されています。

もちろん、処置への考え方や器具操作、プロ―ビング方法と圧、歯石探知、歯面研磨、スケーリングやSRPの操作、なども日々アップデートされていますので、いつまでも以前のままでは、患者さんに貢献できません。

歯科衛生士の方々は、以前は適切とされていた歯周病処置が、時代とともに改善されていることも多くあることを知り、より多くの患者さんに貢献できるようにしてほしいです。

(ちなみに私は、2020年日本でコロナウイルスの感染が広がる直前に、アメリカで器具の操作などの指導も受けています。)

器具の操作は、経験則だけではなりません。しっかりと基本を踏まえアップデートしてください。

それが皆さんに歯科衛生士としての明るい未来を作ることになります。

* 加藤久子さんによる歯科衛生士教育をご希望の方は、院長先生よりホームページにご連絡をお願いします。

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