歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。
dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。
このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。
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今回は、歯科衛生士歴19年目の岩崎美保さんにお話を伺いました。
地元網走市と札幌市の歯科医院を数軒経験した後、札幌市の歯科医院に10年勤務。その後、同市内の歯科医院に転職し、現在は育休中です。
臨床のかたわら、札幌市にあるハミガキ専門店Hamigaki Life(ハミガキライフ)にて一般の方への啓蒙活動を行ったり、スタディグループ「みんなでつくる勉強会」を主宰し、歯科衛生士が勉強だけでなく相談もしあえる場を設けています。
「みんなでつくる勉強会」の詳細はこちら
仕事をする上でこだわっていること
患者さんが歯科医院にいらっしゃる時は、大なり小なり緊張していると思いますし、お口の中についても不安をお持ちだと思います。
そのため、患者さんと接する時には、毎回初心に返り、新たな気持ちで接するよう心がけています。
歯科医院で長く働いていると、慣れや親しげな感じが、態度に出てしまいます。
しかし、来院される方の中には、目上の方やいろいろな経験をお持ちの方も多くいらっしゃいます。「ここは私たちのホームだから」という気持ちで接すると、嫌な思いをさせてしまうかもしれません。
そのため、タメ口は使わない、上からものを言わないようにしています。
また、緊張をほぐせるように、会話の中でなるべく患者さんの話を笑顔で聴くようにしています。もちろん事実は事実として伝えないといけない時もありますが、一方的な言い方にならないように注意しています。
患者さん自身に、自分の身体をなおそうと思ってもらえるように、一人ひとりの心に寄り添った診療を心がけています。
もうひとつは、医院が発展するために自分ができることは何か、常に物事を俯瞰して見るように意識しています。
自分の働きやすさも大切ですが、自分だけでなく医院にとって利益になっているか、ということを考えて動いていますね。
経営者である院長にも、孤独な部分がたくさんあって、院長からスタッフに言うことで、萎縮されてしまうようなこともあります。
そういう時は、掲示物を定期的に変えよう、Instagramで医院の情報を発信しようなどと、自分から発言します。
もちろん賛同意見ばかりでない時もあり、過去にはうまくいかなかったこともあります。今は、院長先生の気持ちだけでなく、スタッフ側の気持ちも考えるように注意しています。
働く中で、うれしかった出来事
患者さんから指名していただいたり、職場が変わってもついてきてくれる方がいることがうれしいです。患者さんの話を笑顔で聞くようにしているからでしょうか…
自分自身が病院にかかったり入院したりした時に実感したのですが、医療にこそ、「やさしさ」って大切です。
検査結果は濁す部分ではないけど、いつも優しさと笑顔を忘れずにいることで、患者さんは安心できると思います。
また、同僚から、一緒にいると勉強になる、歯科衛生士の仕事を頑張ろうと思えると言ってもらえたときも嬉しかったです。
大規模の歯科医院では難しいかもしれませんが、小規模の歯科医院の場合、隣のチェアから患者さんとスタッフとの会話が聞こえてきますよね。
誰かが話している内容を耳にして、はっと気づかされることもあります。
そのため、患者さん対応はスタッフみんなに聞こえてもいいように、言葉遣いに気をつけたり、正しい情報を提供できるように本を読んで勉強したりしています。
スタッフがうまく育ってくれるように、興味がなさそうなセミナーの場合でも、それとなく誘ってみて、納得してもらって連れ出したり。
みんなと同じ目線でいることに気をつけながらも、いい空気の方向にひっぱれるような環境作りを意識しています。
今までの人生の中で、やっておいてよかったと思うこと
以前勤めていた歯科医院で主任を担当したことが、とても良い経験でした。
院長先生や経営に携わるメンバーと、医院がどうしたら発展していくか真剣に考え積極的に提案したり、採用や育成に携わることができて、自らも成長することができました。
医院に主任業務がかならず必要かどうかは分かりませんが、私は主任業務を通して、確実に考え方や行動が以前と変わりました。
それまでは自分が仕事をしてお給料をもらえて、それだけでいいと思っていて、経営のことまで考える必要はないと思っていました。
しかし、経営サイドに立って医院を見た時に、セミナーに行かせてもらったり、制服を与えてもらっている、働く場所を与えてもらっているということが、当たり前のことじゃないということに気づいたんです。
(経営者に)してもらうことが当たり前ではなく、私たち従業員も医院に還元しようという気持ちを持つべきだと思うようになりました。
また、日本歯周病学会の認定資格を取ったことも、いい経験でした。
2017年に資格を取ったのですが、自分にとっても自信になりますし、歯周病で悩んでいる患者さんにとっても、「日本歯周病学会認定歯科衛生士」と書かれた名刺をお渡しすることで安心して通ってもらえていると感じます。
資料集めについても、これまでの臨床の復習にもなり、いい経験でした。
また、医院見学やセミナー参加もやっておいてよかったことのひとつです。
他院の院長やスタッフとの出会い、仕事と真剣に向き合う姿を見聞きすることは、自分が井の中の蛙であることに気づかされると同時に、自分もそうなりたい!と、とても刺激になりました。
働きやすい歯科医院
院長先生がスタッフの話を理解してくれて、GOサインを出すのが早いところです。
「いいね!それやってみよう!」と言ってもらえると、気軽に相談しやすいですし、モチベーションがアップします。
現在は育休中ですが、さまざまな歯科医院を経験して思ったことが、院長先生やスタッフとの関係が良くないと、復帰することなく辞めてしまうことも少なくないということ。
産休明けのスタッフを雇うというのも、人件費がかかることです。現在働いている歯科医院で産休を取らせてもらいたいと打ち明けた時、先生が「戻ってきてね」と言ってくれたのがとても嬉しかったです。
今は、歯科医院のグループラインでのやりとりなどで、医院の状況は何となく把握できています。
また、週に1日はかならず医院のInstagramをアップさせてもらっています。確かにお休みをいただいているけれど、雇用してもらっていることに変わりはないので、少しでも貢献できればという思いでやっています。
復職するスタッフが増えることは、教育コストがかからないですし、いいことだと思うんです。
戻りたいと言われる、戻っといでと言えるような、いい雰囲気作りをしていきたいです。
オススメの器具
私のお気に入りグッズは、スウェーデン製のTePeオリジナル歯間ブラシです。
一般的の歯間ブラシと比較すると、TePeの歯間ブラシは毛量が多いです。また、Mサイズ以降の歯間ブラシでは、ブラシ部分が長くなっているため操作しやすいです。
また、ワイヤーがプラスチックでコーティングされているので、歯肉を痛めにくくなっています。
患者さんに使っていただくと、今まで使っていた歯間ブラシより使いやすいよ!と喜びの声をいただくことが多々あります。
今気になっていること、やりたいこと
地元の網走市で、歯科衛生士・歯科助手向けのセミナーを開催したいです。
現在、セミナーは札幌で行われることがほとんどで、車で行くとなると5時間程かかります。なかなか学ぶ場が少ないことは残念でなりません。
かつて私が刺激をもらった仲間たちのように、私も誰かにいい刺激を与えることができるといいなと思います。一緒に知識や技術の向上ができると、地元の人のためにもなりますよね。
それともうひとつは、網走の小学校や中学校で、歯科衛生士の仕事の楽しさややりがいを伝えたいです。
網走は歯科衛生士がまだまだ少ないです。子どもの頃からどんな職につきたいか決まっている人は少ないと思いますが、たくさんある職業の中でも歯科衛生士になりたいな!と思ってくれる子が出てきてくれるとうれしいです。
高校生の時から網走市を離れて暮らしているせいか、地元でやり残したことがある気がしてなりません。
歯科衛生士の仕事を通して生まれ育った土地に恩返しがしたい、地域の活性化に少しでも貢献したいという気持ちが強いです。
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dStyleでは、“歯科で働く希望と可能性をあなたに”をコンセプトに、さまざまなフィールドで活躍する歯科衛生士の方々へインタビューを行っています。
ご興味をお持ちいただいた方は、ぜひご応募ください♪