歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。
dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。
このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。
***
今回は、歯科衛生士歴9年の橋口加奈子さんにお話を伺いました。
専門学校卒業後、東京都武蔵野市アスペン歯列矯正歯科医院で8年勤務した後、歯科関連の一般企業へ就職した橋口さん。
現在は都立大学駅前デンタルクリニックにてオープニングスタッフとして働いています。
矯正歯科を経験して
高校卒業してすぐ働きたかったのですが、母が歯科衛生士で。資格を取るべきだと言われていたんですよね。
正直何がやりたい、という意識はなく、たまたま人材紹介会社の方に紹介してもらったのが矯正歯科だったんです。
一般歯科で働いてみてまず感じたのは、患者さんの意識の違いです。
矯正歯科にこられる患者さんは、自ら治療したくて歯科医院にきているんですよね。
すでにモチベーションが上がった状態でこられるので、それを下げないように工夫をしながら業務にあたっていました。
しかし、一般歯科にこられる患者さんの中には、「クリーニングなんてしなくていいよ」「なんでそんなこと必要があるの?」と言われる方もいらっしゃる。
被せ物が取れたところだけ入れてください、と言われるような方は、歯周治療を行った方がいい場合が大抵です。
そのため、一般歯科ではどのように患者さんのモチベーションを上げていくかを意識して、指導や治療を行う必要があり、難しいなと感じています。
また、一般歯科の場合、削ったりバキュームなどの機械を操作する音があるのですが、矯正歯科では機器を扱うことがほとんどないため、まったくの無音状態になることがあります。
そのため、診療の間は他愛もない雑談をして、患者さんとの距離を縮めていくようにしていました。
反対に、今は限られた時間で患者さんに納得してもらうため、写真やグラフなどの資料を駆使して効率よく説明を行うようにしています。
仕事をする上でこだわっていること
患者さんとのコミュニケーションを大事にしています。
患者さんの中には、歯科に対して恐怖心を抱いている方が少なくありません。歯科受診がかなりお久しぶり、という方もいらっしゃいます。
そのため、患者さんのモチベーションが上がるまでは説明を繰り返し、気持ちが向いてくるまで待つなど、患者さんのペースで治療を行うように心がけております。
当たり前のことですが、治療の際はこれから行う処置の説明をしっかり行い、不安なことや疑問点がないかを聞き出します。
矯正歯科で働いていた時は、一人の患者さんの治療期間は2〜3年ありました。
また、私自身も矯正経験があり、痛みや不安に寄り添いながら患者さんと接していたため、自然と患者さんとの距離が近づき、友達みたいに話しかけてくれる方もいらっしゃいました。
その反面、一般歯科の歯周治療では、短い期間でリコールもしっかりきていただけるようなコミュニケーションの取り方を心がけるようにしています。
特にメインテナンスでは、こちらから見て100点のブラッシングじゃなかったとしても「ここまできていますね!」と、できているところをかならず褒めるようにしています。
そして、患者さんに不信感を与えないように、聞かれた質問にしっかり答えられるよう、勉強にも力を入れております。
働く中で経験したうれしい出来事
やはりもっとも達成感があったのは、矯正装置が外れた患者さんの嬉しそうな顔を見た時です。
矯正歯科では、長期間一人の患者さんと向き合うため、その間たくさんのできごとがあります。
特に学生さんに関しては、治療期間中に入学卒業を経ることがほとんどです。
身長が伸びたねー。何年生になったの?と、近くで成長を見れた気がします。
今日はテストでいい点取れた。運動会があって1位になれた。好きなアーティストの話、時には恋愛の話。
治療を重ねるごとに打ち解けて、いろいろな話をしてくれた時はすごく嬉しい気持ちでした。
現在のクリニックは入ってまだ一年ですが、「橋口さんのおかげで」という言葉はとても嬉しい気持ちになりますね。
こんなに丁寧に教えてもらったのは初めて。優しくしていただいてありがとうございます。また今後もよろしくお願いします。と患者さんから言われると、もっともっと頑張ろうと思います。
これまでの人生経験の中で、やっておいてよかったと思うこと
臨床に出て初めてお会いした先輩には、貴重な経験を積ませてもらいました。
すごく頼りがいのある先輩で、たくさん甘やかしてもらいました。その反面、怒った時は本当に怖かったです(笑)。泣かされたこともありました(笑)。
でも、教えてくれることが的確で。右も左もわからない私に、社会で必要な大切なことも教えてくれました。
はじめは毎日先輩についていくだけで必死でしたが、いつの日か先輩よりすごい先輩になりたいという目標を掲げて、毎日頑張っていた気がします。
そして、その先輩は毎日笑っていたんです。すごく楽しそうにお仕事をしている人だなぁと、新人ながら思ったことを覚えています。
その頃の私は毎日必死だったので、ネガティブな気持ちで働くこともありましたが、今は先輩のように、毎日笑顔で楽しく仕事ができている気がします。
そしてもうひとり。
この職場に勤めて出会えた、長内さんの存在です。
(参照:わたしのDHスタイル #01 長内香織さん『復帰したチーフ』)
長内さんには、患者さんに対する接遇マナーやスケーリングの練習、歯周病、小児歯科、インプラントなど、すべての知識を教えてもらいました。本当に感謝してもしきれません。
今もなお、お世話になっていて、すごくプラスの刺激をたくさんもらっています。
オススメの器具
長内さんにオススメしてもらった菅原歯科精器工業のスケーラーはとても良いです。
しなってしまうハンドスケーラーが苦手なのですが、このスケーラーはしなりが少ないです。そのため、滑らずにしっかり把持できて、歯石がしっかりと取れるんですよね。
もうひとつ、すごく好きなのはペングリップワンタフトです。
最後臼歯の遠心までまんべんなく届きやすいので、歯周病が進んでいて、普段歯ブラシできちんと磨けていない方にも使っていただいています。
ワンタフトをお渡しし、「鏡を見て一本ずつ磨きましょう」とお伝えすると、次にこられた時に炎症がおさまっていることが多いです。
今後挑戦したいこと
今は目の前のことに必死ですが、少しずつできることを増やしていきたいです。
いずれは矯正も一般もどちらもやりたいですね。
また、長内さんのように、臨床に軸足をおきながら院内セミナーを行う人に憧れます。
自分の技術に自信を持てるよう、日々勉強に力を入れていきたいと思っています。
dStyleでは、“歯科で働く希望と可能性をあなたに”をコンセプトに、さまざまなフィールドで活躍する歯科衛生士の方々へインタビューを行っています。
ご興味をお持ちいただいた方は、ぜひご応募ください♪