歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。
dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。
このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。
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今回は、歯科衛生士歴14年目の熊谷舞さんにお話を伺いました。
立川市のながさか歯科クリニックに勤めて7年目の熊谷さん。子育てをしながら週5で勤務し、さらに他の歯科医院でも非常勤として勤務。
臨床のかたわら、カイロプラクティックをベースとした歯科セミナーの講師としても活躍しています。
複数の歯科医院に勤めるメリット
現在、週5日勤務しているながさか歯科クリニックは、入社当時は非常勤として週3日勤務しており、その他の歯科医院にも週2、3日入っていました。
かけもちすることは、さまざまな歯科医院のスタイルやたくさんの情報を得ることができてとても勉強になります。
その中でながさか歯科クリニックへ常勤として勤務させていただきたいと思えたのは、スタッフ同士の仲がよく、居心地が良い環境だったことです。
また、院長である長阪先生の診療に対する考え方や方向性に共感でき、仕事のやりがいを感じられることも、理由のひとつです。
新しいことに対して柔軟に受け入れてくださる姿勢があり、「そんなのあるんだ、面白そうだな」と、まずやってみてダメだったときに考えよう、というスタンスなんですよね。
勉強会などで学んだ知識を受け入れてくれるところが、働きがいがあるポイントかなと思います。
もう1軒の歯科医院は、すごく対照的なんです。
ながさか歯科クリニックはドクターも歯科衛生士もたくさんいますが、こちらは夫婦2人でやっており、ユニットも2台しかない小規模な歯科医院。
治療内容も異なることが多く、違った刺激があって、とても勉強になっています。
1週間が10日くらいあれば、もう1軒くらいかけもちして働きたいなと思っています(笑)。
1年間の産休を経て
産休は、まるまる1年とりました。
6周目くらいから体調がすぐれず、絶対安静が必要になってしまい、すぐに仕事ができなくなってしまって。
仕事は好きだったので、本当はぎりぎりまで仕事していたかったですし、そんな状況で急遽休むことになってしまったので、何も申し送りできず…患者さんのことも気がかりで。
スタッフへの申し訳なさや、1日でも早く復帰して挽回しなきゃ、途絶えていた期間を取り戻したいと思いがあったので、産後は7ヶ月くらいで復帰しました。
産休明けに大変だったことは、臨床の感覚を忘れてしまっていたこと。
たとえばSRPの感覚や、診療に対しての応用力など…動きも鈍くなっていたり、切り替えがむずかしいと感じました。
当時は悩んでいて、院長先生に「そんなの熊谷さんならすぐだから、気にせずやってごらん」と励ましてもらうこともありました。今でも昨日のことのように覚えています。
家族の助けもあり、働くうちに徐々に子育てと仕事の両立が楽しくできるようになって。今では休みの日も仕事のことで頭がいっぱいです(笑)。
もう一つ大変だったことは、復帰当時は保育園にすぐ入れず、シフトもバラバラになってしまいました。
しかし、院長先生が「出産すると辞めちゃう人が多いけど、僕はママさん衛生士を応援したい」と言って、快く受け入れてくださり、とても嬉しかったです。
先生のそんな思いもあって、ながさか歯科クリニックにはママさん衛生士が5人在籍しています。
仕事が楽しいと思うようになるまで
高校生の頃は、衛生士になりたいとはまったく思っていなくて、なにもしたいことがなかったんですよね。
就職しようかと思っていた矢先、当時仲の良い友達が衛生士学校に行くということを聞いて、衛生士の仕事内容や就職率の高さなどを教えてくれたんです。
それで、「よかったら受ければいいじゃん!」くらいの軽い感じで誘われ、受験したのがきっかけですね(笑)。
衛生士学校を卒業して就職したばかりの頃は、労務時間が長く、結婚後は家事との両立がむずかしいと思い、別の仕事への転職を考えていました。
そんな中、2〜3年目くらいの時に、夫の紹介で豊野先生ご夫妻に出会って。
「歯科衛生士の楽しみとか深みを知らないで見切るのは早い」と言われたんですよね。
「まずは歯周病の認定資格を取りなさい。取って、いろんなものを感じてから、初めて辞めるとか辞めないとかを決めてほしい」と言われて。それがすべてのはじまりでした。
それからは、日本歯周病学会認定歯科衛生士の取得を目標にして臨床を続けてみると、勉強すればするほど知識が増えて。
歯科衛生士の仕事のすごいところって、勉強した次の日にはその情報を患者さんに提供できるところですよね。その楽しさに気づきました。
そして、患者さんの身体をよくすることが、自分にとっても嬉しく感じるようになりました。
たくさんの方の支えがあり、無事に日本歯周病学会認定歯科衛生士の資格を取得できました。患者さんも含め、支えてくださった方々に感謝の気持ちでいっぱいです。
仕事をする上でこだわっていること
すべてに手を抜かず、ベストな方法を尽くすこと。そして、歯だけではなく、患者さんの身体をよくすること。
数年前に下條茂先生と出会い、カイロプラクティックをベースとしたホリスティック医療の勉強をしています。姿勢や噛み合わせなど、全身とのつながりをお伝えするようにしています。
患者さんは歯を治しにきているけど、肩こりや腰痛、頭痛など、身体を良くしたいと考えている人も多いです。
矯正をしてから噛めなくなった、腰が痛くなったという方も結構多いので、患者さんの過去を探りながら、原因を見つけて施術をするようにしています。
痛みの原因は、考えれば考えるほど答えはでないですけど、またそこで歯科の楽しみや深みを実感しますよね。
働く中で経験した、うれしい出来事
現在、カイロプラクティックの講師である下條茂先生からお任せいただき、歯科衛生士向けのコースを開催しています。
そのセミナーの受講生から、「眠くならなかった」「いろんなセミナーがあるけど、他にない内容だったので受けてよかったです」と言っていただけたのはとても嬉しかったです。
また、セミナーを受講してくださった方や勉強会などを通じて、人とのつながりがもてたことはとても嬉しいことでした。
そんな思いを機に、今年にスタディーグループ「ROUTE DH」の立ち上げを行うことになりました。
いろいろな方々とのご縁や交流ができていくことを、嬉しく思います。
これまでの人生経験の中で、やっておいてよかったと思うこと
毎日の自炊です。もともとは専門学校時代の寮生活がきっかけで、節約のためにはじめました。
料理は苦手でしたが、毎日3食自炊の生活が身につき、結婚してからも毎日お弁当を作り、仕事を続けました。
毎日自炊をすることで、食生活と身体の関係について興味が湧くようになって。産休中に食の勉強に励み、食育インストラクターを取得しました。
(参照:食育インストラクターとは-NPO日本食育インストラクター教会)
自宅のトイレには「千坂式食事因果法」という、食べ物と身体の症状の関係性の表を貼り、家族で共有しています。
また、カイロプラクティックのセミナーでも、食と全身の関係性などを伝えています。
あとは、いろいろなセミナーや学会に参加したり、認定資格を取得したことです。
これまで受講させていただいたセミナーや学会で学んだ知識は、自分にとって財産となり、一生ものです。
どんな会にも一つひとつ吸収できるものがあり、絶対に無駄にならなかったです。
一人で本を読んで勉強することも学ぶ方法のひとつですが、セミナーのいいところは、質問ができること。
自分でも講師をやらせていただきながら、コミュニケーションをとり、質問がしやすい環境作りを大切にしています。
セミナーのお問い合わせはこちら:hygienist.kmgimai@gmail.com
おすすめ器具
拡大鏡です。私はサージテルの10倍を使用しています。
はじめは6倍か8倍を購入しようと迷っていたのですが、試しに10倍を使ってみたら、マイクロを見ているかような視野に、思わず感動しました。
拡大鏡を10倍にしてから、治療の質が格段に上がったと思います。SRPでもそうですし、カリエスの探知、補綴物の適合など、実際に目で見えるというのは大切だな、と痛感しました。
また、外科のアシストにつくときも、ライトが明るいので、先生にも喜ばれました(笑)。見やすいですし、外科治療を10倍の視野で見られるのがすごく楽しいです。
自腹で買うのに決して安い金額ではなかったですが、購入して後悔はしていません。
購入後のレンズのメンテナンスケアの際に、オーラルケアの担当さんから「全国の歯科衛生士で10倍を使われているのは熊谷さんだけです」と言われました。
たくさんの歯科衛生士さんに、マイクロスコープとは違った拡大鏡の良さを伝えていきたいです。
それから、Er:YAGレーザーはすごく良いです。歯石が取れます。
フラップ手術の時はもちろんですが、スケーラーを当てることができないインプラントの部分にも、Er:YAGレーザーを当てることですごくきれいになりますし、殺菌効果もあります。
さすがにYAGレーザーは自腹ではありませんが…(笑)、サージテル・YAGレーザー・ヒューフレディのスケーラーは、私の中で三大神器です。
今後挑戦したいこと
カイロプラクティックを学んだことで、MFT(口腔筋機能療法)をしっかり学ばないといけないと思い直しました。
小児矯正も成人も、姿勢や噛み合わせに注意していても、後戻りが発生してしまうんですよね。
全身も大切ですが、口腔内の機能についてもきちんと見直さないといけないなと思いました。
あとは論文を読むこと。英語の論文がたくさんでむずかしいですが、学ぶことを楽しんで成長し続けたいです。
dStyleでは、“歯科で働く希望と可能性をあなたに”をコンセプトに、さまざまなフィールドで活躍する歯科衛生士の方々へインタビューを行っています。
ご興味をお持ちいただいた方は、ぜひご応募ください♪