歯科衛生士はブランクがあっても復職できる?乗り越えて働く方法もご紹介!

ここ最近の働き方改革の流れにより、女性の就業支援は大きく進み、就労者数もますます増えてきているといわれています。

日本全国として見た女性の就労は増えていますが、歯科衛生士業界はどうなのでしょうか。

歯科衛生士として働いた経験がありながらも現場を離れている方の中には「出産や育児で休んでいたけどそろそろ働きたい」「他業種で働いていたけど、やっぱり歯科業界に戻りたい!」とお悩みの方も多いかと思います。

そこで、この記事では、歯科衛生士に復職したいと考える方に向けて、「ブランクがあっても働けるのか」についてまとめました。

実情をふまえたうえでブランクを乗り越えて復職する方法や、よくある質問についてもお答えしていますので、ぜひ参考にしてみてください。

*この記事は、2022年11月25日に更新しました

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[目次]

1.歯科衛生士はブランクがあっても復職できる?
2.実は復職していない衛生士も多い?
3.復職していない歯科衛生士が多いのはなぜ?
4.歯科衛生士がブランクを乗り越えて復職するにはどうしたらいい?
5.ブランクを経て復職するにはどこの歯科医院が正解?
6.歯科衛生士の復職で心配なことを解決!Q&A

1.歯科衛生士はブランクがあっても復職できる?

歯科衛生士は、ブランクがあっても復職できる仕事です。実際に、歯科衛生士で求人を検索すれば、多くの歯科医院では「ブランクOK」という表記があります。

ここからは、歯科衛生士の就業に関する現状について解説します。

① 歯科衛生士の全国就業人数と年齢別就業人数

令和2年に厚生労働省が発表した「衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、全国で働いている歯科衛生士数は142,760人でした。平成30年に発表された同調査では、全国で働いている歯科衛生士数は132,629人となっています

このことから、平成30年から令和2年までの2年間で、全国で働いている歯科衛生士は、およそ7.6%(10,131人)増加したことがわかります。

さらに、この調査で注目したいのは「年齢階級別にみた就業歯科衛生士の数」です。以下に、各年齢別の全体における割合と人数をまとめました。

年齢階級別にみた就業歯科衛生士(『令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況』を元にdStyle編集)

年代としては25歳~29歳が13.8%(19,688人)ともっとも多く、その後30歳~34歳で一時減少していることがわかります。

② 年齢別の就業歯科衛生士の数から考えられること

令和3年に発表された「出生に関する統計の概況」によると、令和元年における平均出産年齢は以下の通りです。

  • 第1子…30.7歳
  • 第2子…32.7歳
  • 第3子…33.8歳

平均出産年齢に鑑みると、30歳~34歳の減少は出産による退職が予想できます。平均出産年齢を過ぎた35歳以降~49歳までは、歯科衛生士の就労数割合は13.2%~13.5%と大きく差はありません。このことから、出産や育児で退職した歯科衛生士が復職している可能性が高いと考えられるでしょう。

つまり、ブランクを経ても歯科衛生士を受け入れる歯科医院は存在します。歯科衛生士は、復職が可能な仕事なのです。

そのうえ、50歳代でも7.4~10.5%、65歳以上でも2%の歯科衛生士が現役で働いています。歯科衛生士は、復職後も長く働き続けられる仕事であるといえるでしょう。

2.実は復職していない歯科衛生士も多い?

一方で、別の角度から歯科衛生士の就業状況を見ると、違う現状が浮かび上がってきます。

ここからは、歯科衛生士の資格をもつ人の割合から見た就業状況を解説するので、ぜひお役に立てください。

① 歯科衛生士の資格を所持しながら未就業である割合

一般財団法人 歯科医療振興財団が令和元年に発表した「事業報告書」によると、歯科衛生士として働いていない人を合わせた有資格者の人数は291,910名人(令和2年3月末時点)です。

しかしながら、令和2年に厚生労働省が発表した「衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」では、全国の働いている歯科衛生士の人数は142,760人でした。

すなわち、約48.9%の方が歯科衛生士の資格を取ったにもかかわらず、就業していないということになります。

復職している人や長く働く人がいる一方で、有資格者でありながらも歯科衛生士として働いていない人も多く存在するのです。

国家資格である歯科衛生士資格を活かせないというのは、なんとももったいない気がしますよね。

② 辞めた歯科衛生士は何をしているの?

歯科衛生士の有資格者が、辞めた後に何をしているのか気になる方も多いでしょう。

退職後は歯科業界とは違う業界に転職したり、育児や家事に専念したりする人がいる一方で、歯科衛生士の現場経験を活かして、歯科衛生士以外の道を歩む人もいます

たとえば、歯科衛生士の資格を活かしたキャリアには、以下のようなものがあります。

  • 歯科衛生士学校の教員
  • 保健所
  • 企業
  • 介護施設

3.復職していない歯科衛生士が多いのはなぜ?

有資格者の歯科衛生士の就業率が低い一方で、令和2年に日本歯科衛生士協会が発表した「歯科衛生士の勤務実態調査の報告書」によると、未就業の歯科衛生士の37.0%が再就職を希望しているというデータもあります。

再就職を希望する歯科衛生士が多いのにも関わらず、なぜ多くの有資格者が未就業となっているのでしょうか。その背景を考えてみましょう。

① 社会的な課題〜待機児童問題〜

日本では長年、待機児童が社会的な問題となっています。年々改善されている状況ではありますが、まだまだ子どもをもつ家庭が共働きをするハードルは低くありません。

歯科衛生士に限らず、子どもを預けて仕事をすることは簡単ではない状況です。加えて実家が遠かったり、ご主人が多忙であったりすると、再就職するのはなかなかむずかしいですよね。

② 歯科衛生士の働き方

保育園に子どもを預けられたとしても、保育園や幼稚園によっては遅い時間まで預かってもらえなかったり、土日はお休みだったりします。

一方歯科医院は、夕方以降や土日の忙しい時間にスタッフを配置する事情から、勤務時間や休みの条件が合わず、就業(再就職・復職)できないという歯科衛生士さんも少なくありません。

③ スキルに対する不安

歯科衛生士が復職するネックとなっているのが、自身のもつスキルです。令和2年に日本歯科衛生士会が発表した「歯科衛生士の勤務実態調査の報告書」によると、復職の障害として自分のスキルが挙げられました

こちらの調査では、歯科衛生士として復職するための研修を全体の57.1%が希望しています。研修の希望内容を以下にまとめたので、ご参考ください。

  • 摂食・嚥下機能訓練に関する技術:58.2%
  • 専門的口腔ケア技術:55.9%
  • スケーリング・ルートプレーニング等の歯周疾患に関する技術:53.1%
  • 筋機能訓練に関する技術:45.2%
  • 個人を対象とする歯科保健指導の技術:35.5%
  • 介護技術:34.8%
  • 歯科材料の取り扱い・チェアーサイドアシスタントなどの歯科診療介助の技術:30.5%
  • う蝕予防・抑制に関する技術:29.2%

このうち、もっとも希望の多かった再就職研修の内容は、以下の通りです。

  • スケーリング・ルートプレーニング等の歯周疾患に関する技術:27.4%
  • 摂食・嚥下機能訓練に関する技術:19.5%
  • 専門的口腔ケア技術:17.4%

専門的な知識や技術を必要とする歯科衛生士は、時間が経つほどに感覚や知識に衰えを感じてしまう傾向にあります。そのため、ブランクのある歯科衛生士は、スキル面に不安を抱えてしまいがちなのです。

4.歯科衛生士がブランクを乗り越えて復職するにはどうしたらいい?

まだまだ状況は簡単ではありませんが、それでも努力して取得した資格です。歯科衛生士がブランクを埋めていくには、どのような方法があるのでしょうか。

① ブランク支援のプログラムを利用する

歯科衛生士の復職支援プログラムが、各地でおこなわれています。近くのエリアで開催されていないか確認し、まず受けてみてはいかがでしょうか。
(例:東京医科歯科大学歯学部付属病院 歯科衛生士総合研修センター-東京医科歯科大学

もしタイミングが合わなかったら、メルマガを受け取ったり、SNSでフォローしておいたりすることで、いつでも情報収集ができるようにしておきましょう。

② 自主学習からスタートする

歯科スタッフ向けメディアdStyleでは、歯科衛生士や歯科助手のみなさんが働く上で役に立つ情報を、多数ご用意しています。

習熟度をはかる簡単なテストやお役立ち資料もありますので、まずはそこから少しずつはじめてみてもよいかもしれません。

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5.ブランクを経て復職するにはどこの歯科医院が正解?

歯科衛生士が復職先を探す際は、以下2つの選択肢が考えられます。

以前働いていた歯科医院で人間関係に苦労していた場合や、希望する働き方がむずかしくなった場合には、別の歯科医院を探すのも一つの手です。

別の歯科医院で働くメリットは、環境や人間関係を一から再スタートできることにあります。環境を変えることで、ストレスなく復職できる可能性があるのです。

こちらも「子どもが急に熱を出して帰らなければいけなくなった」場合を考えてみましょう。

新しい別の歯科医院では、面接時に現在の家庭状況を伝えてから採用されることになります。そのため「早退の可能性がある」ことが前提として存在しています。

前提が周知されていれば、自分自身が早退の申し出に対し、必要以上に気後れする必要はありません。周囲のスタッフからの理解も得られやすいでしょう。

新しい人間関係の構築は面倒に思われる方も多いですが、実はメリットも大きいのです。

ただし、自分の希望にぴったり合う歯科医院を探すむずかしさはあります。一からの採用となるため、履歴書を書いたり面接を受けたりといった手間は必須です。

6.歯科衛生士の復職で心配なことを解決!Q&A

ここからはブランクのある歯科衛生士の復職で、よくある質問を解決していきます。ぜひ、お役立てください。

① 復職希望の面接では何に気を付けたらいい?

採用のために、ブランクを隠したい方も多いかと思います。しかし、採用後は長く付き合うことになる職場です。素直にブランクがあることを伝え、その上でどのように勤めていくか前向きな気持ちを示し、誠意をみせましょう。

ブランクは必ずしもマイナスではありません。ブランク期間に培った経験をアピールすることもできます

歯科の世界は常に最新へとアップデートされているので、新しいことに挑戦する姿勢ややる気を伝えられると好印象を与えられるでしょう。

② 歯科衛生士として復職するときの注意点は?

歯科衛生士として復職する際、気をつけるべきなのが「謙虚でいること」です。謙虚な姿勢は、働いた期間の長さに関係なく必要な気持ちです。

歯科医院が違えば、医院独自の異なるルールがあります。以前働いていた歯科医院や自分のやり方を押しつけるような言動は控えましょう。

また、以前の歯科医院に復職する場合でも、ブランク期間中に新しい材料や道具が増えていることがあります。そのようなときにも、自分は新人だという気持ちで望むことが大切です。

また、時には「ブランクがあっても歯科衛生士ならこのくらいはできるだろう」と仕事をお願いされることもあるかもしれません。そのような場合には、できないことやわからないことを意思表示する勇気をもつことも必要です。

③ 復職後はどのくらいで仕事に慣れる?

ブランクを経て歯科衛生士として復職するにあたり、どのくらいの期間で勘を取り戻せるのか、仕事に慣れるのか、不安を抱える方も多いでしょう。

元通り働けるまでどのくらいの期間が必要かは、以前働いていた歯科医院と新しい別の歯科医院のどちらに復職するのかによって異なります。また、自身のスキルでも大きく変化します。

しかしながら、一般的に仕事に慣れる期間としていわれているのは3ヵ月~1年程度です。ブランクがある分、現役で働いていた他のスタッフに助けてもらうことも多いかもしれません。

そのような状態でも大切なのは、早く慣れようとする気持ちです。わからないことは先輩に尋ねたり、教えてもらったことはメモをとったりして、少しでも早く戦力になれるよう努めましょう。

④ 育児や家事と歯科衛生士を両立できる?

学校行事や食事の準備など、家事と両立できるか悩む方は多いでしょう。朝早くから夜遅くまで診療を行うイメージのある歯科医院も多く存在するので、当然のことです。

しかしながら、世の中の動きに伴って働き方はどんどん変化しています。歯科医院によってはパート勤務の他、週3日や時短勤務を歓迎するところもあります。

歯科衛生士は育児や家事と両立が可能な仕事なので、根気強く探しましょう。

⑤ 他の職歴はマイナスイメージにならない?

他の職歴がある方の中には、「歯科衛生士の資格があるのに、他業種で働いていたなんて…と思われたらどうしよう」と復職に踏み切れない方も多いでしょう。

しかし、他業種で働いていたことはメリットに働くこともあります。他の業種で培ったスキルを活かし、歯科医院で働けるのです。

とくに、接客業は歓迎されやすい傾向にあります。歯科衛生士は専門職といえど、患者さんと対峙する仕事です。

患者さんの生活環境などからヒントを得て、口腔指導に活かすこともあります。そのため、コミュニケーション能力の高い歯科衛生士は歓迎されるのです。

他の業種で働いていたことをネガティブに捉えず、どのように活かせるかを考えてアピールしましょう

ブランクのある歯科衛生士は復職できる?まとめ

予防医療全体が注目を集めている中で、歯科衛生士のポジションは確実に上がってきていると、dStyleでは考えています。

ただ、社会から求められているということは、人によっては少し重い話かもしれませんよね。

一方で、誰かから求められる仕事をすることや、「それって良い仕事だね」「それって必要な仕事だよね」といわれる仕事ができるのは、大変嬉しいことではないでしょうか。

私たちは、歯科衛生士がそういう可能性を多くもっている仕事であると思っています。

また、そこで働くみなさんがイキイキと働ける情報提供をこれからもしたいと考えています。

ブランクに対して不安なことも多いかと思いますが、勇気を出して一歩踏み出してみてくださいね!

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