わたしのDA LIFE #05 風澤かおりさん「みんなの相談窓口に」

歯科医院で働く職種のひとつである「歯科助手」。

法律で決められた業務がない反面、さまざまな役割を任される職業です。

dStyleでは、さまざまなシーンで活躍する歯科助手にスポットライトを当て、等身大の歯科助手ライフを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、歯科助手歴13年目の風澤かおりさんにお話を伺いました。

4年制大学を卒業後、新卒で千葉県柏市の康本歯科クリニックに入社した風澤さん。現在は分院の柏の葉総合歯科でデンタルクラークのチーフとして、院長先生やスタッフ、患者さんの橋渡し役を担っています。

柏の葉総合歯科 風澤かおりさん
柏の葉総合歯科 風澤かおりさん

歯科で働こうと思ったきっかけ

大学を卒業する時期が、ちょうど就職氷河期だったんです。医療系の職場だったら絶対になくならないと考え、いくつかのドラッグストアで内定をもらっていました。

ただ、転勤がすごく多い仕事ということを両親が心配していて。転勤がなく医療系で、長く続けられて初心者でもOKという条件が揃った業界が歯科だったんです。

また、もともと歯の矯正をしていたことや、親戚のお姉さんが歯科助手のアルバイトしていたこともあって、私にとって歯科は身近な場所でした。

変な話、歯科医院はコンビニより多いので、はじめの就職先でうまくいかなくても、他でも潰しがきくだろうなと思った部分もありました。

それに夜勤もないし、残業も少ない。仕事終わりも楽しめて、出会いも多くて、医療系の知り合いがどんどん増えて、あわよくばドクターと結婚できるかも…なんて夢もあったんです。(笑)

今の職場を選んだのは、大学に求人が出ていたからです。歯科にしては初任給がよかったことも理由のひとつです。

また、歯医者さんって治療して終わりというイメージがあったんですが、康本歯科クリニックは「管理をする」というところに着目していたというのも、印象的でした。

ただ治療やメインテナンスを行うだけでなく、治療計画や治療後にTCが間に入って、患者さんのメンタル面のフォローをしているというところがとても面白いなと思って、トライしてみようと思ったんです。

デンタルクラークとは

康本歯科クリニックでは、受付やカウンセリング、診療補助を行うスタッフのことを「デンタルクラーク」と呼んでいます。

歯科にはトリートメントコーディネーター(TC)という職種がありますが、「TC」と言って伝わるのは、歯科業界の一部の人だけです。一般の方からすると、仕事内容を説明してもなかなか理解しづらいんですよね。

そこで、より伝わりやすい名称ってなんだろうと考え、たどり着いたのが「クラーク」。

医療クラークは、大きい病院にかかっている方にとっては耳馴染みがある職種で、なんとなく相談窓口の人というのが想像できます。なので、歯科のクラーク=デンタルクラークにしよう、ということになりました。

「相談窓口です」とお伝えすると、一般的な治療や費用など、歯科についての相談から、最近では人生相談までしていかれる方もいらっしゃるんです。遠方から引っ越してこられた方には、町案内をする時もあります。

親身になって相談に乗っているからか、患者さんからの口コミでさまざまな方にきていただけます。中には「歯医者は他のところに行っているけど、そこで聞いたことって本当に正しいの?」と、セカンドオピニオンとして相談にだけこられる方もいます。

カウンセリングルームは風澤さんの主な仕事場
カウンセリングルームは風澤さんの主な仕事場

普段の業務内容

基本的には治療相談を担当しています。初診カウンセリング、アフターカウンセリングなど。

あとは、たまに受付に入ったり、治療の補助をしたり、消毒をしたり、資格がないとできないこと以外は全部やります。

ここ3年くらいは、新メニューを作ったり価格改定、新人さんとの面談など、運営に関わる仕事も増えてきました。

仕事場のカウンセリングルーム。説明用の資料や模型などが完備されています
カウンセリングルームには説明用の資料や模型などが完備されています

長く勤められる秘訣

辞めたいと思うこともたくさんありましたが、なんだかんだでスタッフが仲が良かったり、院長がスタッフを大事にしてくれているのが伝わるので、長く続けられています。

また、常に新しいことを発信しようとする院長と医院なので、飽きないんですよね。ついてくのは大変だけど、楽しいんです。

それから一番の秘訣は、私を頼ってきてくださる患者さんがいること。そういう人たちのことを考えると、辞められないな、と思っちゃいます。

産休育休後も戻ってこられる方が多いことも大きいですね。

育休中に訪れたスタッフの周りに集まるみなさん
育休中に訪れたスタッフの周りに集まるみなさん

仕事をする上でこだわっていること

これは上司の平田の教えですが、win-win-winになるように考え、行動しています。

医院だけが満足してもダメだし、患者さんだけが満足してもダメ、スタッフだけが満足してもダメ。その3者にとって有益になる考え方をしなさいと教えてもらってから、実践しています。

たとえば、お給料を上げてほしいから自費の価格を上げるというのは、患者さんにとってはwinじゃないですよね。

双方がwinになるには、カウンセリングの時間を増やして、患者さんに納得してもらい、自費の選択をした結果、自費率が上がる。そして、売り上げが上がって医院もwinになる、というようなことです。

あとは、患者さんに限らず、スタッフを含めて、ささいなしぐさを見逃さないように気をつけています。

スタッフの場合だと、挨拶の時の返事や顔色、声音を意識しています。一人暮らしをしている方も多いので、体調管理の部分でフォローしたり、女性が多い職場なので、みんなが円滑に仕事ができるように、小さなところに気付けるようにしています。

患者さんの場合は、治療に専念するドクターには、どうしても患者さんの気持ちを汲み取りきれない時もあります。

そういう時は、クラークの私たちが患者さんの目線や手の動きなどを読み取って、治療後のカウンセリングで患者さんの気持ちを伺います。そうすることで、トラブルを未然に防げることもあります。

今までの人生の中で、やっておいてよかったと思うこと

学生時代に教育実習の一環で、介護老人ホームや児童福祉センターに実習に行った経験です。

介護が必要な方の中には、言葉で伝えることのできない方もいらっしゃいます。そういった方の感情にどうやって気付くか、ということを学びました。

治療中で声が出せない、言いたくても言えないという患者さんのささいな反応に気付くというのは、この経験がきっかけとなって注目できるようになりました。

実習では約1週間、日々の業務を体験させてもらうんですが、食事やお手洗い、お風呂の介助、ベッドメイキングなどもしました。

相手は年配の方なので、プライドもありますし、新人はやだ、実習生はやだ、という方もいて、そういうところにも配慮しないといけません。それって歯科でも同じで、若い先生はやだ、新人のスタッフはやだ、という方もこられますよね。

そういった方にいやな思いをさせないように、いかに納得して治療を受けてもらうか、という方法も学べましたね。

なかなかできない体験なので、やっておいて良かったなと思います。

院内のお気に入りイベント

忘年会です。

みんなでご飯を食べるだけなんですが、普段一緒にご飯を食べられない子と話せるのが楽しいです。

本院と分院の合同で行い、例年60人くらいが集まるので、名前だけは知ってました!という人もいて楽しいです。

忘年会の様子。毎年スタッフのご家族も参加するため大賑わい(写真提供:風澤かおりさん)
忘年会の様子。毎年スタッフのご家族も参加するため大賑わい(写真提供:風澤かおりさん)

今後挑戦したいこと

当院では今後、近隣の歯科医院の新人さんを集めて、新人育成をしていきたいと考えています。

人を雇うというのは、人手が足りないから。人手が足りない時に、新人を育てる余裕なんてないですよね。

また、未経験で歯科業界に就職する方の中には、歯科のしの字もわからないという方もいます。

そういった新人さんに対して、まずは即戦力として働くことができるように基礎的なことを教え込み、余裕が出てきた頃にそれぞれの医院の理念やルールを共有してもらう、というプロジェクトを計画しています。

また、新人さんの教育係となる人材についても、産休育休明けでフルタイムでの復帰が難しいといった方に数時間だけ教えにきてもらうとか、インターネットを活用してオンラインで教育や相談などのサポートをしてもらうというように、新しい働き方を提供できるのではないかと考えています。

わたしのDA LIFE #05 風澤かおりさん

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