歯科衛生士の社保完備って?本当に加入できる方が良い?

歯科医院の求人を探す際によく目にするのが「社会保険完備(社保完備)」。

求人を探す際の必須条件にしている方も多いかと思います。

しかし、社会保険が何を指すか、何がメリットなのかを正確に把握できていますか?

実は、社保完備が全員にメリットをもたらすわけではありません。働き方や環境により、社保完備の求人が得かどうかは異なります。

この記事では、歯科衛生士求人の社保完備について詳しく解説します。歯科衛生士の社会保険についてお悩みの方の参考になれば幸いです。

*この記事は2022年8月19日に更新しました

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[目次]
1.歯科衛生士求人の社保完備ってどういうこと?
2.歯科衛生士の社会保険加入条件は?週何時間から?
3.歯科衛生士が加入できる歯科医師国保と社会保険はどっちがいいの?
4.社会保険料ってなに?金額はいくらで誰が支払うの?
5.歯科衛生士の社保完備よくある質問Q&A
6.歯科衛生士にとって社保完備の求人はメリットなの?

1.歯科衛生士求人の社保完備ってどういうこと?

  1. 健康保険(または歯科医師国保)
  2. 厚生年金
  3. 雇用保険
  4. 労災保険

上記の4つが揃っていることを「社会保険完備(社保完備)」といいます。上記に加え、40歳を超えると介護保険への加入も義務づけられます。

働き方にもよりますが、ほとんどの歯科医院では、雇用保険と労災保険に加入していることが多いです。

ただし、健康保険や厚生年金の加入は医院によって異なります。

これは、健康保険と厚生年金については、個人経営の医院でスタッフが5名未満の場合は加入義務がないためです。

もちろん、加入義務に関わらず、健康保険や厚生年金に加入できる制度を整えている歯科医院もあります。

歯科衛生士求人における社保完備とは、すべての社会保険を完備していることを指しているのです。

歯科医院における社会保険完備

2.歯科衛生士の社会保険加入条件は?週何時間から?

ここからは、歯科衛生士における社会保険加入の条件を以下に分けて解説します。

  • 健康保険(または歯科医師国保)・厚生年金
  • 労働保険(労災保険・雇用保険)

それぞれについて、見ていきましょう。

健康保険(または歯科医師国保)・厚生年金

健康保険と厚生年金の加入条件は、第一に常時雇用されている従業員であることです。加えて、以下の条件を満たす必要があります。

  • 週の所定労働時間か月の所定労働時間が、常時雇用されている従業員の4分の3以上であること
  •  対象となる歯科医院が法人、もしくは従業員が常時5人以上いる個人経営の歯科医院であること

たとえば、常時雇用されている従業員の労働時間が40時間だった場合、4分の3以上の労働時間は30時間です。1日8時間を週に4日働いている人は、健康保険や厚生年金の対象となります。

対象となる歯科医院の従業員が5人以下の場合は、健康保険等の加入は任意です。勤務時間を満たしていても、医院の規模によっては健康保険や厚生年金に加入できないこともしばしばあります

ちなみに、健康保険に加入すれば厚生年金はセットで加入することになります。ただし、歯科従事者独自の歯科医師国保に加入した場合には、厚生年金の加入義務がありません。

そのため「歯科医師国保は加入するけど、年金は自分で国民年金に加入するように」と指示される場合もあります。

歯科医師国保については、こちらの記事で詳しく解説しています。

「歯科医師国保徹底解説!保険の比較・もらえる給付金一覧」へ

アルバイトやパートも加入対象

2022年8月現在、アルバイトやパートも以下の条件を満たす従業員は社会保険の加入義務があります

  • 常時501人以上の事業所
  • 所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万以上
  • 1年を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない
    ※事業所人数はフルタイムの従業員数+週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数

今後は加入条件が拡大される

法改正により、今後の社会保険加入条件の拡大が決定しています。具体的な条件は、以下をご参考ください。

2022年10月~ 2024年10月~
常時101人以上の事業所 常時51人以上の事業所
所定労働時間が20時間以上 所定労働時間が20時間以上
月額賃金が8.8万以上 月額賃金が8.8万以上
2ヵ月を超える雇用の見込みがある 2ヵ月を超える雇用の見込みがある
学生ではない 学生ではない

労働保険(労災保険・雇用保険)

労働保険の正式名称は「労働者災害補償保険」といい、1人でも従業員を雇っている歯科医院には加入義務があります。

つまり労働保険は、歯科医院で勤務する場合は基本的に加入となります。ただし、労働保険の加入には以下の条件があります。

  • 31日以上の雇用が見込まれること
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

上記を満たす場合、労災保険と雇用保険の加入対象です。

3.歯科衛生士が加入できる健康保険は協会けんぽと歯科医師国保どっちがいいの?

歯科医療従事者が加入できる社会保険(健康保険)には、以下2つの種類があります。

  • 協会けんぽ(健康保険)…国が運営してきた健康保険事業を引き継ぎ、平成20年10月に設立された公法人による保険。
  • 歯科医師国保(国民健康保険)…国民健康保険組合による保険の中でも、氏会員で働く人が加入できる保険。職域国保といわれ、国保のひとつに分類される。

「どちらのに加入した方がお得なの?」と思うかもしれませんが、実は、どちらに加入するかを自分で選ぶことはできません

加入できる健康保険は、歯科医院が加入している保険によって異なります。

勤務している歯科医院が都道府県協会けんぽに加入している場合は協会けんぽ、歯科医師国保組合に加入している場合は歯科医師国保に加入することになります。

また、どちらの加入が良いのかも、人によって異なります。それぞれにメリットやデメリットがあるためです。

たとえば、歯科医師国保の保険料は一律です。そのため、年収が増えても保険料は変わりません。つまり、歯科医師国保に加入していれば年収が増えた分だけ手取りが増えるというメリットがあります。

しかしながら、歯科医師国保は国民健康保険に分類されるため、扶養の概念がありません。そのため、加入者全員分(扶養家族分)の保険料が請求されてしまうデメリットもあるのです。

また、協会けんぽは給付内容が充実しています。

受けられる給付内容は自治体で違いますが、たとえば出産手当や、死亡時や病気で休業した際の給付などがあります。

一方で、歯科医師国保よりも保険料の負担が多いデメリットもあります。

ちなみに、東京都の「東京都歯科健康保険組合」は給付内容や保険料の免除などが協会けんぽと同じです。

詳しくはこちらの記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

「歯科医師国保徹底解説!保険の比較・もらえる給付金一覧」へ

4.社会保険料ってなに?金額はいくらで誰が支払うの?

社会保険料とは、社会保険の加入に対して必要な費用です。社会保険料の支払対象や料金は保険の種類で異なるので、以下に分けて解説します。

  • 健康保険(または歯科医師国保)
  • 厚生年金
  • 労働保険(労災保険・雇用保険)

健康保険(または歯科医師国保)

健康保険(協会けんぽ)に加入している場合にかかる費用は、歯科医院と従業員の両者で負担します。健康保険の金額は賃金や介護保険の有無によって差があるので、全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式HPをご確認ください。

歯科医師国保に加入する場合は、歯科医院には保険料負担の義務がありません。

どの程度を従業員が負担するかは歯科医院により異なるため、転職時などに詳細を知りたい場合は事前に確認する必要があります。

なお、歯科医師国保の保険料は、県によって異なります。たとえば神奈川県の場合は、以下のとおりです。

第1種組合員(事業主):25,000円
第2種組合員(勤務医):18,500円
第3種組合員(衛生士、助手等):12,500円
家族:8,000円

厚生年金

厚生年金も同様に、歯科医院と従業員の両者で負担します

厚生年金の金額は賃金などによって異なりますので、詳しくは日本年金機構の公式HPをご参考ください。

ちなみに、厚生年金に加入していない歯科医院の場合は自分で国民年金に加入する必要があります。

国民年金の保険料は、令和4年度で1ヵ月当たり16,590円です。

労働保険(労災保険・雇用保険)

労働保険の支払対象は、以下のとおりです。

  • 労災保険:歯科医院が全額を負担
  • 雇用保険:歯科医院と従業員で負担

労災保険は勤務先の歯科医院が全額を負担するため、支払う必要はありません

一方、雇用保険は歯科医院と従業員の両者で負担します。雇用保険の金額は事業の種類ごとに定められた保険料率を賃金の総額にかけて算出されるため、人によって負担額が異なります。

5.歯科衛生士の社保完備よくある質問Q&A

ここからは、歯科衛生士の社会保険でよくある質問をまとめています。

健康保険と国民健康保険はどっちが得なの?

歯科医院側で健康保険や歯科医師国保へ加入しない場合、自分で国民健康保険に加入する必要があります

「健康保険と国民健康保険のどっちが得なの?」という疑問が浮かぶかもしれません。収入や扶養家族の有無などの状況により異なりますが、金額面から見れば健康保険の方がお得でしょう。

たとえば、健康保険は年収が130万円未満で被保険者の半分未満であれば、保険料を負担せずに家族を扶養に入れられます。家族が何人いても、保険料は変わりません。もちろん、被保険者と同等の保険給付を受けられます。

一方で、国民健康保険の場合は、扶養という概念がありません。被保険者それぞれに、保険料が発生します

保険料は、健康保険が10%程度で、そのうち半分は事業主が負担します。国民健康保険の場合、収入によって異なります。収入が高ければその分保険料も高額になってしまうのです。

パートの場合は社会保険と国民保険のどっちが得なの?

パートの場合、社会保険と国民保険のどちらが得かは人によって異なります。家庭環境などにより、何を重視するかが人それぞれ違うためです。

社会保険に加入すれば、扶養で働いていた人は、厚生年金保険や健康保険の加入にともない保険料が発生します。保険料が高くなるため、手取りは減少してしまうのです。

しかしながら、厚生年金保険に加入すれば将来的にもらえる年金は増えます。基礎年金に厚生年金保険が加わって、2階建てとなるためです。

たとえば、国民年金保険の人が厚生年金保険に加入した場合、年収200万なら15,600円の保険料になります。これにより、国民年金と比べて年金額は13,000円増加する見込みです。

扶養されている場合には、年収120万で年金保険料が月額9,000円ほどひかれます。しかしながら、もらえる年金額は月額5000円増加する見込みです。

厚生年金に入れば、年金や障害年金、遺族年金に上乗せされます。医療保険も疾病手当金や出産手当金が上乗せされるため、補償が手厚くなるメリットもあるのです。

社会保険加入は年収いくらから得になるの?

パートやアルバイトとして働く方は、どのくらいの収入を超えたら社会保険がお得になるのか気になるかもしれません。

しかし実際には人によって異なり、「年収〇〇円を超えたから社会保険に加入した方が良い」というような線引きはありません。

扶養を受けている場合は、扶養側の年収や職業形態によって得に感じる場合もあれば、一時的に支出が増える場合もあります。

6.歯科衛生士にとって社保完備の求人はメリットなの?

社会保険が完備されている求人が必ずしも良い求人かというと、一概にそうはいえないでしょう。

転職における優先順位の問題ですので、社保完備でなくとも自宅の近くで働きたい、スキルアップしたい診療科目がある、という方であれば気にならないかもしれません。

また、国民年金・国民健康保険などの場合は、厚生年金や健康保険と比較すると、通常は毎月支払う保険料が安いです。そのため、手取り給与額としては社保完備ではない方が高くなります。

一方で、社保完備の場合は厚生年金で将来もらえる年金額が高くなりますし、健康保険の方が出産手当金や傷病手当金の面で手当が充実しています。

また、医院側も保険料の負担をしながら、スタッフのために働く環境を充実させようと姿勢があるともいえます。

きちんと両者の特徴を把握した上で就職先を検討できるといいですね。

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