わたしのDHスタイル #25 奥山洋実さん『医院を支える歯科衛生士を増やす』

歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。

dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、歯科衛生士歴34年目の奥山洋実さんにお話を伺いました。

旦那さんの転勤により都内と山形県の歯科医院を転々とする中で、予防医療を重視する歯科医院に11年間勤務。

現在は都内の有田歯科医院とデンタルクリニック江戸川橋の2軒で週4日臨床業務を行うかたわら、週2日は数軒の歯科医院にて歯科衛生士のスキルアップのサポート。

さらに、スタディグループ「奥山会」を立ち上げ、歯科衛生士の職業価値を高める活動を各地で行っています。

歯科衛生士 奥山洋実さん
歯科衛生士 奥山洋実さん

お仕事をする上でこだわっていること

患者さんをみる際、患者さん自らが行動変容を起こせるようなアドバイスを行うこと、規格性のある口腔内写真を撮影することは、特に重視しています。

むし歯と歯周病は生活習慣と深く結びついているので、患者さんの生活背景を知るためにたくさんディスカッションをします。

そのディスカッション中で、患者さんご自身に、むし歯や歯周病の原因に気付いてもらうことが大切なんです。

口の中しか見えていない、磨く方法しか教えられないという歯科衛生士もみかけますが、歯の健康を守るためには患者さんの健康意識を高めることが大事なんです。

そのため、患者さんに指導を行う際は、磨き方を教えるというより、なぜ磨かないといけないかを考えてもらい、また同じ原因で歯を失ってしまうことのないようにします。

なので、患者さんに「(むし歯にならないためには)どうしたらいいと思いますか?」と質問をすることが多いですね。

あなたがむし歯になってしまったのは、歯磨きの仕方のせい?歯質が弱いせい?いや、普段摂取している砂糖のせいだった。と、会話をしているうちに自分で気づいてもらえるよう、患者さん自身に考えてもらうことが大切なんです。

あとは、できるだけ未来に向かった話をすることを、すごく大事にしています。

これまでに歯を失ったこと=マイナスのことを言ってもキリがないので、これ以上歯をなくさないようにする、次の世代の歯の健康を守る、そのための情報を伝えるようにしています。

歯科受診がきっかけで食生活を変えられて、「普段の砂糖摂取を控えるようになったら、肌まできれいになった!」という声を聞けると、すごく楽しいですよね。

指導の際はかならず患者さんと目が合う位置に着席する
指導の際はかならず患者さんと目が合う位置に着席する

奥山会立ち上げの経緯

これまでに出会った歯科衛生士や歯科医師から熱望されて立ち上げました。

臨床を積み上げ、地域に貢献できる歯科衛生士になってほしい。歯科医師と主従関係ではなくパートナーとして、医院を支えられるような歯科衛生士になってほしいという思いで立ち上げたんです。

奥山会というグループ名も自分で付けたわけでなく、長野の谷口威夫先生に命名してもらったんですが、「奥山会が一番いいよ。」ということで、この名前にしました。

初回は100人以上の方に参加していただくことができました。2回目は160人参加してくださいました。商業誌にチラシを載せたりはしてないんです。それだけ、同じ考えを持つ方が多くいるってことですよね。

参加者は9割が歯科衛生士で、その他は奥山会の活動を応援してくださる歯科医師や企業の方です。

中には、まだ予防や歯科衛生士業務に十分な理解が得られていない環境で働く歯科衛生士もいます。しかし、環境を求めて歯科医院を転々とするのではなく、歯科衛生士自らの力で医院を変えていけたらと思うんです。

また、奥山会ではかならず、自分がどんな医院で仕事をしているのかを、ケースを含め、どのように患者さんと向き合っているか、歯科衛生士としてどうありたいかということを発表してもらいます。ケースプレゼンテーションとはちょっと違いますね。

そして、奥山会のモットーは、自分のお金で勉強すること。自分のお金で学びにきたら、真剣に聞くじゃないですか。そのため、個人申込しか受け付けていませんし、その分受講料をおさえています。

実際、日々の臨床業務を減らさずに活動を続けていくのはかなり大変です。

しかし、なおして守れて地域を変えられる歯科衛生士が増えれば、日本全体の口腔内の環境が良くなり、国民の歯の寿命を伸ばすことにつながります。

だからこそ、この思いを伝える活動にも、力を入れていく必要があると思っています。

第2回奥山会にて記念撮影
第2回奥山会にて記念撮影

奥山さんの理想の歯科医院

院長先生のトップダウンではなく、歯科衛生士一人ひとりが力をつけて、歯科医師とともに患者さん、歯科医院、そして地域を変えていけるような歯科医院です。

過去お世話になった歯科医院の中で、しっかり資料を採って患者さんに情報提供をして、地域を変えていった歯科医院の仕組みはいいなと思いました。

患者さんの歯を守る上で、一人ひとりの患者さんの資料を規格的に取り、歯周基本治療を行い、患者さん自身の健康意識を変えていくことが大事だと思っています。

10年前と比較して、定期健診の受診率は増えているのに重度の歯周病患者さんは増えているというデータがあります。歯医者に通っているのに守れていない、もっと歯科衛生士一人ひとりの意識改革が必要と感じています。

それで、実際に会った歯科衛生士一人ひとりの意識を変えていかなければ、手をとって伝えていかなければと思ったんです。

歯科医師の関心がないとしても、歯科衛生士一人ひとりが力をつけて患者さんを変えていくと、歯を診ている歯科医師は、かならずその変化に気づくんです。

そして、患者さんとの信頼関係ができると、結果的に自費率が上がり、家族や知り合いにも広めてくれるので、初診率が上がる。自然と収益が上がります。そうすると、経営者は安心するんです。

歯科衛生士が臨床と経営、このどちらもの結果を出すことが、自分の働きやすい環境を得るためには重要なんです。

働く中で経験した、うれしい出来事

あなたに出会えて人生が変わった、健康の大切さに気づかせてくれてありがとうと言われたことです。

また、過去にお会いした方が何人も歯科衛生士になってくれたことも嬉しいです。

当時高校生で歯科衛生士を目指してくれた患者さんは、現在もう30代ですが、今も歯科衛生士を続けており、奥山会にも参加してくれています。

一緒に働いた受付の方が「歯科衛生士は生涯をかけるにふさわしい仕事」と言って、歯科衛生士学校の夜間部に入学してくれたこともありました。

フリーターだった方で、私と出会って歯の大切さを知って、歯科業界に就職したということも、うれしかったですね。今もメインテナンスに通ってくれていますよ。

歯科って本当に素晴らしい業界だと思っていて、歯科衛生士っていいなって思ってくれる人を増やしていきたいです。それは私だけができることではなくて、歯科衛生士一人ひとりが「目指したい人」になっていけば、歯科衛生士の社会的価値を上げられると思うんですよ。

これまでの人生経験の中で、やっておいてよかったと思うこと

中学時代の部活から続けている吹奏楽は、続けていて良かったと思います。

現在も吹奏楽団に入っていますが、10代から60代まで、幅広い年齢層やさまざまな職種の人と関われるおかげか、苦手と感じる年齢層がないです。

また、二人の娘の子育てや義理の母との同居を通じて、価値観の違いがある人を認められるようになりました。

当時、仕事がしたいなら今まで通り家事をするというのが、義母から出された条件でした。

時間は有限です。どうやって自分のやりたいことをやるか。そのために、いかに協力者を増やすか、を考えるきっかけになりました。

おすすめの器具

ヒューフレディのキュレットと、クロスフィールドのハイゴフォーミックです。

ヒューフレディのキュレットは、私が技術を習ったアメリカのシェリー・バーンズ先生が愛用していたのもあり、ずっと使っています。

これまでに多くのキュレットを試してきましたが、管理がしやすく、長持ちするキュレットだと感じます。

ヒューフレディのキュレット。かならず砥石とセットで持ち歩く
ヒューフレディのキュレット。かならず砥石とセットで持ち歩く

術者がバキュームを持ってしまうとミラーが持てなくなり、見えない部分ができてしまいますので、いつも排唾管を使用しています。

ハイゴフォーミックは1箇所に下げた状態で、横からミラーを入れられるので、とても使いやすいです。ディスポーザブルなので、衛生的でおすすめです。

クロスフィールドのハイゴフォーミック
クロスフィールドのハイゴフォーミック

おすすめの勉強方法や情報収集の方法

臨床力を上げるための学びにもっとも効果的なのは、ケースプレゼンテーションと考えています。

そのため、私自身も講演ではかならずケースプレゼンテーションをしますし、奥山会でもかならず自分の症例を紹介します。

情報収集の方法は、FacebookなどのSNSや、歯科衛生士向けの月刊誌を利用しています。

SNSは、フォローしている先生がおすすめしているものを参考にしたり、というように活用します。

歯科衛生士向けの月刊誌は、毎月3誌購読しています。専門誌を読んで興味を持った先生は、ネットで検索して講演会の情報を知る、という使い方もします。

また、セミナーに参加する時は、自分のお金で勉強するようにしています。今はウェビナーも盛んなので、同僚の歯科医師や歯科衛生士にも、情報提供して同じ情報を得るようにしています。

そしてかならず、セミナーを受講する前には、演者の方の書籍を読んでから参加します。そうすることで当日直接質問することもできるので、より理解が深まります。

今後挑戦したいこと

歯科衛生士の復職支援です。

私自身、25歳と29歳になる二人の娘を育てながら歯科衛生士を続けていますが、奥山会の活動を通して、子育てで現場から離れてしまい自信がない、という歯科衛生士が多くいることがわかりました。

今後は、そんな方が安心して復帰できるようなセミナーやお悩み相談も受けていきたいです。

現在、毎週火曜日にFacebook Liveを行っています。時間は不定期で、遅くなってしまう時もありますが、子どもを寝かしつけてきました!と言ってくれる方もいます。

離職している方でも、こうして繋がりを持ち続けることで、歯科衛生士の仕事に復帰しやすい環境を作ってあげたいです。

また、ライブ配信の視聴者は、意外と歯科医師も多いです。賛同してくれる先生というのは、歯科衛生士を主従関係ではなく、パートナーとして見てくれる先生なんですよね。こういった歯科医師が増えていってほしいと思っています。

それから、今は時間的な余裕がないですが、患者さんから「一般向けの情報発信をしてほしい」という要望が多いので、何か発信できたらとも考えています。

歯科衛生士を34年続けている中で、歯科医院に衛生士がいながら、こんなにも歯がなくなっていることに対して、危機感を感じています。歯科衛生士が歯を守れる職業にならないと、日本人が歯を失っていくのは止まらないんです。

これから健康寿命を延ばしていく上で、歯科衛生士は日本の将来を変えられるキーマンだと思っています。それに気づいていない歯科衛生士も多いです。

医院の中で医院を支える一つの柱となって、そこのクリニックにきている患者さんをなおして守れる、健康意識を変えられる歯科衛生士になってほしい。それで、地域が変わってくるんですよ。

そういった地域がどんどん増えていくことで、日本全体の口腔環境が良くなって、健康寿命が延びてくると思うんですよね。

そうして、歯科の価値が高まる。そのための活動を、残りの歯科衛生士人生でやっていきたいなと、決意したんです。

奥山洋実さん

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