わたしのDHスタイル #28 福村陽世さん『唯一の歯科衛生士になるために』

歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。

dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、歯科衛生士歴23年の福村陽世さんにお話を伺いました。

北海道医療大学歯学部附属歯科衛生士専門学校を卒業し、同大学の附属病院に勤務。

その後結婚や出産を機に、街の歯科医院や総合病院の口腔外科など、さまざまな専門分野の医療機関に勤めた福村さん。現在は、帯広市の林歯科医院に勤めています。

林歯科医院 福村陽世さん
林歯科医院 福村陽世さん

これまでの経歴

北海道医療大学の附属病院で働いていた頃は、地域医療をメインとしていたこともあり、患者さんをたくさん診ることができました。

教育機関という側面も大きいため、実習生の受け入れや歯学部の実習など、学生さんと接する機会も多かったです。半分教育半分臨床と、かなり充実していました。

また、いろいろな分野の勉強をしている歯科医師が在籍しており、2年おきに配置換えがあるため、矯正歯科や小児歯科、ペリオなど、幅広い分野について専門的な内容を勉強することができました。この時、専門医の知り合いもたくさん増えました。

一般歯科との大きな違いは、大学病院はみんなが“同僚”ということです。

歯科医師の先生も同僚で、上司じゃないんですよね。歯科医師だけでなく歯科技工士さんも同じ立場で接してくれたので、仲間意識が強かったです。

一般歯科の場合、基本的に歯科医師の先生は上司であり、経営者ですよね。

転職して院長先生が変わると、理念や方針も変わるため、一から覚えなおさないといけないことも多く、そういったところは大変でした。

総合病院の口腔外科は、大学病院とは反対で、歯科医師が少なく歯科衛生士の方が多かったです。女性の多い職場でしたね。

勤め先は脳神経外科もある病院だったので、がん患者さんの口腔ケアや周術期の口腔ケアを学ぶことができました。

また、総合病院はたくさんの人が勤めているので、福利厚生が充実していたり、子どもの保育所のお迎えに間に合う時間に退勤できるといったメリットもありました。

今は、インプラントを熱心にされている先生のもとで働いています。インプラントは今まであまりやったことがなかったので、とても勉強になっています。

どの職場でも新しく学ぶことが多く、さまざまな分野の勉強ができたことは、とても貴重な経験です。

仕事をする上でこだわっていること

自己満足の治療、ケアにならないように心がけています。

以前受けたセミナーで「日本の歯科衛生士さんってSRP好きだよね、とヨーロッパでよく言われている」という話を聞いたんですよね。

どうしても「綺麗にしたい」「歯石を取りたい」という思いが先行してしまって、ガリガリとSRPをした結果、歯肉が付着しなかったり、根のセメント質を剥離させてしまったりという医原病が起きてしまうことが、過去の日本では多かったんじゃないかと思います。

そのため、普段の治療では、全部治すことやきれいにすることが、本当に患者さんのためになるのかを、常に考えるようにしています。

もしかしたら様子を見て、管理をしていった方がいい場合もあるかもしれません。

そのためにも、患者さん自身にどうなりたいかをしっかりと聞いて、正しい情報を提供し、一緒に選択をしていく。

常に患者さんに寄り添って、患者さん自身が気づき、行動変容していけるように意識しています。

働く中で、うれしかった出来事

患者さんに、「唯一の歯科衛生士」と、信頼していただいたことです。

子どもに対する予防矯正の勉強に力を入れていたこともあってか、とくに小児患者さんのお母さんから信頼してもらえることが多いです。

一時期、どの分野に力を入れて勉強していこうか悩んだ時期があったのですが、そんな時にそのお母さんから「この子にずっと関わっていてほしい。子どもの予防を勉強していてほしい」と言っていただきました。

これまで学んだことで貢献できているんだなと実感でき、周りから認められていることがとても嬉しかったです。

それから、国際歯科衛生士(IDHA)の認定フェローになれたことも嬉しかったです。
(参照:認定歯科衛生士制度について-IDHA

IDHAは、ミラーの分類を提唱されたプレストン・ミラー先生が創設会長を務める国際学会「iACD(International Academy of Contemporary Dentistry)」に属する、歯科衛生士の国際学会です。

IDHAの認定フェローになるために、認定研修を受け、上海の学会で症例発表を行いました。

IDHA認定フェローの認定証授与式にて。Jon.B.Suzuki(左)と福村さん(右)
IDHA認定フェローの認定証授与式にて、Dr.Jon.B.Suzuki(左)と

その認定研修の一環として取得したトータルヘルスプログラム(THP)の認定資格は、取得までに1年4〜5ヶ月くらいかかりましたが、患者さんのためになる素晴らしい資格で、自分自身のスキルアップにもなりました。

THP認定歯科衛生士とは?

THPは、神奈川県のつじむら歯科医院の院長、辻村傑先生が開発したオーダーメイド医療で、慢性的な歯周炎や口臭などを予防・改善するためのプログラムです。

つじむら歯科医院の院長 辻村傑先生(右)と
つじむら歯科医院の院長 辻村傑先生(右)と

THP認定歯科衛生士は、そのプログラムを施術できる資格で、毎月つじむら歯科医院から指導の方がきてくださって、丸1日セミナーを受けてペーパーテストや実技試験を受ける必要があります。

そして、何回かに一度ある大きな試験にクリアした後、総会で大人数の前で発表して、やっと合格の証をいただくことができるんです。

THPは完全自費の治療プログラムです。患者さんはその内容に価値を感じてくださって、私にすべての信頼を託して施術を受けてくださいます。

私もその期待に応えられるように、知識や技術をより一層高めていきたいと頑張る。

そのため、このプログラムを受ける患者さんとの信頼関係はとても強くなり、それは自分にとってもありがたい宝物のような経験でした。

肩書のためだけじゃなく、患者さんの健康に深く関わることができるようになりたいと考えていたので、この資格は取得してよかったです。

今までの人生の中で、やっておいてよかったと思うこと

以前の勤務先の院長のすすめで行った症例発表や患者さん向けセミナーは、やっておいてよかったことです。

症例発表もそうですが、活躍の場を広げる上では、人前で話すスキルがとても大切だと思います。

また、勉強会や学会など、いろいろなところに学びにいくことも、やっておいてよかったことです。

セミナーや認定資格を取るための場に集まる方というのは、志の高い先生や歯科衛生士さんが多いです。

そういうところで知り合った方々とずっと繋がって情報交換をしたり、一緒にスタディグループを作ったり。

どうしても北海道は情報が閉鎖的になりがちなので、情報を共有してもらえるような仲間が全国各地にできたというのはすごく嬉しいです。

そして何より、勉強の場に出たことで、辻村先生や澤泉仲美子先生といった、さまざまな素晴らしい先生方と出会うことができました。

2年前には上間スクール札幌校が開講し、1期生として学ばせていただきました。

講師の上間京子先生には、テクニックだけではなく歯科衛生士としての心の在り方など、大切なことを教えていただきました。

そういった先生方にずっと気にかけていただいて、よくしていただいてることが、私にとって宝です。

私の歯科衛生士人生は、とても恵まれていて、素晴らしい先生や仲間に囲まれています。

上間京子先生(左)と
上間京子先生(左)と福村さん(中央)

オススメの器具

THP歯ブラシです。

THP歯ブラシ
THP歯ブラシ(写真提供:湘南メディカルパートナー株式会社)

プラークの除去効率と細部到達性を兼ねそろえた歯ブラシってなかなかないのですが、この歯ブラシは開発者の辻村先生がこだわって作っただけあって、とてもいいです。

毛に特殊な加工が施されており、歯肉には優しいのにプラークはよく落ちます。

また、ヘッドの大きさも効率よくプラークを落とせるサイズなので、患者さんが使用する際にも細かいテクニックが要らず、きれいに磨いてもらうことができるんです。

この歯ブラシとPOICウォーターの組み合わせが、私にとっての最強タッグです。

POICウォーターは、何よりもタンパク質を分解する能力が高いところ、バイオフィルムを分解してくれるところが最大のメリットです。

なかなか歯磨きができない高齢の方や面倒くさがりの方には、最低限、このPOICウォーターでうがいをするようにお伝えしています。

誤嚥性肺炎の予防になりますし、口腔内の菌によって菌血症を引き起こさないためにも、とても重要なアイテムです。

今気になっていること、やりたいこと

歯科衛生士が活躍できる場を広げていく活動をしていきたいと思っています。

一般的に、歯科衛生士は口の中のクリーニングをする仕事と思われがちです。

しかし、口の健康は全身の健康につながっており、むし歯や歯周病は「メタボリックドミノ」の上流に位置しています。

むし歯や歯周病になりにくい口腔内にすることで、その先の生活習慣病のドミノが倒れるリスクを減らすことができる素晴らしい医療職が、歯科衛生士です。

日本の国民にとって本当の「予防」をしていく。そんな存在に、歯科衛生士みんながなれればいいなと思っています。

いまは人生100年時代といわれ、治療の時代から予防の時代になってきています。

そのため、一生心身ともに健康でいるためのお手伝いができる、「真の予防」に力を注げる環境を作っていけたらと思っています。

これから先、歯科衛生士が今以上に幅広い分野で活動できるようになればよいと思うので、それに貢献できればと思っています。

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