内定後の課題である、退職交渉の流れについて解説します。
内定をゲットし、一安心…するにはまだ早いです。退職交渉はやるべきことがたくさんあります。入社まであと半分と考えるくらいでちょうど良いと思ってください。
もう辞めるから…と雑な対応をしてしまうと、現職に迷惑をかけるだけでなく、退職日が決まらず自分自身も困ってしまう可能性があります。
そうならないためにも、退職・入社準備の手順をしっかり把握しておきましょう。
本記事では、歯科医院ならではの退職交渉から引き継ぎまでのタイミングや、退職願・退職届の書き方など、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科助手が退職する際に必要な情報をまとめています。
1.退職交渉の流れを理解しよう
1-1.退職の意思表示、退職願の提出(入社2ヶ月〜1ヶ月前)
1-2.退職日の決定、退職届の提出(入社1ヶ月前)
1-3.引き継ぎ(入社1ヶ月〜2週間前)
2.退職願・退職届の書き方
2-1.退職願と退職届の違いは?
2-2.やっぱり手書きの方がいいの?
2-3.退職願・退職届の例文と書き方見本
2-4.用紙や封筒の選び方
3.円満退職をするためにできること
3-1.早めに退職の意思を伝える
3-2.感謝の気持ちを伝える
3-3.業務の引き継ぎを丁寧におこなう
3-4.退職後の連絡先を伝えておく
1.退職交渉の流れを理解しよう
院長先生をはじめ、お世話になったメンバーに退職の意向を伝えるのは、とても勇気が必要ですよね。
だからといって退職のギリギリまで伝えなかったとしたら、現職の歯科医院だけでなく、新たに勤務する歯科医院にも迷惑がかかってしまいます。
できるだけ円満に退社するためには、次のポイントに気をつけましょう。
1-1.退職の意思表示(入社2ヶ月〜1ヶ月前)
民法上は、退職の申し入れ後2週間で雇用関係が解消されることにはなります。
しかし、担当歯科衛生士制で患者さんの引き継ぎがあったり、歯科衛生士が自分一人しか在籍していなかったりという理由から、歯科医院によって期間が異なる場合があります。
歯科医院によっては、3ヶ月前や6ヶ月前といったところもありますので、退職を申し出る場合は、まず就業規則を確認しましょう。
また、上司(院長)や同僚への退職意思の切り出し方にも、いくつか注意すべきポイントがあります。以下の内容をぜひ押さえておきましょう。
● 退職意思表示前
- 繁忙期を避ける…業務に差し支えのないよう、医院の繁忙期は可能な限り避けましょう。
- 意思表示のめどは2ヶ月前…引き継ぎや取引先などを考え、退職希望日までは余裕を持っておきましょう。
- 転職の意思を安易に口にしない…周囲に動揺をあたえてしまったり、交渉に悪影響をあたえてしまうおそれがあります。注意しましょう。
- まずは直属の上司に…上司より前に周囲が知っていた、となると上司の理解を得づらくなってしまう可能性があります。気をつけましょう。
● 退職意思表示時
- 現状の不満をあげないこと…余計なトラブルを防ぐため、退職理由に職場や現状への不満を理由にしないほうがよいです。一身上の都合としておきましょう。
- 転職先を明かさない…転職先を明らかにする必要はありません。意思の固さと感謝の気持ちを伝え、理解を得られるようつとめましょう。
退職願を提出する必要がある場合は、このタイミングで直属の上司または院長先生に提出しましょう。
1-2.退職日の決定、退職届の提出(入社1ヶ月前)
● 退職日の決定
退職の意思を伝えてから退職日を決定する場合も、考慮すべきポイントが3点あります。以下を踏まえて、円満に進められるよう心がけましょう。
- 上司と話し合って、お互いが納得できる退職日を決める。
- 仕事の引き継ぎに要する時間や、有給の残り、転職先への入職日などを考えて決める。
- 転職先医院の受け入れ準備にも影響するため、入職日は一度決めたら変更しない。(採用する側にとって、入職日は採用における最重要要素の一つです。)
● 退職届の提出
多くの企業や歯科医院の就業規則には、退職時の手続きのひとつとして退職届の提出があります。
医院ごとにフォーマットや流れがある場合があるので、その有無を確認して進めていきましょう。
退職届の書き方については、「2.退職願・退職届の書き方」で後述します。
2-3.引き継ぎ(入社1ヶ月〜2週間前)
無事に退職届が受理されたら、なるべく早めに仕事の引き継ぎに取りかかりましょう。
とくに担当制の歯科医院の場合は、より多くの引き継ぎが発生する可能性があるため、しっかり行いましょう。
- スケジュールを立てる…おおむね最終出勤日3日前までには、引き継ぎが完了するようにしましょう。
- 退職後の連絡先を後任者と上司に伝える…退職後に業務上のトラブルが発生し、本人にしか解決できないということもありえるためです。
2.退職願・退職届の書き方
正職員として雇用されている場合、退職願や退職届の提出を求められる場合があります。
特定のフォーマットが用意されていない場合がほとんどだと思いますので、以下のポイントを参考にしながら、きちんとした書類提出を行いましょう。
2-1.退職願と退職届の違いは?
歯科医院の退職を考えた際に提出する書類には、「退職願」や「退職届」があります。どちらも似たような名称ですが、用途によって以下のように提出する書類が変わってきます。
退職願
歯科医院を退職したいと考えたときに意思表示として提出する書類。
「退職したい」という思いを伝える書類なので、提出した後に退職日を変更することや、取り下げることも可能です。
退職届
すでに退職の意思を伝え、歯科医院側から承諾を得ている場合に提出する書類。
双方で決定した後、記録に残すために作成する書類のため、提出した後に退職日を変更することはできません。
退職願と退職届の大きな違いは、退職日が決まる前に出すか、後に出すかということ。また、退職する際の書類に「辞表」がありますが、こちらは役員や公務員が組織を離れる場合に提出するものです。
2-2.やっぱり手書きの方がいいの?
結論から言うと、手書きが無難といえます。パソコンで作成すること自体はマナー違反ではありませんが、まだまだ「手書きが一般的」というイメージが強くあります。
また、先生によっては、「パソコンの文字では気持ちがわからない」と考える方もいます。円満退社を望んでいる場合は、手書きをおすすめします。
手書きで作成する際は、黒のボールペンを使用します。正式な書類ですので、黒以外の色やシャープペンの使用はNGです。
修正液の使用もNGですので、書き間違えてしまった場合は新しく書き直しましょう。
2-3.退職願・退職届の例文と書き方見本
基本的に、真っ白な紙を使用します。用紙のサイズはとくに規定がありませんので、A4またはB5のコピー用紙がある場合は、そちらを使用しましょう。
便箋を使用する場合、白色で縦書き用のものを選びましょう。罫線が入っていても問題ありません。
① 見出しの書き方
1行目の真ん中より少し上に「退職届」または「退職願」、2行目には、行の下部に「私事」と記載します。
「私事」とは、「私ごと=個人的なこと」という意味のため、謙譲の意味を込めて行の下の方に書きます。「私儀」と書いてもかまいません。
② 本文の書き方
退職願と退職届では、本文の文言が異なります。意味が変わってきてしまいますので、注意して書きましょう。
● 退職願の場合
この度、一身上の都合により、令和〇〇年〇〇月〇〇日をもちまして退職したく、ここにお願い申し上げます。
● 退職届の場合
この度、一身上の都合により、令和〇〇年〇〇月〇〇日をもちまして退職いたします。
③ 署名
日付と名前を記入し、ハンコを押します。パソコンで作成する場合も、署名の2行は手書きが無難です。
日付は提出する日の年月日を記載します。年は西暦でも和暦でも問題ありませんが、本文と統一しましょう。
枠がない書類に押すハンコは、改変などといった悪用を防ぐため、名前に少しかかるように押すのがマナーです。
④ 宛名
提出する相手が本人でなくても、代表である理事長先生や院長先生の名前を記載します。
歯科医院に勤めている場合は、代表が歯科医師の先生であることが大半ですが、「〇〇先生」ではなく、「院長 〇〇様」と書くようにしましょう。
「〇〇殿」でも問題ありませんが、受け取る相手によっては、目上の人に対して失礼と思われてしまうおそれがあります。
2-4.用紙や封筒の選び方
封筒についても、白色を用意します。A4 の場合は長形3号(120×235mm)、B5の場合は長形4号(90×205mm)と、用紙が3つ折りで入るサイズのものを選びましょう。
100円均一で売っているもので問題ありませんが、郵便マークが印字されていないものを選ぶ方が無難です。
手渡しの場合は、封をせずに提出します。郵送する場合は、のりづけをして「〆」マークを記入します。
送り状の書き方はこちらで詳しく紹介しています。
郵送の際、履歴書では「履歴書在中」と表書きしましたが、退職届を送る場合は、余計なトラブルを防ぐため、「親展」と記載します。
3.円満退職をするためにできること
ここからは、できるだけ円満に退職するためにすべきことを解説します。最後まで気持ち良く働いて新しい一歩を踏み出せるように、ぜひ参考にしてみてください!
3-1.早めに退職の意思を伝える
退職する気持ちが固まったら、就業規則を確認してから早めに伝えましょう。歯科医院に迷惑がかからないタイミングを見極めて退職の意思を伝えることは、円満退職への第一歩です。
退職の意思を早く伝えることで、歯科医院側としても準備や覚悟ができます。また、早い段階で退職の意思表示をすることは、あなたのためでもあります。
退職が決まった際、あなたにとって重要な仕事となるのが、業務の引き継ぎです。「なかなか言い出しにくいから……」と退職の意思表示を後回しにしては、引き継ぎの時間が十分に確保できません。
早めに退職の意思を伝えることは、歯科医院のためだけでなく、あなた自身のためにもなるということを忘れないようにしましょう。
3-2.感謝の気持ちを伝える
円満退職をするためには、感謝の気持ちを伝えることが大切です。今までお世話になった感謝の気持ちを伝えることで、退職後も良好な関係を築けます。
退職の意思表示の際に口頭で感謝を伝えた後、辞めるタイミングで改めて手紙を送っても良いでしょう。昨今は手紙をもらうシーンも減ってきているので、より気持ちが伝わります。
実は、感謝の気持ちを伝える相手は、上司や同僚だけではありません。患者さんに対しても、あいさつと一緒に感謝の気持ちを伝える必要があります。
気を遣わせてしまわないためにも、患者さんと最後に会う時に、長くならないように伝えましょう。その際、ネガティブなことを言わないように注意してください。
前向きな退職であることを伝え「最後まで良いスタッフだったね」と言ってもらえるようなあいさつをすることで、あなたと歯科医院の評価が上がります。
3-3.業務の引き継ぎを丁寧におこなう
退職が決まったら、業務の引き継ぎは丁寧に行いましょう。あなたが退職した後も滞りなく業務が進められるように、引き継ぎは責任をもっておこなうべき業務です。
後任者への引き継ぎは大変なことが多くあります。しかしながら、退職した後にどうなるのかという不安を後任者は抱えています。その不安を取り除けるように、寄り添いながら引き継ぎを行いましょう。
忙しい歯科医院の場合、業務時間内で引き継ぎをすべて終えるのがむずかしいこともあるかもしれません。そのような事態が予測される際には、前もってマニュアルを準備しておくことがおすすめです。
マニュアルがあれば口頭でも内容を伝えやすいので、引き継ぎもスムーズにできるでしょう。
3-4.退職後の連絡先を伝えておく
円満退職をするためには、退職後の連絡先を伝えておくことをおすすめします。
しっかり引き継ぎをして、マニュアルの作成を行なったとしても、あなたの退職後にイレギュラーが起こることもあります。その際、どうしてもあなたでないとわからないことがあるかもしれません。
後任者の不安を少しでも取り除くために、連絡先を伝えておく必要があるのです。
しかしながら、退職後に連絡されることが嫌だと感じられる場合もあるでしょう。できるだけあなたに連絡せずとも対応してもらえるように、マニュアルにはイレギュラー対応についても記載しておくのがおすすめです。
4.スムーズに退職するための事前準備が大切
今回は、退職交渉や退職届の書き方について解説しました。スムーズに退職するためには、事前の準備が大切です。
新しい一歩を気持ち良く踏み出すために、この記事が参考となれば幸いです。