フリーランスの歯科衛生士とは?常勤衛生士との違いを解説

歯科衛生士としてもっと自由な働き方はできないかな?
フリーランスの歯科衛生士がいるみたいだけど、どのような働き方をしているのだろう

と疑問に思われている方はいませんか?

「フリーランスの歯科衛生士になりたい!」と思っても、情報が少なく周りにモデルとなるような人がいないと、悩んでしまいますよね。

この記事では、歯科衛生士のフリーランスについて詳しく解説。フリーランスに憧れている方、興味がある方はぜひ最後までご覧くださいね。

[目次]

1.フリーランス歯科衛生士と常勤の違い
2.フリーランス歯科衛生士の仕事内容
3.フリーランス歯科衛生士の収入
4.フリーランスとして働くメリット
5.フリーランスとして働くデメリット
6.フリーランス歯科衛生士を目指したいと思ったら?

1.フリーランス歯科衛生士と常勤の違い

フリーランスとは、特定の企業や組織などに所属しない働き方を指しています。

一般的に歯科衛生士と聞くと、特定の歯科医院と雇用契約を結び、決められた時間のみ業務に従事するのをイメージしますよね。

しかしながら、フリーランスとして働く歯科衛生士は、常勤の歯科衛生士と違って特定の歯科医院に務めていないことがほとんどです。

歯科医院や病院、企業などと業務委託契約を結んで働いており、手技的なスキル以外にもさまざまな価値を提供しています。

フリーランスと混同されがちな言葉として「個人事業主」が挙げられますが、個人事業主は税法上の区分です。

継続して事業をする個人が、税務署に開業届を出すと個人事業主となり、法人化させることで個人企業法人となります。

フリーランスは働き方のことを指しているため、歯科医院や企業などに所属せずに働く個人事業主や個人企業法人も存在しているのです。

2.フリーランス歯科衛生士の仕事内容

フリーランス歯科衛生士には、主に以下のような働き方があります。

  • 臨床業務を行う
  • 講演や執筆をする
  • 教育業務を担う
  • 歯科医院の経営力アップに貢献する

それぞれ単独で行っている方もいますが、多くの場合、これらの仕事をいくつか組み合わせて働いています。

臨床業務を行う

1つ目の仕事は、歯科医院や病院などで臨床業務を行うことです。

歯科衛生士としての手技的なスキルを活かしたい方、フリーランスとして働きながら手技的なスキルのレベルアップを目指す方に、おすすめの働き方です。

自分の手技的なスキルを武器に歯科医院と契約し、契約した歯科医院で現場に貢献しながら、さらにスキルを磨くことができます。

1つの歯科医院のみと契約する方法もありますが、複数の歯科医院で働くことで、レベルアップにつながるだけでなく、急に契約が打ち切りになった場合のリスク分散にもなりますよ。

講演や執筆をする

2つ目の仕事は、講演や執筆活動です。

自分が今まで学び培ったスキルをイベントやセミナーで講演したり、文章にして紹介する働き方で、最近ではYouTubeやInstagramなどのSNSを活用して個人発信をしている歯科衛生士も増えています。

講演や執筆活動と聞くと、歯科医師がしているイメージも強いですが、歯科衛生士だからこそ発信できる内容もあります。

たとえば、患者さんとの付き合い方などは、患者さんと距離が近い衛生士だからこそ、実体験を交えながら講演できる内容ですよね。

人前で話すのが苦手であれば、雑誌やwebでコラムを執筆する方法もあります。

講演や執筆活動を行うと自分の顔や名前が露出するため、人脈形成にも役立ち、新たな仕事の可能性が広がるというメリットもありますよ。

教育業務を担う

3つ目の仕事は、教育業務です。

歯科医院の中には、レベルの高いスタッフを育てたいと思うものの、日常業務に追われて日々が過ぎてしまい、なかなか教育に力をいれられない医院も存在します。

そんなときに重宝されるのが、経験豊富なフリーランスの歯科衛生士です。

レベルの高いスタッフを育てるために、歯科衛生士向けに技術指導を行ったり、オペのアシスト業務を一緒に行ったりなど、教育に専念しているからこそ丁寧に指導を行うことができます。

また、フリーランスの歯科衛生士が教えられるのは、手技的なことだけではありません。

患者さんとのコミュニケーションや、診療中の歯科医師への細かな気遣いも立派なスキルです。

自分の培った内容を他の歯科衛生士に伝え、歯科衛生士業界全体をレベルアップさせるのも、フリーランスで働く歯科衛生士のひとつの働き方といえます。

歯科医院の経営力アップに貢献する

4つ目の仕事は、歯科医院の経営力アップに貢献することです。

「フリーランスの歯科衛生士が経営に口出しするなんて…」と思うかもしれませんが、今まで培ってきたことを活かせば、十分に可能です。

実際に、歯科医院のコンサルティングを専門にしているフリーランスの歯科衛生士も存在します。

コンサルティングと聞くと難しそうなイメージがありますが、簡単に言うと歯科医院で起きている問題を解決していくためのお手伝いをする仕事です。

スタッフ教育をしている中で、販売する物品や院内で使用する消耗品・器具の見直し、スタッフとの面談、リコール率の上げ方やキャンセル率を下げる方法などのアドバイスを求められることもあるでしょう。

今まで複数の歯科医院で勤めて経験したことを活かして、客観的に経営目線でアドバイスをすると喜んでいただけます。

また、口頭でのアドバイスだけでなく、患者さんに説明する際のトークマニュアルや資料の作成までできると、さらに必要とされる歯科衛生士になれるでしょう。

3.フリーランス歯科衛生士の収入

みなさんの中には、「フリーランスは稼げないイメージがある」「常勤の歯科衛生士のような安定した収入は期待できなそう」と思う方もいるのではないでしょうか。

フリーランスの歯科衛生士は「業務委託契約」を結んで働くことが一般的なので、不安定なイメージがあるのも無理はありません。

働き方別に、給料の差をみていきましょう。

臨床業務を行う場合

歯科医療の現場で働く歯科衛生士は、非常勤雇用という形をとる歯科医院が多いでしょう。

2020年に発表された歯科衛生士の勤務実態調査報告書によると、歯科衛生士の非常勤の場合、もっとも多い時給は「1,100円以上1,300円未満」でした。

しかしながら、フリーランスの歯科衛生士はクライアント(歯科医院や病院)との交渉も可能です。

実際に、フリーランス歯科衛生士は所有しているスキルを活かして働いている方が多いので、時給2,000~3,000円という好条件で働いている方が多いようです。

また、経験豊富なフリーランス歯科衛生士は、同時に技術指導などのスタッフ教育を任されることも。その場合は、日給5〜20万円と、スキルや知名度によって大きな差があります。

講演や執筆をする場合

講演や執筆は、1講演や1記事ごとの報酬となることが多いです。

報酬は内容や時間、文字数などによって異なり、1講演あたり無料~10万円、1記事あたり無料~2万円と幅があります。また、自分の知名度によっても差が生まれるのが特徴です。

コンサルティングを担う場合

歯科医院の経営をアドバイスするコンサルティングを主にした場合、基本契約料がひと月あたり5~10万円とするフリーランスの歯科衛生士が多いです。

追加で、貢献した収入の増加分を成果報酬として受け取ることもあります。

フリーランスとして働く歯科衛生士は、厳密に言えば経営コンサルタントではありませんが、中にはコンサルティング業務で月収100万円を超える収入を得ている歯科衛生士もいるようです。

常勤歯科衛生士と比べると?

「今の歯科医院に勤めているのと、どちらが稼げるのだろう?」と気になる方もいると思いますが、フリーランスの歯科衛生士は働き方によって収入が大幅に変化します。

たとえば講演を多くする歯科衛生士の場合、10万円の講演を月に3回すれば30万の収入があります。

講演の準備を行う合間に、追加で1記事2万円の記事を5本作成すれば、講演と合わせて月収は40万円です。

2020年に厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査によると、常勤の歯科衛生士の月収は残業手当を含んで25万5,900円。比較すると、数字上ではフリーランスの方が稼げる計算になります。
(参照:賃金構造基本統計調査-厚生労働省)

常勤の歯科衛生士の場合は月収の上限が決まっている歯科医院が多いですが、フリーランスの歯科衛生士の場合は上限がないため、働いた分だけ月収に反映されます。

逆を言えば、フリーランスの歯科衛生士は働いてない期間は無収入ということなので、注意すべき点でもあります。

4.フリーランスとして働くメリット

フリーランスの歯科衛生士として働くメリットは、以下3つです。

  1. 自由がある
  2. 収入増加の可能性を広げられる
  3. 向上心を持って仕事に取り組める

それぞれ解説しますね。

① 自由がある

フリーランスの歯科衛生士として働く1つ目のメリットは、自由があることです。

常勤の歯科衛生士の場合、歯科医院によって決められた時間や曜日などの縛りがあり、歯科医院の方針に沿って働く必要があります。

フリーランスの歯科衛生士の場合、契約先と相談しながらにはなりますが、ある程度自分で働く時間や曜日を調整することができます。

勤務する歯科医院においても、相性が良くないと感じた場合は、常勤の歯科衛生士より勤務先を変更しやすいのも魅力です。

自分の時間を大切にして働きたい方にとっては、フリーランスの方が調整しやすい働き方だと言えるでしょう。

② 収入増加の可能性を広げられる

フリーランスの歯科衛生士として働く2つ目のメリットは、収入増加の可能性を広げられることです。

収入についての部分でも触れましたが、フリーランスの歯科衛生士は働く時間や量に上限がありません。

自分の好きなだけ仕事をすることができて、頑張った分だけ確実に収入に反映されます。

一方で、常勤で働く歯科衛生士は働く時間も決まっているため、収入の上限はある程度決まっていることが多いです。

フリーランスは、常勤の歯科衛生士よりも収入増加の可能性を広げられる働き方でしょう。

③ 向上心を持って仕事に取り組める

フリーランスの歯科衛生士として働く3つ目のメリットは、向上心を持って仕事に取り組めることです。

フリーランスの歯科衛生士として働く場合、自分のスキルや経験などが武器となります。そして、スキルや経験として得た武器は、かならず自分を助けます。

自分の頑張りがしっかりと返ってくるのが、フリーランスの歯科衛生士の魅力なのです。

先輩や後輩がいない環境で自分を育てられるのは自分自身しかいないので、常に向上心を持って仕事に取り組むことができます。

5.フリーランスとして働くデメリット

歯科衛生士がフリーランスとして働くデメリットは、以下3つです。

  1. 収入が不安定
  2. 福利厚生がない
  3. 自分ですべてを管理する必要がある

それぞれ解説しますね。

① 収入が不安定

フリーランスの歯科衛生士として働く1つ目のデメリットは、収入が不安定なことです。

働いた分だけ報酬として還元されるフリーランスの歯科衛生士ですが、働けない時期は無収入になります。

常勤の歯科衛生士として働いている場合は、有給などの制度があるため、風邪をひいて仕事を休んでもお給料が発生することがありますが、フリーランスの歯科衛生士にはありません。

また仕事を代わってもらえる人を見つけるのも難しいことが多いので、フリーランス歯科衛生士として働くうえで、体調管理はとても大切な仕事だとわかりますね。

ですが、しっかり体調を管理できたとしても、働き先や案件が見つからなければ収入はゼロです。

収入の不安定さは、フリーランスとして働く歯科衛生士の大きなデメリットでしょう。

② 福利厚生がない

フリーランスの歯科衛生士として働く2つ目のデメリットは、福利厚生がないことです。

常勤の歯科衛生士として働いていた場合、あまり意識していなくとも福利厚生によって優遇されています。

たとえば、勤め先が厚生年金に加入している場合は、通常の年金に上乗せした額を勤め先が半分支払ってくれています。

しかしながら、フリーランスで働く歯科衛生士は通常の国民年金分のみとなるため、将来もらえる年金額が常勤の歯科衛生士と比べ少なくなるでしょう。

他にも国民健康保険や有給制度など、常勤の歯科衛生士と比べて優遇制度のないことはデメリットといえます。

③ 自分ですべてを管理する必要がある

フリーランスの歯科衛生士として働く3つ目のデメリットは、自分ですべてを管理する必要があることです。

常勤の歯科衛生士として働いていた場合、税金は天引きで、年末調整も行ってくれる歯科医院がほとんどです。

フリーランスの歯科衛生士として働く場合は、仕事のスケジュールだけでなく、毎月の帳簿付けをしたり確定申告をしたりなど、すべて自分で管理しなくてはなりません。

働く時間や勤め先を選べるなど自由度の高いフリーランスですが、税金や体調などの自己管理は徹底する必要があります。

6.フリーランス歯科衛生士を目指したいと思ったら?

フリーランスの歯科衛生士として働きたいと思ったら、まずは自分がこれまでどのように働いていたかを思い返してみましょう。

中でも自分が力を入れていたことは、今後の強みになります。

そして、自分の性格や生活から、希望とする働き方を考え、どのように進んでいくかを決めてみましょう。

***

歯科衛生士の中には、特定の歯科医院で勤めない働き方をするフリーランスが存在します。

働く時間や内容が選べて自由度の高いフリーランスの歯科衛生士ですが、働けなくなったとたんに無収入となってしまうので、体調管理は慎重に行わなくてはなりません。

しかしながら、働いた分だけ自分に還元される仕事でもあるので、収入を増やしたい方にはおすすめの働き方です。

dStyle(ディースタイル)では、フリーランスとして活躍する歯科衛生士へのインタビューや、コラムを掲載。

自分に合った働き方が見つかるといいですね。